【第76回】かっこいい大人になったら、また来よう。(タイ王国旅行記Vol.6)
なんだこれ、うますぎる。
思わず心の中でつぶやいてしまっていた。タイ旅行も4日目を迎えた朝、ホテルにあるレストランで朝食を食べていたのだけれども、シェフが振る舞ってくれた出来たてのベーコンオムレツが絶品だったのだ。
絶妙の塩加減と卵の焼き加減が絶妙でむちゃくちゃうまい。また、ここで食べたい。そう思わせてくれる味だ。
富豪みたいだね。
ホテルをチェックアウトすると、僕は迷わずGrabを使いタクシーを呼んでいた。この日は本当は自転車でサイクリングしながらチェンマイの旧市街地を回るつもりだったが、昨晩、パンフレットを見ていると、どうしても行きたい場所ができてしまったからである。昨日のサイクリング屋さん、ごめん。
今日の14時にはチェンマイからバンコクに戻るための飛行機に乗るので、時間的に余裕はあまりない。そのため、少々、値は張るが時間を買ってタクシーに乗り込んだ。
ドライバーは女性。日本でタクシードライバーというとおじさんの職業というイメージが強いのだけれども、タイではもしかしたら違うのかもしれない。ちなみにGrabを使えば、女性ドライバーだけを配車できる機能もあるので女性だけでの利用も安心だ。車内ではラジオがかかっていて異国情緒を盛り上げてくれる。もちろんタイ語なので何を言ってるかはさっぱりだが。
ラジオをBGMとして、市街地を抜けぐんぐんと山道を登っていく。正直、道がくねくねしてちょっと気持ち悪くなってきたので、外の景色ばかり眺めていた。
20キロ近くの道のりを走って482バーツ(当時のレートで約1730円)。破格の値段だ。ちょっと富豪になった気分。
人の親切には気をつけろってことか。
タクシーが止まったのは坂道の途中だった。平衡感覚を失いながら、乗車のお礼であろうペットボトルの水をドライバーから受け取り、礼を言って外に出る。
チェンマイ旧市街を抜け、はるばる上空1000m近く山を登りにある寺院「ワット・プラタート・ドイ・ステープ」に僕はやってきたのだ。
参拝するためには更にタクシーを降りた場所から、300段以上ある階段を登るか、お金を払ってケーブルカーに乗る必要がある。
起きたばかりで元気だった僕はせっかくなので、階段を登ることにした。
と、その前にトイレに行きたくなったので行っておくことにする。あんなにの標識にしたがって歩いているとお土産屋のおばちゃんがジェスチャーで「あっちだよ!」と教えてくれた。どうやらこのお土産屋の店内を抜けていくらしい。
タイに着いてからこういった道を教えてくれる優しい人が結構いる。本当にありがたい。
トイレから戻ってくると、道を教えてくれたおばちゃんに「よかったら見ていって!」といった感じで、また手招きされたので近くによって行った。お土産は、まだ一つも買ってないので、せっかくなら買っていこう。教えてくれた恩義もある。
見せられたのは店の隅っこにあるような小さな動物の置物だった。象に犬、キリンといったメジャーな動物からペガサスにユニコーンまで。かわいいな。せっかくなら買ってくか。
「これいくらです?」
「2つで500バーツ(当時のレートで約1750円)だよ!」
たっけ。こんな手に乗るくらいの小さな置物で?
