『ナイチンゲール』感想
『ゲーム・オブ・スローンズ』でリアナ・スタークを演じたアイスリング・フランシオシ主演。
ナイチンゲールは鳥の名前でもあり、比喩として美声の人を指すそうです。どうしても日本人は看護師で偉人のフローレンス・ナイチンゲールを連想してしまう。国問わないかもしれないけど。
ネタバレ有り
何の知識もない状態で観に行った。「女性が復讐する話」程度の情報だけで、舞台がどこなのかも理解していなかった。
観賞後、急ぎ歴史について調べた。想像を絶するものだった。ネットで調べた程度なため、真偽は分からないが、知ってよかった。
本作の舞台であるタスマニア島に関しては、先住民は一切いなくなったそう。(あくまでも私が読んだネット記事の情報)
ジョージ・フロイドの件も合わさり、本作をどう観れば良いのか良く分からなくなった。
物語自体は割とシンプルに復讐ものだけど、キャラクターたちがシンプルではなく、本作の奥深さが増す役割を果たしている。簡単にはキャラクターたちを好きにはなれないのだ。主人公は悲惨な目に合うが、極度に黒人を嫌っており、同情しつつもやや距離を離される。その後の、寄り添って行くストーリー自体は、はっきり言ってありきたりだが、敵さんたちの関係がどんどん複雑になっていって、観てる側も簡単には観れない。どちらかと言うと、かれらの関係性の方が緊迫感があり、エンタメとしては楽しめる部分は存在する。
少年は白人を撃てと言われ、撃てなかったが、黒人には発砲した。「次は撃ちます」をただ実行しただけなのか、人種で左右したのか、それは分からない。しかし、彼も主人公と同じ悲惨な目に合いここにいる。主人公が同じ立場で、案内役の黒人に出あっていなければ、同じことをしたかもしれない。
登場人物の複雑さと、女性蔑視と黒人差別の二つのテーマ。正直、後から調べて知ったオーストラリアの黒人差別の悲惨さが、私の想像を遥かに超えるもので、吐きそうだった。本当にただのゲームだった。
狭い映像にクロースアップされる彼らの表情には、問題を突きつけられ目を逸らすなと言われているよう。
「人の考えはそう簡単には変わらない」と、とある人に教えられた。当時は良く分からなかった。人の考えは変わっていくものだろうと思っていた。「どうして講師の人はあんなことを言ったんだろう」と友人と話し合ったりもした。そして、ようやく今、その意味が分かった気がする。そんな、浅く小さな物事を言っていた訳ではなく、両親そして祖父母から教えられた"普通"に関してのことだったのかもしれない。
ひとが思うよりも深く根強い。
監督:ジェニファー・ケント
脚本:ジェニファー・ケント
出演:アイスリング・フランシオシ サム・フランクリン
バイカリ・ガナンバル
音楽:ジェド・ガーゼル
撮影:ラデック・ラドチュック
原題:The Nightingale
時間:136分
製作国:オーストラリア,カナダ,アメリカ