編集部に届いた嬉しい手紙

 編集部に手紙が届きました。年に一度コンクールの説明会でお邪魔している美大の先生から。去年はコロナで行けなかったことを個人的に今でも残念に思っている大学です。

 手紙には、今年卒業する教え子の一人が私に卒業制作を見てほしいと願っている旨が書かれ、その学生からの手紙が同封されていました。2年前の春、私はコンクールの説明会で訪れ、自分の作品を言葉で伝える方法を「プレゼンの仕方」と「ステートメントの書き方」というタイトルで学生40人ほどを前に講義しました。そのとき自分の作品を一点選んでその意味を鑑賞者に伝わる400字程度の言葉で書いて写真とともに送るという課題を出したところ数名が提出してくれました。当時3年生の彼女はそのうちの一人でした。

 あの私の話以降、制作の意識が変わり、漠然と制作するのではなく自分が描くべきテーマやモチーフに正面から向き合ったといいます。そして特に卒業制作には半年をかけて大作に挑んだこと、また就職も決まって春から学校の先生として赴任するとありました。

 指定されたSNSを覗いて目に入ったのは、300号以上はあろうかという巨大な画面に見覚えのあるタッチの夥しい数の人の顔でした。課題として提出してくれた作品の面影はありながらも、それから大きく発展し、さらに一人よがりな表現から脱皮して広く社会に訴えられるだけのメッセージも読み取る事のできる立派な作品がそこに写っていました。

 思いがけない卒業メッセージが、まるで自分が先生になって卒業生を見送るかのような錯覚を、ほんのわずかにですが感じさせてくれたのでした。

2021年2月2日

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