愛犬・外飼いトイプードルの思い出42
「犬、飼ってましたよね?」
愛犬が突然いなくなって2週間ぐらいたった頃、仕事先でふいにこう話しかけられた。相手は仕事で何度か会ったことのある人で、顔を合わせれば雑談をするくらいの間柄だったから、向こうにしたらただ単に、会話を始めるきかっけだったのだろう。
でも愛犬ロスど真ん中だった私にとって、家族と、近所の散歩知り合いと、それからごく親しい友人以外から犬の話題を振られるとは思ってもいなかったのでひどく動揺してしまい、挨拶もそこそこにその場を離れてしまった。それほど不自然ではなかったと思いたいけれど、「あれ?どうしたんだろう?」ぐらいの違和感は持たれたはずだ。
あの時はまだ悲しみが巨大で、愛犬のことを口にすることができなかった。
たぶん、トイプードルを外で飼っていると話したのは私だったのだろう。そしてたぶん「えー!」と驚かれたんだと思う。きっと彼女も犬好きで、だから記憶に残っていて、もしかしたらその話の続きを聞きたかったのかもしれないのに、足早に立ち去っちゃってごめんなさい。
「えーなにそれ可愛い、愛犬ですか?」
と唐突に話しかけられたのは、つい3日ほど前、お店のレジで会計をしていた時のことだ。ネイルに描かれた犬の絵をめざとく見つけた店員さんが、無邪気にそう聞いてきた。
「そうなの、でも死んじゃったんだよね……」
不思議なことに、今回は自然に言葉が出てきた。自分でもちょっと驚いた。知り合いでもなんでもない人だからだろうか?それとも、少し時間がたったからだろうか?そんなことをぼんやり思い、束の間、思考が止まった私に店員さんがかけてくれた言葉が、
「今も一緒にいるんですね」
だった。そう、今でも毎日、愛犬のことを思っているよ。