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音声コンテンツのプレイヤーUI分析

この記事では、アプリ上で音声コンテンツを再生させるときに必須になる「プレイヤー」のUIにフォーカスして、世界中で広く使われている3つのアプリを分析していきます。

対象アプリ
- Apple Podcast
- Google Podcasts
- Spotify


プレイヤーの機能

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3つのアプリに共通した機能
- 再生/停止
- 〇秒戻り/〇秒送り
- シークバー
- 倍速変更
- チャンネルページへの遷移

3つアプリの内、2つ以上のアプリに共通した機能
- 再生機器変更(Apple Podcast、Spotify)
- スリープタイマー(Google Podcasts、Spotify)

それぞれのアプリにおける特徴的な機能
- スクラブの速度変更(Apple Podcast)
- 再生キュー(Google Podcasts) 
- 無音部分をカット(Google Podcasts)
- シェア(Spotify)

ここからは、それぞれのアプリごとに詳しく解説していきます。


Apple Podcast

面白い箇所を「つまみ聴きする」音声アプリ

Apple Podcastは、音声コンテンツをながら聴きさせるのではなく、面白い場所を探しながら能動的に聞いてもらう体験を推奨しているのではないかと感じます。その理由は、「スクラブの速度変更機能」、「スリープタイマー」にあると考えています。

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スクラブの速度調整機能は、シークバーを調整するときの移動速度を4種類のスピードに可変させることができる機能です。これにより、再生を開始したいタイミングにピンポイントで標準を合わせることができます。スクラブの速度を選べるため、シークバーを細かく移動させながら面白いトークだけを「つまみ聴き」することが可能になります。

面白い箇所を細かく探すということは、ながら聴きとは全く違う体験となります。ながら聴きの体験にあると便利な「スリープタイマー」を非搭載にしているのも、この辺りの体験設計が理由になってきているのではないかと考えています。また、他の2つのアプリにくらべて圧倒的に倍速の種類が少ないことも特徴です。1倍速、1.5倍速、2倍速の3種類をタップごとに切り替える設計となっています。こちらの倍速機能も、「つまみ聴き」を優先させるために意図して数を減らしているのではないかと思います。


Google Podcasts

ユーザーの自由な聴き方に寄り添った「フルカスタム型」音声アプリ

Google Podcastsは、多様なユーザーが最適にカスタマイズした状態で再生できるように設計されていて、多様なユーザーの聴き方に寄り添ったアプリ設計であると感じました。それを象徴する機能として「26段階可変倍速」、「再生キュー機能」が挙げられます。

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一番の特徴はなんと言っても、再生速度が0.5倍速から3.0倍速まで、0.1刻みで変更することができることではないでしょうか。ここまで細かく速度を設定できるアプリはほとんど見られません。再生速度の変更方法もユニークで、スワイプで細かく設定できたり、基本的な倍速はタップで直感的に選ぶことができたり、多様なユーザーが気軽にカスタマイズできる作りになっています。この機能は、特に外国語での音声コンテンツを楽しみたい層に最適な機能です。自分の語学の習熟度によって遅い速度で再生するのはもちろんですが、それぞれのパーソナリティ特有の訛りやスピードに対応するためには、細かな速度変更がしたくなるものです。

もう一つが「再生キュー機能」です。これは再生画面のみならず、アプリ内に常に表示されるナビゲーションの一つでもあり、アプリの主軸となる機能として設計されているのではないか思います。再生キュー機能は、言い換えるなら簡易的なプレイリスト機能です。いま聴いている放送が終わったあとに流れてくるコンテンツを選び、順に並べることで、聴きたい放送を聴きたい順番で聴くことができます。プレイリスト機能ではなく、再生キュー機能がメインとなっているのは、音声コンテンツが音楽再生アプリのプレイリストのように何度も再生されることがないことが理由だと思います。音楽アプリのプレイリスト機能を音声コンテンツ向けに再解釈した機能と言えるでしょう。


Spotify

シェアの柔軟性が高い「SNSへ拡張していく」音声アプリ

Spotifyはプレイヤーの背景がコンテンツによって変わったり、白抜きの文字とコントラストが効いたデザインなど、3つのアプリの中でも特にカジュアルな雰囲気をまとったアプリであると感じました。また、比較したアプリの中で唯一再生画面上にシェアボタンが設置されており、SNSへの拡散がスムーズに行えるようになっています。

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最近では他のアプリでも音声コンテンツをInstagramストーリーズでシェアできるようになってきましたが、SpotifyはInstagramでのシェアにおいて頭一つ抜けています。それは、左上のアカウントの下に設置してある「Spotifyで再生」というテキストからSpotifyのアプリに直接遷移できるようになっているためです。この仕様はSpotifyやSoundCloud、Amebaなどのコンテンツをシェアした場合に見ることができますが、Instagramの開発ドキュメントに記載がないため、全てのアプリに開放された機能ではなさそうです。

Spotifyはポッドキャストの制作スタジオの買収や、「kemioの耳そうじクラブ」に代表されるオリジナルコンテンツに制作にも力を入れており、音楽/音声のプラットフォームとしてアプリだけでなく、音声コンテンツの制作側にまで進出しています。ポッドキャストの作成・配信サービス「Anchor」もSpotifyに加わり、音楽とトークを一緒に楽しめる「Music+Talk」などの画期的な機能を次々と公開しており、次の新機能も楽しみです。


まとめ

今回は、Apple Podcast、Google Podcasts、Spotifyと世界中で広く使用されているアプリのプレイヤーに着目し、比較していきました。基本に忠実で普遍的な画面デザインの中にも、各社の音声体験の対するこだわりを感じることができました。アプリを初めて触った人が迷うことなく操作できることが最低条件ではありますが、TinderやTikTokに代表されるような革新的な音声体験のデザインはまだ確立されていません。WALKMANやiPodの歴史から大きく変わらずに生き残ってきたレガシーなプレイヤー画面のデザインが、デバイスの進化やライフスタイルの変化にどのように対応していくのか。今後もプレイヤーのUIから目が離せません。


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