祈り②
「今は」
8月15日正午
気温34度東京新宿
いつもと変わらない景色
見つからない影
子どもの泣き声
夏の匂い
歪む時空
この時期になると
体が本物じゃなくなる
夏は嫌いだ
少なくとも
今は
・・・・・
「時に」
この時が
いつか過去のものとなる
光が射すことを祈って
進むことしかできなかった
かなしみも
苦しみも
消えることが
許せないわけではないのに
誰も気付かない
涙が落ちる前
見上げると雲間から虹
わたしだけが
今なおここにいる
・・・・・
「祖母」
故郷に帰りたいと叫びながら
鬼のような形相で逝った祖母
向こうの国で会いたい人達と
無事会えたろうか?それとも
魂だけで帰ったのだろうか?
天に昇り穏やかな顔になった
自由なはずなのに不自由な生
手放す時に初めて解放される
深く刻まれた皺に無言の怒り
写真では分からない幸せの声
それは真理とはほど遠い幻想
・・・・・
私は晴れの日が嫌いだった。
照りつける陽射しがじりじりと私を責め立てて、
眩しい光に目眩がする。居場所が奪われた感覚。
呪いみたい。
・・・・・
「きみの声」
空に轟く
きみの声は消えた
地球上の悲しみが
降り注いでいる錯覚
土砂降りの雨
流せない苦しみもある
蒸発しない悲しみもある
きみはもういない
30分ほどで
落ち着きを取り戻す
明るくなった空
架かる虹
別世界に連れて行かれたように
忘れてしまった
雷鳴
きみの声
夏の終わり