サムネ

【第62回】二重に仕組まれた罠(上海旅行記Vol.2)

この記事は【第61回】謎の言葉「イツマッ」を解き明かせ(上海旅行記 Vol.1)の続きになります。合わせて読むとより面白く読めると思います。


はい…。えっと、上海に来たんですけど。…………その、道がわからないっていうか。うん…。どこ行ったらいいかわからんし………。そもそも地図がない……。コトバガワカラナイ。クラクションがめっちゃ鳴ってるよ…。ハァ…、苦戦しそうっす。それじゃぁ……。

これは上海で僕が記録したビデオファイルに残された音声を文字に書き起こしたものである。

モバイルWi−FIを言語の壁を乗り越えなんとか借りられたのだけれども、異国の地「上海」で新たなトラブルに直面していた。

そう、道に迷ってしまったのだ。

愚かな僕は己の失敗に気が付かない

上海浦東国際空港の中にある浦東国際機場駅から地下鉄に揺られ4駅行った場所に川沙駅という駅がある。この付近は近年は上海ディズニーランドの影響で開発が進んでいるものの上海の中でも比較的田舎の地域であり宿代の安い地域でもあるので、できるだけ宿泊費を抑えるため僕もこの駅近辺に宿を取った。

飛行機の到着時刻が18時を過ぎていたので両替やモバイルWi−FIのレンタルなどやっておくべきことをすべて済ませると、すぐに電車へと乗り込んだのだ。地下鉄に乗る前にX線による手荷物検査があったことに驚き、ここは日本とは違うのだということを改めて実感した。上海の地下鉄の広さや窓から見える景色に感動していたので体感時間としては、あっという間だったように思う。目的地である川沙駅には20分程度で目的地に到着した。

川沙駅を降りたときの写真。
「せんさ」と読むらしい。

地上に出てすぐに撮った写真。
道路の反対側の建物達の雰囲気が日本とは違う。

改札を抜け地上に出ると日本では見られないような景色が広がっていた。やたらキラキラしてる店の外装。右車線の道路。鳴り響く車のクラクション。僕のテンションは最高潮に達していたけれども「いやいや、ここは日本じゃないんだ。浮かれすぎちゃダメだ」と気を引き締めてホテルに向かった。日本で見た地図の記憶を頼りに。

なんでこういった無謀なことをしてしまったかというと中国の独自のネット環境に理由がある。中国ネットには「金盾」と呼ばれる大規模検閲システムが働いているのだ。これによってYouTubeなどのGoogle関連のサービスやLINE、Twitterといった僕たち日本人が普段遣いしているようなSNSは一切使えなくなってしまう。

僕の持っていったガイドブックには川沙駅近辺の地図は掲載されておらず記憶を頼りにしていくしかなかったのだ。いや実際はそんなことない。振り返ると地図を印刷して持っていくとか中国国内で使えるマップアプリをダウンロードしておくとかいろいろ方法はあったはずなのだけれども、ホテルを予約したサイトで見た外観が真っ赤であり特徴的な建物だったからすぐに分かると思い完全に油断していた。

この時点で完全に将棋で言うところの「詰み」、チェスで言うところの「チェックメイト」なのだが、このときの僕は愚かにもその事に気づかず、異国の町並みに心を踊らせていたのだった。

ついに迷い始めたことに気がついた

おかしい。ぜんぜんホテルにたどり着かない。時計をチラリと見ると歩きだして20分程経過しているし、日も傾き始め暗くなってきた。ここでようやく僕は迷っていることに気がつき、それを自覚した途端に急に心細くなってしまった。立ち止まってGoogle Mapのアプリを起動するも案の定使えない。やばい。

落ち着け俺。慌てるとろくなことがないぞ。よく考えてみろ。旅にトラブルはつきものだ。先程もトラブルもしっかりと乗り越えてきたじゃないか。

一度、深呼吸をする。近くにあった街路樹にもたれかかり打開策を考えることにした。

しばらく金盾で弾かれないYahoo!を通じてネット検索をしながら考え込んでいると、そういえば金盾対策でホテルの予約画面をスクショしていたことを思い出した。すぐさま、その画像を開いてみると、予約画面には地図が掲載されている。

しめた。このページに行けば地図を見られるかもしれない。

思ったとおりホテルの予約ページに行くと地図を開くことができた。よしっ。

現在地は表示されないものの、かなり詳細な地図が書かれている。駅も地図に記されているので駅から辿ればホテルにたどり着けるかもしれない。

この戦い僕の勝ちだ。さすがに今まで通った道は覚えているので、駅には流石に戻ることができる。

そう思うと意気揚々と僕は駅に向けて踵を返した。

巧妙に仕組まれた2つ目の罠

おかしい。なぜホテルにたどり着かないのだろう。足は疲れてきたし焦りからか嫌な汗が止まらない。辺りはすっかり日は落ちてしまったし、日本と違って街灯がほとんどないせいで様々な不安が駆り立てられる。

地図を見ながら現在地を推測しつつ歩いているのにも一向に到着しないのだ。僕の推測が正しいのであれば何度も目的地を通り過ぎている。一体どうして…。なにが起こったんだろう。

実は僕がホテルにたどり着けないのは当たり前で、それもそのはずのなのである。これはあとから分かったことなのだけれども予約ページに記載されているホテルの場所が間違っていたのだ。そんな状態ならばたどり着けるはずがない。こういうことが起こってしまうのが海外なのかもしれないと帰国した今だから笑い飛ばせるけれども当時の僕は相当焦っていた。

そもそも海外旅行に慣れていないから、ただでさえ不安でいっぱいなのに夜になってしまったら何が起こるかわからない。闇夜に紛れて襲われるかもしれないし金品を盗まれてしまうかもしれ無いと思うと気が気ではなかった。日本だとそんなことはほとんど起こらないけれども海外では何が起こるかわからないのだ。

こうしてまるで遺書のようなビデオメッセージを残したわけなのである。

背に腹は変えられない

しかたない。スマホのグローバルローミング機能を使おう。

グローバルローミングとは簡単に言えば海外でも日本で契約しているキャリアで通信できる通信方法のことをいう。普通は日本のキャリアで契約した場合、海外では使用することができないのだけれども、この機能を使えば通信することができる。またこの機能を使えば金盾の規制を回避することができるのだ。ただし別途お金がかかり割高である。けれども背は腹には変えられない。

こうして僕は使い慣れたGoogle Mapを活用しホテルに辿り着くことができたのである。

奥の赤い建物が宿泊したホテル。
見えたときは本当に感動した。

ちなみに予約ページの地図に記載されていたホテルの場所と実際の場所には1km以上の差があった。本当にやめてほしい。

最後に

せっかく上海旅行記を書いたので、しばらく続けて連載していきたいと思う。トラブルばかりなので、ぜひ読んでくれると嬉しい。

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>>次の話はこちら:Coming Soon!

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まるこす
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