愛の記憶

誰かを愛し、誰かに愛された記憶は
そう簡単に消えるわけなくて
ほんとにふとした瞬間、
身体がピタリと止まることがある。

会いたいわけじゃないけれど
やり直したいとかもないけれど
たしかにあった2人の時間に
すこしだけ、浸ることはあるよ。

顔に靄がかかり出す。
思い出すたびに欠けていく。
そうしていつか
思い出すことすらなくなって、
思い出せなくなっていることにも
気付かなくなるときがくるのだろうか。

お互いを瞳に映す時間が
永遠だと思っていた。
かけられる愛の言葉は
わたしのためだけにあった。
胸の真ん中を占拠するのは
ずっとその人であるはずだったのに。

忘れようとはしないけど
覚えていたいわけではないし、
忘れたいわけでもない。

だから、
本当にどうもこうもないんだけど、
あの頃にふらっと意識が戻ったときには
この世界のどこかで元気に生きてることを
心の片隅の片隅の端っこの端っこで、
ほんの一瞬だけ、願うことはあるよ。

ほんとに、それだけ。
ただそれだけになった人。

いいなと思ったら応援しよう!