「1つで300バーツ(当時のレートで約1000円)」
まじかい。
そんなふうに思いながらも、道を教えてもらった恩を感じてたせいで像の置物を一つ買ってしまった。
この大きさとクオリティで1000円は高すぎる。
人の親切には気をつけろってことか…。
ワット プラタート・ドーイステープ
ぼったくられたのはしょうがないので、気を取り直して約300段の階段を登った。龍やワニ、蛇などの爬虫類をあしらったデザインが素敵だ。
登りきった先で入場券を30バーツ(当時のレートで約110円)で購入。
やっていいこと悪いことが書いてあるのでよく読んでおこう。
寺院を見学する前に展望台へ。
標高1000mに位置しているのでチェンマイを一望する景色が見られること有名な、この場所。けれども、この日は天気が悪く雨模様だったので、見ることができるか確認しておきたかった。
結果は最悪。何も見えない。
まあ天気ばっかりはしょうがないので、気を取り直して寺院の見学をすることにした。
この寺院は、素足で上る必要がある。外にむき出しなのであちこちに水たまりができてて気持ち悪い。しょうがない。
寺院は、とってもきれい。この寺院には面白い参拝方法がある。
まず、お賽銭を入れ、ろうそくとお供え物の花を手に持つ。
ろうそくに火をつけ、ろうそく立てに立て、ひざまずいて手を合わせる。
このとき、ろうそくに火をつけろうそく立てに立てようとしたが上手く行かずに落ちてしまった。しょうがない。
その後、お供え物の花を手を合掌して挟み込むように持ちながら寺院をぐるぐると三回回るのだ。
ピチャ…ピチャ…ピチャ…。
水たまりを素足で歩くのが気持ち悪いけどしょうがない。
とりあえず無事大学を卒業できることを祈っておいた。
その後、一通り見学を終え足を拭いて靴を履き直していると、さっきより少し天気が良くなっていることに気がついた。
嬉々として展望台に行くと、眼下に広がるチェンマイ市街が…!
決して、快晴ではないがしっかり見える。ああ、嬉しい。
日本とは全く違う街の作りを上空から見ることができて本当によかった。
君はどっちを取る?
行きはタクシーで来たけれども、帰りはソンテウ(相乗りタクシー)に乗って帰ることにした。
「タクシー?」
出口を出るとすぐに話しかけられる。この寺院までの観光客の交通手段はタクシーやソンテウしかないので、大量にドライバーが待機しているので困ることはないだろう。
話しかけてきた人は英語で書かれた料金表を見せてくれたので、明朗会計で非常に助かった。
基本的に相乗りなので料金表にない場所にも方向が同じならば交渉すれば連れて行ってくれる。便利だ。
このあとすぐにチェンマイ国際空港に行きたかったのだけれども、料金表を見るとチェンマイ旧市街方向に向かいソンテウだったので、さすがに行けないだろうと思い、途中にある大型ショッピングモールでおろしてもらうことにした。そこからタクシーを拾って空港に行こう。
車内はこんな感じ。
動き出すと結構勢い良く進んでいく。客室は外にむき出しなので、排気ガスが凄く臭い。相席した人たち(特に外国人)も、だいたい鼻を押さえている。
ただ60バーツ(当時のレートで約200円)で降りることができるので、タクシーに比べ破格だ。
ソンテウは一長一短。君はどっちを取る?
マクドナルドってすごいな。
あっという間にショッピングセンターに到着した。
別に何を買うわけでもなく中を見て、その後、バイタクを呼んだ。
バイタクを呼んだのは、例え渋滞してても、関係なしに目的地にたどり着けるから。あと単純なアトラクションみたいで楽しい。
チェンマイ国際空港に到着すると、飛行機のチェックインを済ませ昼食を取ることにした。
選んだのはマクドナルド。海外でマクドナルドを食べてみたいと思っていたのでチーズバーガーのセットを注文。
ケチャップがセルフで4種類から選べるとか、ドリンクの大きさがXL以上もあるとか細かい違いはあるが、基本的に日本で食べるチーズバーガーと全く同じ味がした。俺の舌が馬鹿なだけかもしれないのだけれども。
マクドナルドってすごいな。
再びバンコクへ
腹ごしらえを済ませ、手荷物検査を終えると、飛行機へと乗り込む。
タイのLCCノックエアの飛行機は可愛い。
バンコクからチェンマイまで寝台列車で14時間もかけて行ったのに、チェンマイからバンコクへな1時間半のフライトで到着した。文明の利器は本当に素晴らしいな。しかも2300円くらいでチケット取れたし。
再びバンコクのドンムアン空港に戻ってきた。なんか変な感じだ。
