Twitter詩 2020.10
しおり
青春の一ページ
並んだ机
黒板の落書き
運動場に響く声
今でもよみがえる
あの日
返せなかった
言葉に
忘れ去られた
しおり
黄ばんだ紙の匂い
この本の
タイトルは
思い出せない
(20201006)
リモートの恋
昔から思ってた
この電話の間に
会いに行けるなって
それをしないのが
大人
それができないのが
大人
恋なんて
どこでだってできるから
寂しくないふりをして
私達はひとりになってく
(20201007)
第五世代移動通信システムで
子供の頃に夢見たものが
実現可能な未来が来ても
たった数センチメートルの距離でも
うまく受信できない
わたしたちの感情は
難解で複雑極まりない
まだ四十光年離れた場所から
送られる宇宙人からの
シグナルの方が
解読できるかもしれない
(20201018)
小さな箱の中には
あなたからもらった
キラキラした
希望の欠片を
小さな箱に詰めて
大切に大切に
しまっておいた
いつかきっと
誰かに渡すときが
来るはずだから
泣いている
大事なあのこ
怒っている
優しいあのこ
悩んでいる
未来のわたし
小さな箱の中には
空っぽの心を満たす
大切なものを入れてあるから
開けてみて
(20201018)
月とライオン
大海原に浮かぶ月を
風波が
乗り越える
揺れる水面に
黄金色の
獅子のたてがみ
鎮まることのない
怒りも
絶えることのない
祈りも
すべてのみ込んで
遠くの水平線に
夢を託す
朝が来るには
まだ早いから
今はまだ
おやすみなさい
(20201027)