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『リトル・ジョー』感想

 ネタバレ有り

 第72回カンヌ国際映画祭のコンペの一つ。評判はケシシュのが断トツで低いのだが、本作もかなり評判が悪い。別に私も、高評価をするつもりはないが、なぜここまで低いのかまでは分からなかった。
 にしても昨年のカンヌコンペ作が、日本に上陸していないのは、あと三本程度。一昨年のコンペ作はまだ、全然日本に来ていないのに。
 昨年のコンペ作が比較的日本に来ているとはいえ、いまだ『Bacurau』が来ない。

 本作についてだが、雅楽を用いた特徴的な音楽に、寿司、招き猫と日本要素が多い。本作を飽きずに、観賞することが出来た理由の一つといっていい。人によっては、本作の音楽は非常に受け付けにくいものがあると思うが、私はかなり好みだった。気持ち悪く、不安を煽る。
 
 「どう観てよいのか」が、分かりにくい映画だったと思う。その一つがマスク。あんなサイズの大きいマスクを使用するものなのか。隙間だらけで着用するものなのか。狙ってやったのか狙ってやっていないのかが、分からないので、花粉による影響をどう受けとってよいかが困る。まさに、主人公が体験している状況と同じであると言えなくもないのだが、もやもやを抱え先が見えないまま進むのは、やや居心地が悪いもの。
 特にこれを低評価するという訳ではないが、高評価にも繋がらないというのが正直なところ。

 主人公の設定から、本作を読み解こうともしたが、新たな仮説が生まれるのみで回答には全く辿りつけなかった。主人公は夫と別居し、息子と二人暮らし。服は2セットか3セットをほどを着回し、家にはものが少ないことからミニマリストであると推定できる。食事はほとんどデリバリーで、息子との時間はあまり作れていない。そして、頻度は不明だが、カウンセリングにも通っている。この"カウンセリング"が本作を観る上で惑わせるポイントである。かなり重症なのか、既に花粉に犯されているのか、そもそも通っている理由はなんなんだ。いずれにせよ、問題がなければ通いはしないだろう。
 何らかの回答が見えぬまま進み、終わる。さまざまな情報を汲み取ることは出来ても、繋がっていかない。
 花についても、開発段階から関わっているのであれば、とうに花粉の影響を受けているという見方が必要だったのかもしれない。再度観る気はおきないので、それらは分からぬままですが。

 感じ方は人それぞれだが、本作はまさにその主張が強く、リトル・ジョーから受け取る批判的テーマは多様だろう。結局のところ、本作に対し大した興味がないので、薄いものになるがこれで終わる。もう少し、スリラー映画として面白く出来なかったのだろうか。


監督:ジェシカ・ハウスナー
脚本:ジェシカ・ハウスナー ジェラルディン・バヤール
出演:エミリー・ビーチャム ベン・ウィショー
撮影:マルティン・ゲシュラハト
原題:Little Joe
時間:105分
製作国:オーストリア,イギリス,ドイツ

 

 

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