welcome to フライハイヴェルト「welcome to new region」

「それで、ゼバス、この抉れた地面と空気を乱す魔力は何ですか?」少し怖い顔をしてケツァルは村人に質問した。

「や、あの、姉さん、そっその女が姉さんの卵を盗りにきた賊だと思って…だから…その…」村人は段々と何も言えなくなっていった。ケツァルが来る前に彼自身の中で彼が誤解していたのでは無いかと言う疑惑が出てきたからである。

「他人を見極める力を成長させなさいと私は言いましたね?ゼバス。あなたは門番なのだから、人の善悪の区別は付けれるようにしなさい。」ムッとした表情でケツァルは村人に言っていた。身長や見た目は村人の方が大人らしいがケツァルに叱られている様子はまさに弟のようだった。

「麗眞、傷が…痛くないですか?大丈夫ですか?」麗眞の方をみたケツァルが傷を察知してすぐに駆け寄った。心配そうな顔をしている。

「外傷無いのにわかるんだ、すごいね。」麗眞は笑みを浮かべてケツァルに言った。

「とりあえず、村の中へ。治療は中でします。ゼバス!あなたが彼女に肩を貸してあげなさい。」眉間にシワを寄せたまま彼女はゼバスを顎でつかう。

「分かったよ姉さん…」しょんぼりとした口調でゼバスは言った。

「ケツァルには頭が上がらないって感じだね。」とニヤつきながら言う麗眞の顔はまるで弱みを握ってやったかのようであった。

「そりゃそうだ。この村は200年前に姉さんが作り、あらゆる種族を集めたんだ。ほれ、肩貸してやる。」とても真面目な男だと麗眞は思った。

「そっか。あのさ、治療が終わったらあなたの技を教えてよ。」知的好奇心からだろうか、麗眞はふとそんなことを口にしていた。

「そうだな。悪かったな、何も考えずに攻撃なんかして。」ゼバスは謝罪をし、2人は歩き出した。

「あの勢いさ、どう考えても普通じゃないよね。まるで、これまでにも急に出てきた人を知ってるみたいな感じだった。」麗眞は冷静に物事を整理し始めた。

「最近、多いんだ。賊や他国の兵士がこの村に来ては姉さんの卵を盗ろうとする。だから警戒心が強くなっちまう。」そう説明された麗眞は村を見る。なんとも原始的だ。時代が時代なのだろうか、麗眞が生きていた時代より遥かに古かった。何かしらのドキュメンタリーで見た中南米あたりの民族が住む木造建築を彷彿とさせた。

とある家のドアの前で止まり、ゼバスは口を開いた。
「父上、少しよろしいでしょうか?」ゼバスがある家の前に着くとドアをノックして言った。すぐに返事が返ってきた。

「ゼバス、今は仕事中だからさ、村長って呼べ?」メガネをかけた若い男が建物の中から出てきた。何というか…イケイケなオー○ド博士の様な印象を受けた。

「失礼しました、村長。それで、怪我人を連れてきました。」

「いや…怪我人ってそれ、お前が怪我させたんだろうが…姉さんから話は聞いてるからとりあえず入ってくれ。」仕方がない、と言う顔をして男は扉を開けた。少しため息も混じっていた。

「麗眞、遅かったですね。」中に入ると既にケツァルがくつろいでいた。

「結構痛いし辛いんだよ?これも。」腹を抑えて麗眞は軽口を叩く。だが、額には汗が滲んでいる。辛いと言うのは本心だろう。

「では、始めましょうか?治療。姉さん、これくらいならちょっと荒くても何とかなりますよ?」男はケツァルに言う。口調からしてこの作業をするのは自分でなくともそこら辺の者ではいけないのか?と言う問いに感じられた。

「リヴィン、麗眞をお願いします。」真剣な顔でケツァルは言った。その顔を見た男は何故か何も言えなくなった。

「…んじゃあ、始めるか。」男はメガネをかけ直し、同時に手袋をつけた。良く見ると服装は医者のように見える。

「回復の陣『回復性能絶大活性化』」男がそう言うと、緑色の魔法陣が手の甲に出現した。いや、正確に言えば、魔法陣ではなく、薄く丸い紙に魔法陣が浮き出た、と言った方が正しい。

彼が魔術の類いを麗眞に向けると少しずつ彼女の顔が楽になっていくのが見ればわかった。

「あんた、かなり無理してたんだな。それか痛覚を減少させる能力でも持ち合わせてたのか?普通なら気絶している。」どこか得意気に男は話す。何というか、私にダメージを負わせた男の力量を見て成長を感じているような雰囲気を感じた。

「なん…か、嬉しそうですね?」つい言ってしまう。傷が少しだけ痛みこそすれど言ったことに後悔はない。

「当然だ、アイツは俺の息子だ。息子の成長を喜ぶのは父としては当然だろう?だが、一向に精神が成長しないのはいまいち困るがね。」辛すぎて良く声を聞いていなかったがなんとも野太い声だ。歳もそれなりにいっている。

「何とも困ったセガレさんですね。他人の内蔵ズタボロにして父親に治療させるなんてね。」なんだか少しずつ身体が軽くなっていくのを感じる。

「ああ、困った息子だ。だが、この程度じゃ困難にもならんがね。」そう言う彼を見ると既に手袋を外していた。

どうにもあの男二人はガサツな気がする。しかし能力は確かだ。私に相当な傷を負わせ、その傷を治した。それにしても思い返してみるとマッチポンプのようだ。だが、問題はケツァルはこの村で私に何をさせるのかだ。すぐにでも話を聞かなくては…何でもない顔をして彼女は私を見ている。

と言うことでお久しぶりです。かなりの間失踪しておりましたカウントニキでございます。思った以上に立て込んでおりまして、つい先日ある一つのしがらみから解放されてかなり前に書きかけだった今回をやっと出すことができました。今後はちょくちょくお話を更新して行きますので改めてよろしくお願いします。
それでは、次のページでまたお会いしましょう。

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