2日目のバンコク市街への移動はタイ国鉄を使ったのだけれども、はっきり言って便も少ないし時間もかかるので、今回はバスを使って市街地へと向かう。国鉄はとにかく安いし(とは言っても日本人の感覚だとバスも十分安い)風情もあるから何を重視するかで乗り物は選んだほうがいいだろう。バスは市街地からは若干離れたところに降ろされるというのもある。ただしMRTがすぐ近くを走っているので特に問題はない。
特に今夜の宿はバスを使ったほうが早く行けそうだったので、そっちを使うことにした。
バス車内。
乗り方は簡単で乗り込んだら30バーツ(当時のレートで約110円)を回ってくる乗務員の人に渡すだけだ。
このとき、日本から来たであろう10人近くの男子大学生が、これから夜遊びに行くことに興奮して大騒ぎしてたので不快だった。こういうときはイヤホンをしてシャットアウトしてしまうに限る。
バスがBTSモッチート駅周辺で止まったので、そこで降りる。大体の人がここで降りるので、特に迷うこともないだろう。
僕は、この近くのホテルを予約したので歩いて向かうことにした。タクシーを捕まえても良かったのだけれども、今日結構乗ってしまったのとタイの道路事情が一方通行が多くて僕の進行方向では、かなり遠回りになるので歩いたほうがいいと思ったからである。
振り返ってみると素直にタクシーを使うべきだったと思う。そもそもタイは車社会で道路が人が歩くように設計されておらずホテルは見えているのに、なかなかたどり着くことができなかったのだ。
かっこいい大人になったら、また来よう。
やばい。全然何言ってるかわからん。
かろうじて撮影したホテルの入り口。
今までとぜんぜん違う。
ホテルのフロントで僕は心底ビビっていた。
今夜の宿は今までの貧乏旅と打って変わって5つ星ホテル。セールで安かったので意を決して、このためだけに日本からタイまで持ってきた着慣れないジャケットを羽織りチェックインをしている。
今までの場所と違うのか、フロントの人の英語が流暢すぎて全然聞き取れない。
それでもなんとかチェックインを終え、部屋に入った。
なんというか高級感がすごい(語彙力)。なんかソワソワしてしまう。
少し休んでから僕は屋上へと向かった。実はこのホテルに泊まったのは、屋上にあるルーフトップバーでお酒を飲むことにあった。地震の少ないタイでは日本の建築基準では考えられなくくらい開放的な高層ビルの屋上でお酒を飲むことができる場所がある。
スタッフに案内されるがままにバーカウンターに座る。本当は外に出たかったのだけれども生憎の雨でそれは叶わなかった。
やばい、めっちゃ緊張する。思い起こせば日本でもほとんどバーなどほとんど行ったことがないのだ。
目の前にバーテンダーがいるのだけれども、想像と違ってずいぶんフランクだ。こっちはただでさえ英語力がないことに加えて、緊張で完全にパニック状態になってしまっているけれども、笑わせてくれたり試飲させてくれたりとサービス精神がすごい。ちょっと馬鹿にされてるような気もするけど、まあしょうがない。
「モヒートを一つ」
ウェルカムドリンクとして2杯のモクテル(ノンアルコールカクテル)を飲み終えると、さっそくお酒を頼む。このウェイルカムドリンク実はこのバーでは飲めなかったのにサービスで出してくれたのだ。ありがたいのと申し訳ない。
タイの暑い気候ならミント風味の効いたモヒートが合うだろうと思って頼んだ。
「モヒート?」
バーテンダーが怪訝そうな顔をした。え、もしかしてモヒートないの?
「…あ、あのミントフレーバーの…」
「ミントフレーバー?」
なんでよ、モヒートないの?目の前に瓶が置いてあるじゃん。
「あれです、あれ。モヒート」
これ?という表情でバーテンダーが持った瓶に書かれていたのは「Mojito(モヒート)」ではなく「Martini(マティーニ)」だった。完全に見間違えた。
うわ、はずかし。
「…マティーニで」
結局、ドライマティーニを飲むことになった。
思えば生まれてはじめてバーに行ったときも、名探偵コナンで知ったカクテルの名前で、とっさにマティーニ飲んだっけ…。
写真だけはいいものが撮れた。
マティーニの中のオリーブって
食べるの?食べないの?どっち?
もっとこういった場所が似合うかっこいい大人になったら、また来よう。マティーニを飲みながら再訪を誓うのだった。
ちなみに、一杯カクテルを飲んで411バーツ(当時のレートで約1500円)だった。たっけ。
最後に
お久しぶりです。年内には書ききりたいので、更新がんばります!
4日目もなんとか終わり、残すところあと2日。
続きます。
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