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動物と暮らす。 Vol.53
こんにちは。
perromart.jp 獣医師スタッフの原 駿太朗です。
突然ですが、皆さんは普段の何気ない風景や様子って写真に残しています
か?
私は普段そんなに写真や動画を撮る習慣はないのですが、残しておかないとダメだなぁ…と感じることがあったので、今日はそのお話を。
担当していた子との死別
昨年の暮れに、私が担当しているネコちゃんが亡くなりました。
その子とは私が獣医になってすぐの頃から担当をさせてもらっており、慢性的に残っていたネコ風邪や難治性口内炎の治療、定期健診などをずっとおこなっていました。
その子はまぁ気が強くて、病院が大嫌い。
亡くなる直前の頃には往年の勢いこそ落ちてきていましたが、それでも唸りながら隙さえあれば手や口が飛び出してきたり、おしっこをかけてきたりと最後の最後まで気の強い子でした。
死因は老衰でした。
看取りまでの間でしてあげれることは全部してあげれたよね。と飼い主も私も心から思えるような穏やかで準備ができた看取りでした。
それでも当然なのですが、亡くなった直後にお電話で話していた時もお母さんは相当なショックを受けているような印象でした。
驚かされたお母さんの急激な心境の変化
ところが年が明けて同居のもうひとりのネコちゃんの健診で病院に来られた時にはお母さんの顔はとっても明るくなっていました。
「あれ?お母さん、すごい元気ですね!」と私が話しかけると、お母さんはカバンから大事にカバーのされた1枚の写真を出して見せてくれました。
それは生前、大好きな自宅の庭で寝そべって気持ちよさそうこちらを見ている亡くなったネコちゃんの写真でした。
「亡くなる直前は体もどんどん痩せてきちゃって、食べる量も減って鼻づまりもあって辛そうだったりもしたけど、その少し前っていつもこんな感じでのほほーんと庭で寝てたのよ。
見て見て!病院に来てる時とは全然顔つきも違うでしょ!」
そう話すお母さんは本当に楽しそうにその時の思い出を振り返られていました。
大きな喪失感に襲われていたお母さんにふと見つけた写真がその子との楽しかった頃のたくさんの思い出、そしてその思い出を通して亡くなった今も心で繋がっていると思わせてくれたのです。
いつかくる「別れ」のために私たちが今からできること。
愛する家族が亡くなった直後、人はどうしてもその喪失感と直前にある「辛そうだったその子」の思い出に捉われてしまいがちです。
そんな時、「何気なく撮った1枚の日常を切り取った写真」が実はそれ以上にたくさんの「幸せな瞬間」があったことに気づくキッカケをくれるのです。
素晴らしい形で家族との別れというとても大きな困難を乗り越えているこの出来事を通して自分ももっと意識してふとした日常の瞬間をもっと大切に残していかないとなぁ…。と思いました。
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ありがとう。ミーちゃん。また、会いたいなぁ…。噛まれたくないけど。笑
最後までお読みくださりありがとうございました。それでは、また来週。
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