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Twitter詩 2020.2

1本の電話で駆けつける。
消毒と独特の匂い。
口が渇き何も話せない。
震える手。落ちる涙。

もう起き上がることは
かなわない
痩けた頬
浮腫んだ足
抜けた髪
恐怖を受け入れて
今を受け止めて
微笑む
それはまるで
忘れかけた
ドロップの味のよう
わたしは言った

またいつか
それまで
どうか幸せに。

(20200201)

甘いお菓子にも
ひとつまみの塩
お母さんは言う
甘くなるおまじない
人生も同じよね
とお祖母さんの言葉
繰り返される母娘の会話
ふと
かなしい涙がしょっぱく
感じるのは
おまじないが溶け出したから
と思ったりして
焼き上がったクッキーを
味見する
うん、良い塩梅

(20200203)

ボトル入りガムの捨て紙

環境への配慮で
枚数は少ないらしい

吐き捨てられたガムが
わたしの靴底にへばり付いた

犯人探しに意味はなく
紙がなくなったからだと
踏む方が悪いと
吐き捨てるんだろう

ニタつく顔は
紙が付属されなくなっても
同じ表情で
きっと何も思わない

(20200205)



ひとつ
枯れている花に手をのばす
あなたが一番綺麗な時に
見つけられなかった
ごめんね

ひとり
遠回りして辿り着く目的地
踏みならされた場所に
私の足跡は残らない
いつも
こんにちはもさようならも
言えなかった
ごめんね

ありがとうって
言えなくて

ごめんね

(20200210)



遠ざかる
鳥の羽ばたく音
忍び寄る雲
今日の風はあたたかい
本をめくる
菜の花忌
古ぼけたスニーカー
きみはベッドで
花の咲くのを
待っている

(20200212)



囚われている
真新でいようとするほど
私は私以外で作られる
繊細で脆い
ガラス細工のように
固められている
生まれ落ちたその日から
私は私以外に作られる
単純で忠実な
ゴーレムのように
縛られている
意思も主張も持たない
ただの
操り人形のように
囚われている

(20200218)



下ばかりむいていた
あたしを馬鹿にするあのことあのこ
いなくなっちゃえばいいのに
あたしなんて
傘で見立てた
魔法使いの杖で地面を突く
水たまりから虹が浮かび
一面七色の花畑
あたしは雲に乗り
鼻歌をうたう
なんて
空想しながら
水たまりを飛び越える

(20200221)



春一番
まだ肌寒い
露に濡れた梅が
眠る朝
ひとり歩くこの道に
夢や希望という言葉は似合わない
アスファルトが途切れるまで
下を向く
今日が春一番
もっと強く
強く吹いて
吹き飛ばしてほしかった
答案用紙
終わらせて
はじまるまで
春は来ない
けれど
鼻にツンとくる
春の香り

(20200226)