【第54回】ごめんね、アインシュタイン。
20世紀最高の物理学者アルベルト・アインシュタイン。彼の生み出した相対性理論は世界に多大なる影響を与えた。科学の発展に多大な貢献をし現代物理学の基礎を築いた存在である。しかし、この理論は原子爆弾の発明の遠因となり、世界を二分する冷戦という時代を経て今日でも核の危機は消え去っていない。
相対性理論の革命的だったところは絶対的であるとされていた時間が、観測者の状況(速度・重力)によって相対的に変化するのではないかと考えた点にあった。この理論が世に発表されてから100年ほど経過しているが、ブラックホールの発見や重力場の観測などを通じて少しずつ理論の正確性が証明されていっている。今もなおアインシュタインの生み出した相対性理論は人々の心を捉えて話さないのである。
個人的な話だけれども、時間が相対的だということは最近すごく痛感している。手に取るようにハッキリと時間の流れが違って感じられるのだ。
そう、バイトで。
今、僕は物流センターで商品を仕分けするバイトをしているのだけれども、やっていることは単調かつ肉体労働でかなりキツい。バイトと言ってもの労働日ごとに雇用契約を結ぶ単発バイトを繰り返していることから昇給もないし一緒に働く人も場所も労働内容も毎回異なる。こんな状況ではモチベーションなんか湧くわけがない。最低賃金よりもわずかに高い時給とシフトの自由さを引き換えに勤労意欲と体力をゴリゴリと失いながら今日も今日とて遊ぶ金欲しさにバイトをしている。しんど。
気の置けない仲間と一緒にいる時間とバイトをしている時間では、どうしてこんなにも経過する時間が違って感じられるのだろう。遊んでいるときはあっという間に時間が過ぎ去り、もうこんな終わりかぁと名残惜しさを噛み締めるのに、バイトでは永遠にも感じられる時間を引き伸ばして引き伸ばされる拷問を味わっている。懲役30日かよ。
「アインシュタイン、貴様を恨むぞ」なんて思いながらバイトを繰り返すしかない。彼が相対性理論を提唱しなければこんな思いはしなかったかもしれないのに。いやアインシュタインのせいじゃないんだけどさ、八つ当たりするしか無いじゃん、もう。
なんてことを考えていたけれども、調べてみるとどうやら相対性理論では本当に時間の流れ方が変わっているのであって、主観で時間の流れが変わっているように感じるのは心理的や脳機能の働きによるものらしい。どうやらアインシュタインはマジでとばっちりを受けていたようだ。
ごめんね、アインシュタイン。