welcome to フライハイヴェルト「welcome to forest」
「それで、歓迎は終わっていいんですか?2人とも」翼の生えた男が浮遊して彼女の目の前にいる2人の間に入った。
「おい新入りィ、名前とか説明諸々は後でしてやる。まずは我っち達と来い。」先程まで少し暑く感じていた空気が途端に寒くなってしまった。
「う、うん。分かった」彼の指示にそう返す。するとこの場にいた全員が歩き始めた。天使と思われる男は小声で周りと話しているのがわかった。その様子はどうも、遠足に来たと言う感じでは無さげだ。
「俺はな……認めるつもるはない……あれが……ユグドラシルの…代わりに、なるわけが、ない……」黒いコートに身を包んだいかつい大男は途切れ途切れに言った。まあまあ距離は離れているが何故かその声は普通に聞こえた。
「(ユグドラシル?それってあの、世界樹の?代わりってどういう事?)」これまで成り行きで生きていた彼女に段々と、少しずつ、重なるように疑問は増えていった。
「あたしゃ、酒が飲める奴なら誰でもカンゲイだけどね」あまり呂律が回っていない綺麗な女性が言った。手には一升瓶を持っている。
「ボクは一先ず、アレをどうにか出来れば普通に仲間に入れていいかな。だって、あの子が神が置いていったいわば、忘れ形見でしょ?」
「その神がよォ、マァジでこの世界忘れてんだから文字通りの忘れ物じゃねェかよ、えェ?」イラつきを見せるあの赤い男。いつの間にか防具を着て、仮面を被っていた。
「(アイツもこんな感じで輪に入れてもらえなくて辛かったのかな。)」彼女はふと、前世の事を思い出した。それはかつて、馴染めないでいた転校生の様であった。自分も会話に参加してしまおうか、そんな危険な考えが脳裏を巡る。
「そうだぁ〜、あぁんた名前、なんて言うのぉ?」酔っ払い女性が彼女に絡みに行った。
「レマ、です。」少し困惑しながらも彼女は女性にそう伝えた。
「レッマね〜あたしはぁアリって言うのぉ、あ、アントじゃないわよぉなんちゃってぇ〜」と言いながら強引に肩を組んできた。更には体重をかけてきた。酒の臭いがすごい。どうやらかなり飲んでるらしい。
「え、そのお酒って…日本酒?」彼女の目に留まった物、それはアリが持つ一升瓶のラベルに書かれた「射美」と言う漢字の2文字。
「うぇ?ニホンシュ?あ、これぇ?これはヤマト米酒って言ってぇ、ヤマトで作られたお酒〜」そう言って酒瓶を元々持っていた位置よりも高く掲げる。
「さてと、この辺ですかね。彼女が居るのは」男はそこで立ち止まった。気付かなかった。いや、周りをよく観察していなかった。ここは森だったのだ。初めから森にはいた。そして今、彼女らはこの森で最も大きいであろう樹木の目の前にいる。
「ボクの出番だね。水魔法『集中豪雨』(オーバーアラート)」一言あの人が言うと雨がたちまちに降り始め、最終的に、雨粒が当たると痛みを感じるほどに強い雨になった。しばらくすると、皮膚を雨粒が切った。更に、樹木に当たった雨粒は樹皮を削るほどに強かった。
「アリ、彼女に防具を。まだ肉体の強化法に慣れていないらしい」男はアリにそう指示すると、彼女はいつの間にか鎧を身にまとっていた。
「あれ?いつの間に?しかも、これ、軽い。」見た目や形は確かに鎧なのだが、見た目から想像出来る重さは微塵も感じなかった。そもそもこれをどこから取り出して彼女に装着させたのか皆目見当もつかなかった。
彼女が様々な事象に驚愕していると突然台風が現れた。
「「「愚か者共。今すぐにこの豪雨を止めよ。でなければ貴様らをこの森の肥やしとしよう」」」
何重にも声が重なって聞こえた。エコーとかとはまた違う感覚であった。声に威厳も感じた。
「ッたく…やァッとお出ましか。待ちわびたぜ。ケツァルコアトル。テメェと契約させたい奴を連れてきたんだよ。」そう言うと台風は消えた。それと同時に雨も止んだ。すると空から羽ばたく音が聞こえた。見上げるとそこには四足歩行型の龍がいた。
「そのような強硬策に出てでも私を引きずり出したかったのですか、レッドヴェルベッド。この計画そのものを考えたのはあなたですね、クラッシャー。」先程とは口調が違う。今は会話すると言う意思を感じる。
「ああ、七大古龍の中で最も契約が難しいあなたでも納得する人材を連れてきた。それがそこのエルフの彼女だ。」男はそう言った。先程の会話の内容から推測するにこの男がクラッシャーなのだろう。
「エルフの少女よ、私と契約するつもりはありますか?」睨みつける目をしていた。これが元からなのだとすれば申し訳ないが恐すぎた。
「えっと、契約?してもいいよ。契約と言うからには私に得はあるだろうし、1部では損もあるよね。けど、契約だからあなたにも得があるべきだしその内容次第では」彼女は冷静に考えた。なるべく、相手の神経を逆撫でしないように。
「これまでの候補書達とは切り口が全く違いますね。互いの得次第と言うのはこれまで1人もいませんでした。素晴らしい。」これで相手はある程度の聞く耳は持ってくれるだろう。
「推測だけど、私があなたと契約して得られるであろう得、それは戦闘能力の向上、合ってる?」彼女はこの世界に関して無知であるはずだ。しかし彼女はあたかもそれが正解であるかのように発言した。そしてそれは見事的中した。
「ええ、私と契約したらあなたには力を授けましょう。私は風属性を司る龍。この世界で最も強い風魔法を使えるようにしましょう。」少し補足を加えて相手は条件を提示してくれた。
「じゃあ、あなたはどうすれば得を得られるの?そこもとても重要だから」本来、交渉の場においてこれは悪手だ。自らが切れるカードも理解せず、相手に条件を提示させるのは。
「そうですね、では、この森とこの森の中にある街を護ってもらいましょう。それができるなら契約しましょう。」この条件を提示した瞬間、周りは残念そうな声を漏らした。どうやら、この条件でこれまでの候補者たちは退いてしまったのだろう。だが、彼女はむしろ好都合だと思った。
「交渉成立。条件を飲むよ。」彼女は口角を上げて自信ありげに言った。
「この森を護るという事がどういう事か分かって居ないからそう言う適当なことが言えるのです。あなた1人でそこの奇跡たちに勝てるとでも?不可能でしょう。」少し口調を荒くして相手は言う。どうやら、怒っているらしい。落ち着いているように見えて怒らせると怖い。1番マズイタイプだ。
「じゃあ、私がこの場でその奇跡たち?っていうのを倒せば証明になるよね?アリさん、手加減とかいいですよ。」強気な一言に相手だけでなくほかの者たちも少し圧倒された。しかし、レッドヴェルベッドは怒った。
「あ"?テメェ…舐めてッと殺すぞ。ガキの新入りがよォ…才能が開花する前にブッ殺すやる」周りの温度が上昇している。レッドは明らかに火属性と言う感じだった。彼女は自らの属性も理解出来ていなかった。
「私がケツァルコアトルと契約するための証明は
奇跡たちに勝利する...①
戦闘をしながらこの森を護る...②
この2つが絶対条件ッ!」
戦闘が始まろうとしている。彼女は条件を達成できるのか。才能を開花させることは出来るのか。計画的戦闘はこれから始まる!
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