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今笑いたいあなたに読書のススメ-爆笑必至エッセイ5選-
妊娠中に本を読んだ。
できれば面白くて、笑える本がよかった。
お腹で育む命は喜ばしいことなのだけど、それ以上に変わっていく体、ついていけない心、一日の中にいろんな私が現れる。情緒不安定な時が多かった。
安定期に入ったからといって一人で外出する気にはなれず、家でぼーっと過ごしていた。つい、デジタルの世界に没頭しがちだった。
そんな私にとって、読書は貴重な時間だった。
今思うと、どれだけ貴重だったかがわかる。
子どもが生まれてからは、
食べたい時に食べられないのは当たり前、
行きたい時にトイレに行けないし、
もちろん、読みたい時に読書なんてできない。
一人時間ができたら本を読みたい。
なぜなら、本にたくさん笑わせてもらったから。
時をかけるゆとり(朝井リョウ)
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就職活動生の群像『何者』で戦後最年少の直木賞受賞者となった著者。
初エッセイ集では天与の観察眼を縦横無尽に駆使し、上京の日々、バイト、夏休み、就活そして社会人生活について綴る。
「ゆとり世代」が「ゆとり世代」を見た、切なさとおかしみが炸裂する23編。
ゆとりシリーズ三部作の一作目。
さすが直木賞作家である。というには才能の無駄遣いなんじゃないかと思うほど、秀逸なワードチョイスや言い回し。
自らのことを臆せず表現する、究極の自虐ネタが満載で、朝井リョウさんを取り囲む周りの人物たちの珍妙さに耐えきれない。
生きてるだけでこんな面白いこと起きる?というようなエピソード量と語り継がれるべき質の高さというか、くだらなさというか。軽快で、ものすごく面白い。
回り回って愛おしく感じてくるほどだ。
読んでいる間、わかりやすく声を出してクスクスしているのを夫に変な目で見られていたのは私🙋🏻♀️
かくいう私も、ゆとり世代の一人。
まさか同じ世代を生きて、こんなにも違うのかと。
いや、どうやったらこんなことが起こるのか私にはわからない。笑
共感と爆笑の連続を、ぜひ体験してほしい。
風と共にゆとりぬ(朝井リョウ)
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『時をかけるゆとり』に続く、待望の第二弾。
計500枚の大ボリュームでおくる傑作エッセイ集!
・レンタル彼氏との騙し合い対決
・担当税理士の結婚式にて炸裂させた渾身の余興
・初めてのホームステイにてマル秘パンデミック勃発
・ファッションセンス完全外注の経緯
・特別収録!痔瘻の発症、手術、入院――著者の肛門にまつわるすべてをしたためた100枚超の手記「肛門記」……
読んで得るもの特にナシ!!
立派な感想文なんて書けっこない、ひたすら楽しいだけの読書体験をあなたに。
ひたすら楽しいだけの読書体験。
まさにそうなの!!!
結婚式の余興、面白かったなあ...。
ちなみに、三作目「そして誰もゆとらなくなった」は💩の話が多すぎて、途中離脱。もういいよ!って。笑
続編なので感想は簡潔に。
とりあえずお湯わかせ(柚木麻子)
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このエッセイもまた、公開の日記帳だ。前向きで後ろ向きで、頑張り屋で怠け者で、かしこく浅はか、独特な人物の日々の記録だ(前書きより)
――はじめての育児に奮闘し、新しい食べ物に出会い、友人を招いたり、出かけたり――。
そんな日々はコロナによって一転、自粛生活に。閉じこもる中で徐々に気が付く、世の中の理不尽や分断。それぞれの立場でNOを言っていくことの大切さ、声を上げることで確実に変わっていく、世の中の空気。
食と料理を通して、2018年から2022年の4年間を記録した、人気作家・柚木麻子のエッセイ集。
人気作家・柚木麻子さんを知ったのは、朝井リョウさんから。
柚木麻子さんは「ゆとりシリーズ」の常連で、三部作に何度も出てきては朝井リョウさんと共にスットコドッコイエピソードを披露してくれる。
そんな二人の掛け合いが好き😂
公開の日記帳、というのがまさに言い得て妙。
ダメな部分やだらしない部分がたくさんあって落ち着く。いつでも100%で頑張るなんて無理な話。私だけじゃないんだ、それでいいんだって思える。
ワンオペに近い育児やコロナ禍での自粛生活など、書いている内容は決して軽くないけれど、コミカルで楽しく読める。
同じ母親になった今、肩の力を抜いてフッと笑えるくらいに過ごしていきたいものだ。
私もきっと大丈夫。
とりあえずお湯を沸かして今夜を乗り切ろう。
常識のない喫茶店(僕のマリ)
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「働いている人が嫌な気持ちになる人はお客様ではない」
――そんな理念が、この店を、わたしを守ってくれた。
失礼な客は容赦なく「出禁」。
女性店員になめた態度をとる客には「塩対応」。
セクハラ、モラハラ、もちろん許しません。
ただ働いているだけなのに、
なぜこんな目にあわなければならないのか。
治外法権、世間のルールなど通用しない
異色の喫茶で繰り広げられる闘いの数々!
