12月18日金曜日
テアトルとシネマカリテを間違えた。
人と会う予定がなくなりぽっかりと空白ができた金曜夜、もとの予定は楽しみだったけど、これだってかなり最高なものだ。近所に最近できたコンビニのイートインスペースのようなワインバル(あれをバルと呼んでいいのか、私にはわからない)に寄り道しようかと昨夜からずっとうきうきしていた。何をするも自由、しないも自由。仕事を終えた瞬間の気分ですべて決められる。万歳!スケジュールを管理するアプリが、今朝の電車で私に知らせた。今日は観たかった映画の公開日。仕事は18時終業、最終の回は18時40分からテアトル新宿で。間に合う。決まりだ。
駅から最短ルートを迷わず突き進んだはずが、着いてみたらそこはシネマカリテだった。あれ。間違えた。だって、今日の映画を観たかったのは、二年前にシネマカリテで観た映画がきっかけだったから、すっかりここで上映するもんだと思い込んでいた。少し焦りはじめる。まもなく開演10分前。時間がないので念のためグーグルマップを見る。もう一回同じことしたらアウトだ。間に合わない。私はコマーシャルもすべて楽しみたいタイプなのだ。寒い冬の夜なのに、小走りで向かったので、汗をかいて、マフラーは途中で首から引っこ抜かれた。伊勢丹の脇を抜けたら、小さな金の星みたいな照明がたくさん頭上にぶら下がっていて、きれいだった。急いでいたけど、わあと声を上げたくなった。
到着して、地下への階段を下りながら、思い出した。今年の二月に会社を辞めて一番最初に、観たかった映画の、平日朝の一番目の回をここで観たんだった。あの時はもう既にマスクをしていた。確かいっこ空きでしか座席を選べなかった。でも今日は、右にも左にも前後の席にも、人は座っていた。もうすぐ一年経ってしまうのか。私はいつも、一年前はまったく違う暮らしを送っているな。仕事も変われば彼氏も変わった。だけど、住んでる部屋は、8年も変わってない。
映画は良かった。どきどきしたり、苦しくなったりした。感情の乱高下が自分のもののようだった。うまくひととと生きてゆけないことを諦めて受け入れているようだけど、卑下しているようでもあって、もしかしたら今度は、という期待もあった。うまく言えないうちは言葉にしたくないんだけど、でも、今日観られてよかったなって思った。
終演の21時までなんだかやたらと長く感じた。ゆっくり駅まで散歩する気持ちで歩く。お腹すいたな。今声を掛けられたら、着いてってしまいそうだな。喉の渇きではなくて小腹を満たしてくれるひとだったら。実際のところ、精神的に潔癖だから着いていかないだろうと思うし、道端で知らない人に声掛けられるの怖いし、そういうとこで話しかけてくる人はみんな主語がでかいから嫌いだ。でも、着いていくこともあるかもしれない、人生長いし。
どれだけゆっくり歩いてたんだろう、ホームについて時刻を確認したら、もう21時半だった。お腹がギュウギュウ言ってるから早く帰りたかったんだけど、急行のホームに人が多すぎて、乗るのをやめた。今日は時間かかってもいい、静かに帰りたい。各停の座席に腰かけたら、二時間半潰されていたせいか、尾てい骨あたりが痛んだ。
丸二日連絡を無視していた彼氏に、そろそろ連絡してあげようかな、と思った。
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