忘却と美学と生贄④

兄妹は歩き始めた。目指すはこの辺りの管轄を任された本部ギルドである。今日は、風が強い。洒落た街並み、繁盛してる店、明るい雰囲気。どこの国でもこの街並みを見てから死ねと言われるほどには美しいとされる。

とってもきれい、いろいろある、あさだけどひともいっぱい…

「どうだ、ゴート、ここがお前の住む街だ。綺麗で住みやすいのに案外物価が安い。俺らが住んでる家も100ゴールドぽっちで買い取れたんだ。」どこか自慢げに話す彼。手を握ってる相手、少女の目は太陽の光を反射しながらも更に輝いているのが分かる。

「(いいなあ、毎日こうやって綺麗な街をまっさらな心で新鮮な気分で味わえて。記憶を失くしてもお前は)幸せもんだよ。」ポロッと溢れたその一言。少女はその一言を聞いて「うん!」と元気に頷くのだった。少女の金髪が風に揺られて何故か眩しく感じた昼ちょっと前の朝。

「おっスケープ!アポゥ1つどうだい?ゴートちゃんの分も無料(タダ)にしてやるよ」八百屋のおじさんが大きな声で彼に話しかける。

「おっちゃん、普通にりんごでいいから。まあ、貰えるもんは貰うけどさ。ありがとう、おっちゃん」感謝を述べてりんごを2つ受け取る。

「りんご、おいしそう」そう言いながらりんごを受け取る。

「けど、食べるなら後でにしよう。これから少し運動するしな。おっちゃん、マジでいつも助かる。」彼は軽く会釈をした。

「いいってことよ!お前らはガキん時っから俺の店に来てんだ親戚みてぇなもんだ。お前があの時、助けのサイン出さなきゃこうやってお前のためになる事もしてやれなかったからな。」少し雑におっちゃんは肩をトントンと叩く。

「これからもよろしくな、おっちゃん」笑顔で彼は言う。

話終わると周りの店からも「スケープくん、おいで、今日はいい野菜があるんだよ」とか「ゴートちゃん、はい、飴ちゃん」と色々声をかけられる。この街の団結力と暖かさは心に安らぎを与えてくれる。

「わぁ…いっぱいもらったねぇ。」驚いている。それも当然だ。急にたくさんの物を貰えば誰だって驚く、しかし、彼は驚いていない。慣れていると言う感じだった。

「スケープ、まいにちこんなかんじなの?」歩きながら少女は言う。

「ああ、毎日な。」

2人は目的地に着いた。この大きな塔のような建物がこの街全体に魔物を入れなくする結界を貼るギルド本部である。

「それじゃあ、向こうの椅子に座って待っててくれるか?依頼持ってくるから。飴ちゃん舐めててな」そう言いながら彼は受付の列に並ぶ。

「わかった。」少女は近くの椅子に座る。

待つ時間程長く感じるものはない。しかし少女にとっては初めて来る場所だから、とても新鮮な気分で周りを見ていた。少年は受付嬢に依頼を持ってきて欲しいと言う旨を伝える。案外早く終わりそうな予感がする。

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