狂っているのは店か? 客か?
あらゆるサービス業従事者にこの本を捧げます。
喫茶×フェミニズム――
店員たちの小さな抵抗の日々を描く、
溜飲下がりまくりのお仕事エッセイ!
これを読んだのは妊娠するよりもずっと前、特急に一人で乗っている時だった。
最初の数ページで引き込まれて、どんどん止まらなくなっちゃって、しまいには笑いがこぼれて仕方がなくなった。
一人でニヤニヤ、クスクス。笑い声が出ないように必死だった気がする。
非常識な客には出禁を告げるし、客と喧嘩してもOK。
読んでいて気持ちがいいし、登場する個性的な人々のエピソードがどれもひと癖あって面白い。
働く人にも、お客さんにも「接客ってこういうもの」というステレオタイプがあるはず。
それを見事に打ち破り、自分たちのルールを守りながら楽しんでいる。こんなのあり?!という驚きの展開から、共感が大きくなっていく。本当の優しさも垣間見えて、ホッとする。
働く人の自由さ、日本にもあったらいいよね。
がんじがらめのマニュアルではなくて、必要な時に心の通ったやりとりをする。
読みながら「もう、最高!」って思う気持ちと、もっとこうだったらいいよね「肩の力を抜いていこうよ」っていう意気込みが生まれる感じ。
感じ方はひとそれぞれ。
あなたにはどんな思いが生まれるだろう?
もしもし、運命の人ですか。(穂村弘)
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間違いない。とうとう出会うことができた。
運命の人だ。
黙々と働く昼も、ひとりで菓子パンをかじる夜も、考えるのは恋のこと。あのときああ言っていたら……今度はこうしよう……延々とシミュレートし続けた果てに、〈私の天使〉は現れるのか?
人気歌人・穂村弘による恋愛エッセイ集が、待望の文庫化。
独特で純粋で拗らせている感じ。
よくもまあ、ほんのささやかな出来事からここまで膨らませられるものだ。感受性も想像力もあまりに豊か過ぎると、そんなことまで考えるのか。
そう少し呆れながらも、心を掴んで離さない。何度も吹き出しそうになりながら、読み進めて止まらなくなる。
穂村さんのどうしようもなくヘンテコな魅力が、きっと人を惹きつけるのだろう。
どなたかのレビューに「非モテ感出してる既婚者なセコさ」と書いてあったのだけども。
てっきり独身なのかと決めつけて読んでいる途中、いきなり妻の存在が現れるのだ。既婚者だとわかった途端、モテるんだろうな、に印象が変わる。
面白くてチャーミング、母性本能をくすぐる感じとか、まさに。本人が勘違い妄想をしているようで、実は読者に"わたしこそは...!"と勘違い妄想をさせる天才なのでは?と思ったりする。
ごく稀に言う素敵なフレーズにキュンとした辺りで、ほむほむワールドにすっかり魅了されていることに気づく。妄想100%だとしても。
日常に埋もれた些細な恋愛の煌めきを、ユーモアたっぷりに言語化してみせる穂村弘。すごすぎる。
どれも記憶に残る本。それだけ爆笑したということ。
すっかり読書から遠ざかっている私だけれど、おすすめがあったらぜひ教えてください☺️