【チェンダーオ“奥の院”露天風呂】
★国境に近い自然の中に潜む秘湯
チェンマイ市街地から北へ1時間半ほど走ったチェンダーオにある谷川沿いの「清流土管温泉」は、ネットを通じて外国人観光客の間でも人気が高まっている。
けれど、そこからさらに30キロ少々走った山奥、つまりはミャンマー国境寄りの林の中に、これまた、なかなか良い湯質と雰囲気を兼ね備えた露店風呂があることは、あまり知られていない。
私が勝手に「“奥の院”露天風呂」と呼んでいるこの温泉。
正確には、ポーンアーン温泉という。
チェンダーオ国立公園内に位置するため、一応100バーツの外国人料金が設定されているが、私の場合はタイの免許証を提示して60歳以上であることを証明すると、バイク駐車代の20バーツだけが徴収された。
300バーツ(約1,000円)もの入場料を取るどこぞの温泉国立公園と比べると、実にのどかなものである。
ただ、この「クンター(爺様)優遇措置」は当事者のハンサム度や人品骨柄、ならびに窓口係官の裁量によって異なるから、一律には言えない。
さて、遊歩道を進んでいくと整備されたアプローチに沿って蓮池や源泉池などが配置されている。
20数年前、このとんでもない田舎町に住んでいたという古強者によれば、国立公園として整備される前の一帯では、野原のあちこちで温泉が無秩序に湧き出し、水牛がのんびりと湯を舐めていたという。
★ややぬるめ、底はぬるぬるだが湯質は柔らかい
複数の源泉池が点在する右手、林の奥まったところに岩風呂風露天風呂が二つ見えて来た。
左手の小さな浴槽は湯がぬるく、右手の方も日本人にはややぬるいが、まあ適温の範囲内ではある。
ここ数年来の日本へのビザ無し渡航で、温泉の良さを体験するタイ人が増えて来たとはいえ(onsenがタイ語になりつつある昨今だ)、水浴びに慣れた彼らは汗の吹き出るような熱い湯を好まない。
従って、この浴槽のように入湯者が自ら湯温の調整ができない場合はちと困ったことになる。
とはいえ、郷に入れば郷に従うべきであることは言うまでもないだろう。
浴槽の管理清掃も、むろん「マイペンライ(気にしない、構わない)」精神にもとづくタイ式のいい加減さである。
湯の華が付着してぬるぬるした底に足を取られないよう慎重に体を浸すと、「ああ」と思わず声が出た。
縁石に後頭部をつけて体を伸ばすと、林の緑と雨季の晴れ間の青空が全身を包み込む。
気まぐれにスマホのビデオを回してみると、うるさいほどの蝉の声が降りしきっていることに初めて気がついた。
★雨季が明けたらキャンプを兼ねて朝風呂を
露天岩風呂のそばには着替え置き台が置いてあるが、シャワー室もあるから女性の着替えも問題ない。
ただし、私が使おうとしたシャワー用取っ手はいきなり外れてしまったので、要注意だ。
ご親切なことに、有料の個室浴槽も用意されている。
心身ともにさっぱりしてから、岩風呂の奥から林の中に伸びている遊歩道を歩いてみたのだが、こちらも閑静でなかなかにいい雰囲気である。
岩風呂からぶらぶら歩いていける距離に、整備の行き届いた気持ち良さそうなキャンプサイトもあった。
11月から2月までのドライ&クールシーズンに泊まりがけで来れば、どこぞの誰かが身上(しんしょう)をつぶしてしまった朝湯、朝酒もゆったりと楽しめることになるわいなあ。