ないものねだり



もしも、
わたしに足りないものがあるとしたら
胸の穴を埋められるものがあるとしたら

それはきっと、
自分から自分への愛だけだと
ついに見つけ出したような顔で
ずっと前から知っていたことを忘れて
ノートの1ページに書き記すのだろう


すべての人に好かれるのが無理なら
せめて自分だけはと思いながら
それをないものねだりと言うことを
人知れず理解した瞬間、
たまらないほど消えたくなった


ああ、いいな
周りはみんな幸せそうで

ひとりぼっちに見えるあの人は
左手に指輪が光ってる
わたしにやさしくないあの人も
穏やかな顔で笑ってる


鍵のかからない檻の中で
不自由にしているわたしは
自分から見てもひどく滑稽だ

何にも縛られてなんかないのに
そのことに気づいていながら
留まる理由を聞いても答えない


そのまま死ぬ気ならば
もう何も言うまいと憐れむ視線に
うっすらと笑みを浮かべてしまうのは
たったひとり、
想う誰かから差し伸べられる手を
待っているからかもしれない

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