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【美術・アート系のブックリスト】 五味文彦著『『一遍聖絵』の世界』吉川弘文館

中学高校では『一遍上人絵伝』と習った。国宝指定名称も「絹本著色一遍上人絵伝」となっているがいまでは一般に『一遍聖絵』と呼ばれているらしい。著者は日本の中世史研究者。同姓同名の有名写実画家とは別人。

内容は『一遍聖絵』を第1巻から淡々と解説していく。場面、背景、登場人物、場面、構図を一つ一つ正確に記述する。まるで細かな事実を積み上げることで全体を捉えようとするよう。美術的、宗教的な説明ではない。一遍が立ち寄った場所(奥州から九州まで)を史実と照らしながら時期を特定したり、遺された逸話と絵を結びつけて解説したり、客観的事実に徹している。

他の絵巻、特に祖師絵伝と呼ばれる「親鸞聖人絵」「法然上人絵伝」と比較しての特色がわかると良かった。また絵に込められた作者の意図ついても意識的に論じて欲しかった。歴史とは伝えたものの恣意や意図が必ず隠されているから。資料を読みつつ資料を疑うことも含んだ記述だともっと楽しめたかもしれない。

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