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新千歳空港国際アニメーション映画祭

「パッヘルベルのカノン」がノミネートされた「新千歳空港国際アニメーション映画祭」に、後半2日のみ参加しました。短い滞在で参加したプログラムの感想メモです。

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「インターナショナルコンペティション・ファミリー」

「カノン」がノミネートされたこのカテゴリーは、応募時に無かった。ファミリーの鑑賞に耐えると判断された作品が並べられるようだ。小学生5名からなる「こども審査員」がそれぞれ作品を評価し、議論しながら「キッズ賞」を一点選ぶという仕組みとのこと。

当日は上映を短く区切り、1~3本ごとに作家が登壇し作品解説、こども審査員の質問に1問のみ答えるというスタイルで進行した。

感銘を受けたのが、登壇した作家が想像以上に多様だったこと。ドイツ北部洪水地帯から来たという60代半ばの男性、韓国の40〜50代くらいの女性、アニメーションが趣味だと話す、英語が苦手で内気そうなロシア青年など。

国だけでなく年齢やプロ/アマなどもバラバラな作家が登壇することで多様性、インディペンデントという言葉が具現化している感覚。作品の見え方も深まった。様々な事情の中で作り続ける作家たちを紹介すること自体が、映画祭としてのメッセージになっていると感じた。来日していないが障害を持つ作家の作品もノミネートされていた。日本には年齢高めのアニメーション個人作家はいなそうだ。

審査の結果、『カノン』はキッズ賞をいただいた。万人が理解できると思っていたが、子ども達が良いと思える要素もあったとわかり嬉しい。こども審査委員長は創作活動もしているようで名刺を頂戴した。またいつか会うかもしれない。

長編アニメーション「音楽」

長編の上映と、上映後の監督とプロデューサーによるメイキング・トークに参加。ロトスコープを新しいやりかたで使った実験的な作品で、個人制作をベースに7年の歳月をかけたそうだが、その重みを感じない軽妙さ。

不良がバンドをはじめる物語というと、世の中への不満を吐き出すパンクなどをやりそうだが、登場人物にそうしたベクトルは無い。感情移入させない無表情をベースにしたユーモアがよかった。彼らが演奏する音楽は確かに初心者でも出来そうだが、初めて聞くようなカッコよさがあり、同時に笑える。よくこの音楽表現にたどり着いたと思う。メイキングではどんなジャンル、バンドの曲を意識したかも監督が言及していた。CANというワードがでて、主演の坂本慎太郎とつながった。

声が坂本慎太郎ということで、その周辺の音楽が好きな人には届くだろうけど、全く知らない中高生が見ても面白いだろう。ヒットしてほしいと応援したくなる映画。

スーザンピットなど追悼爆音上映

2019年にスーザン・ピット、ブルース・ビックフォード、Rostoが相次いで亡くなりその追悼上映とのこと。スーザンピットの「アスパラガス」ともう1作のみ鑑賞。苦手かも、と思いながら見たが意外に快感があった。上映後の辻川幸一郎さんの解説がよかったらしい。我慢すればよかった。

チョン・ダヒ マスタークラス

韓国の作家の主要作品上映と解説。6月にアヌシー映画祭で見て気になっていた。個人的な感情の表出ではなく、物語、時間、空間など構造への興味がある方と感じていた。解説で見せてくれたスケッチブックがよかった。細かく書かれたフランス語のメモと丁寧なスケッチ。時間をかけて練り込まれているアイデア。

さいごに

世の中の傾向は効率化と時短だが、チョンダヒ/岩井澤/スーザンピット各氏それぞれの膨大な仕事量の作品群を見ると、射程距離の長い創作にコストパフォーマンスなどない、と思わされた。

今回はじめて参加したが、ホテル/映画館/食事/温泉が一箇所に集まって、気温もwifiも安定した空港内という環境は快適だった。また、アヌシーと違う評価軸を感じられたことも良かった。よんでいただき感謝です。

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