【非常事態宣言延長、何それ?】
タイ政府は4月28日、4月一杯の予定で発令した非常事態宣言を5月末まで延長すると発表した。
現時点での一番分かり易い報道は、「バンコク週報」のウェブサイトだと思う。
特に、ここで説明されている「感染拡大の危険度を色別にランク分けして閉鎖商業施設の段階的営業緩和を図ってゆく」という手法は、なかなかに秀逸だ。
おそらく、映画やドラマで知られるようになった災害救急医療時の「カラータグ付け」がヒントになったのだろうが、今後の経済活動再開に向けた方針が実に分かり易い。
ま、出自には大いに問題ありの面々なのだが、これまでの迅速な対応は大いに評価すべきだろう。
なにせ、あのこわもて将軍様が、休業補償の手違いを国民に率直に謝罪したり。
目の下に隈を作って報道陣の前に現れ、「あと少しだけ我慢して欲しい」と国民に切々と訴えているのだから、ここは一丸となるしかあるまい。
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さて、そういうわけでチェンマイ近郊田舎町も大騒ぎかといえば、別になんということもない。
怖がりなタイ人の「正しい怖がり方」に基づく厳しい規制は、むしろ大歓迎だ。
チェンマイ県に限って言えば、県内の移動は自由なのだし、郡境や集落手前の検温検問や消毒検問を受ければ、単独でのバイク・ツーリング取材も制限されない。
午後10時から午前4時までの夜間外出禁止も、早寝の年寄りにとっては何の痛痒もない。
むろん、観光ワゴン車運転手の相棒やガイド資格を持つタイ語女先生など、すでに2ヶ月近く仕事がないという厳しい状況ではあるのだけれど。
すでに長期戦の覚悟を決めて、それぞれの家ごもりを楽しみながら手間取る政府保障を腰をすえて待っている様子だ。
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飲ん兵衛にとっての目下の非常事態は、ソンクラーン前に発令された「酒類販売全面禁止」が、またもや5月末まで再延長されたことだろう。
だが、これを見越していた私の場合は節酒に努めればなんとか乗り切れる。
むしろ、「5月1〜2日だけ買い溜めのために販売解禁?」という憶測が、レジ前への殺到密集で感染拡大に繋がるのではないかという懸念の方が強い(今日午後になって、猶予期間無しの1ヶ月延長決定が発表された)。
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さて。
写真は、つい先日、ある田舎道をバイクで走っていて小用のために脇の踏み跡を辿ったとき、たまたま出くわした光景である。
なんと、山並みに囲まれた小ぢんまりとした静謐な湖を、5人の家族が独占していたのである。
湖畔にどっしりと腰を据えた貫禄ある母ちゃんは、3人の娘の水遊びを笑顔で見守っている(ここでもマスク!)
ひょろりと痩せた頼りない父ちゃんは、突然出現した赤ヘルライダーにぎょっとした様子だったが、ヘルメットを脱いですっかりはかなくなった頭髪を見せると、ホッとした顔で遠泳を始めた。
長女は中学生くらいか、彼女が優しく世話を焼いている下の二人はまだ幼い。
母親に許可を取り、水辺に寄ってカメラを向けると、一番下の子はなぜかパンツを脱いでお尻を出しおどけ始めた。
ああ、いいなあ。
ここでは、コロナも非常事態宣言も煙害も「どこ吹く風」だ。
家族だけのゆったりした時間が湖上に流れ漂っている。
こんな田舎で、狭い家などにこもって何の意味があるだろう。
一家は少し離れた村に住んでいるというから、広義の意味でのStay at homeには違いない。
いや、正しくは Stay at home village と言うべきか。
母ちゃんにコロナ禍の影響について、特に学校閉鎖の悩みを訊こうかと思ったものの。
「何、それ?」
笑い飛ばされそうなので、黙ってまわりののどかな景色と娘たちの屈託のない笑顔を楽しむことにした。
あれ、父ちゃんはどこだ?
お〜い、溺れるなよお!