2024/7/30(火)の宿題:しろいうさぎとくろいうさぎ
『今日の宿題』(Rethink Books編、NUMABOOKS)に毎日取り組んでみる10日目。
堀江敏幸さんからの出題
父が教育熱心だったから、私の家には絵本がたくさんあった。だからはじめて読んだ本がどれだか、もう分からない。今日の宿題にはどうにも答えられそうにない。
とくに記憶に残っている絵本の話をする。『しろいうさぎとくろいうさぎ』(作:ガース・ウイリアムズ、訳:まつおかきょうこ)。リアリティのある独特のタッチで、色もとても少ない。絵本にしては珍しいシックな絵柄だと思う。この話、うさぎの友情の話のように記憶していたが、結婚の話だった。
先日駅ビルを歩いていたら、3歳くらいの男の子を抱っこし、5歳くらいの女の子の手を引いているお母さんとすれ違った。3人は大きな声で会話をしていて、遠くからでもよく聞こえた。
「ぼく、おかあさんとけっこんする!」
「○○はいいなあ、男の子で。あたしは女の子だからおかあさんと結婚できないもん」
大きくなったらお母さんと結婚するって、子供は言いがちかもしれない。私も言っていたらしい。結婚って、ずーっと一緒にいられることだと思っていた。それこそこの2匹のうさぎのように。だから当然、性別なんか関係ないと思っていた。
この2人の子供にお母さんが言った言葉を、すれ違う直前に聞いた。
「女の子同士だからって結婚できないってことはないんじゃない?」
前提として、肉親と結婚することは不可能だ。それは別として、そのお母さんは女の子同士の結婚について言及した。女の子同士が結婚できないってことはないんじゃないか。現行の法律ではできないけれど、結婚に準じるような形でそばにいることはできる。そしていつか、結婚それ自体も。そういう含みを、私は勝手に感じた。
あのお母さんの言葉を子供たちが理解できるかわからないし、子供たちがそれを聞いてなんて言ったかもわからなかった。でも、すれ違っただけの何も関係のない私が嬉しくなって、胸がじーんとしていた。
女の子同士、男の子同士、好きな人と結婚できる日が早く来たらいい。女の子同士だから結婚できないんだよ、なんて、子供が言わない国になったら、それはいまより少しいい国なんじゃないかな。
(堀江敏幸さんについて)
『あとは切手を、一枚貼るだけ』(小川洋子・堀江敏幸、中央公論新社)で初めて作品を読んだ。小川さんと交互に書くことで転がっていく先が予想もつかないことばかりで楽しく読んでいた記憶がある。すばる文学賞や芥川賞の選評は、他の作家の方とは一味違う方法で書かれていて、その独特の空気や世界観がとても好きです。