見出し画像

NVDA 日本語版 2024.3jp をリリース

無料(オープンソース)の Windows 用スクリーンリーダー NVDA (NonVisual Desktop Access) の 日本における開発コミュニティである NVDA 日本語チームは、 2024年8月23日に NVDA 日本語版 2024.3jp をリリースしました。

インストーラーのダウンロードはこちらからどうぞ:

i.nvda.jp

GitHub リリースも利用できます。

Windows 11, 10, 8.1 の32ビット版 64ビット版および ARM 版に対応しています。 Windows 8.1 以降ではタッチ操作が利用できます。 NVDA 日本語版のライセンスは GPL v2 です。

NVDA は多くのアプリに対応し、 インストール不要で利用できるポータブル版、 アドオンによる機能拡張など、さまざまな特長を備えています。

NVDA 日本語チームがリリースする NVDA 日本語版は、 オーストラリアの非営利法人 NV Access がリリースする NVDA 本家版に 日本語の音声エンジンと点訳エンジンを追加するなど、 日本語 Windows 環境のための改良を行っています。

2024.3の変更点

NVDA起動時にアドオンストアがアドオンの更新を通知するようになりました。

音声出力と点字出力にUnicode正規化を適用するオプションが追加されました。(NVDA日本語版での状況は後述します)

Help Tech Activator Pro 点字ディスプレイに対応しました。

現在のマウスカーソル位置で上下左右にスクロールを行うための未割り当ての入力ジェスチャーが追加されました。

Windows 11の絵文字パネルとクリップボード履歴に関するバグ修正を行いました。(NVDA日本語版での状況は後述します)

ウェブブラウザにおいて、エラーメッセージ、図、キャプション、表のラベル、チェックボックス/ラジオボタンのメニュー項目の報告に関する修正を行いました。

LibLouisを更新し、キリル文字のセルビア語、イディッシュ語、いくつかの古代言語、トルコ語、国際音声記号(IPA)に対応する新しい点字テーブルを追加しました。 eSpeakを更新し、カラカルパク語に対応しました。 Unicode CLDRを更新しました。

NVDA最新情報

NV Access のリリース情報(英語)

Unicode 正規化についての補足

ユーザーガイド 音声出力 Unicode正規化オプション で具体的にこの機能の効果を説明していますが、この説明は本家版の仕様に基づいています。

NVDA日本語版では、文字の正規化や区別について独自の拡張を行ってきました。例えば文字報告モードや、音の高さで「全角」「半角」「カタカナ」などを区別する機能は、日本のスクリーンリーダー利用者の意見を反映したもので、本家版にはありません。

本家版の 2024.2 までは、例えば、数字やアルファベットの説明で、全角と半角を簡単に区別できません。
本家版 2024.3 では Unicode 正規化を有効にすると、全角の数字やアルファベットは「1 正規化済み」「a 正規化済み」のように読み上げられます。

今回、本家版のこのような挙動を確認し、NVDA日本語版のこれまでの仕様を変えない方が、利用者にメリットがあると判断しました。結果として、2024.3jp では、Unicode 正規化を有効にしても、ほとんど動作に違いがない状況であることを、お断りしておきます。

今後、NVDA日本語版に対して過去にご報告いたただいた課題を解決していきつつ、本家の機能をより上手に取り込んでいきたいと考えています。

クリップボード履歴対応の補足

本家版 2024.3 は Windows 11 の絵文字パネルとクリップボード履歴に関するバグ修正を行いました。今回、2024.3jp でもこの修正を取り込んで Windows 11 クリップボード履歴対応を改善しました。
一方で Windows 10 では 2024.2jp と同じ状況で、改善を見送っています。詳細は下記で議論しています。
クリップボード履歴へのフォーカス

Windows 10 と 11 の「新しいMicrosoft IME」と「絵文字パネル」と「クリップボード履歴」に対応する処理は NVDA ではひとつの箇所に重なっており、しかも日本以外の国の文字入力も関連しています。
現在NVDAの日本語化で最も苦労している箇所の一つとなっています。

eSpeak NG の日本語対応

NVDA には eSpeak NG という(音が悪いことで有名な)音声エンジンがあります。これが日本語に対応していないことが NVDA 日本語版を作り始めたひとつの理由でした。

NVDA 日本語版では、漢字仮名交じり文を無理やり英語のような文字列に変換して読み上げさせる「eSpeak NG の簡易日本語対応」を行っていました。
この機能を必要とする人が減ったと考えられることと、ソフトウェア品質改善の妨げになったという理由から、2024.3jp で廃止しました。ご了承ください。

いや eSpeak NG で日本語がまだ選べるぞ、とお思いになるかもしれません。何年か前に本家版で eSpeak NG の日本語が選択できるようになりましたが、正しく読み上げるのはカナ文字だけです。本家版からこの選択肢を消してもらうべきか。。

NVDA日本語版の説明にも、今回、eSpeak NG は日本語に非対応と明記させていただきました。

注意事項

2024.3jp の変更点

NVDAを更新したあとで動作に不安定になったり不具合が起きたように感じたときには、Windowsを再起動することをおすすめします。

お知らせ

NVDA日本語チームとシュアルタは、定期的に技術会議を行い、情報を共有しています。本家 (NV Access) とも情報を共有しながら、不具合や要望への対応を進めます。

NVDA日本語版へのお問い合わせ

株式会社シュアルタは9月7日に開催されるアクセシビリティカンファレンス名古屋のスポンサーとして参加する予定です。公式サイトもどうぞ

nishimotz は9月27日と28日に東京で開催される PyCon JP 2024 で登壇予定です。

「Robot FrameworkとNVDAスクリーンリーダーによるアクセシビリティのテスト自動化」

ソフトウェア開発者のカンファレンスで NVDA の開発の話をするのは2月以来ですが、仲間を増やさないとヤバいなと思い、頑張ります。

今年は PyCon JP のスタッフ(主催メンバー)としても活動しています。会場で皆様とお会いできるのを楽しみにしています。

追記(見出し画像)

記事の内容と無関係の見出し画像の説明です。散歩中に見た夏の空です。毎日暑いですが、皆様もお元気でお過ごしください。

いいなと思ったら応援しよう!