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【美術ブックリスト】齋正機『福島鉄道物語』
福島県をカバーする新聞『福島民報』で2018年11月からスタートした連載「福島鉄道物語」は、福島市出身の日本画家・齋正機による絵とエッセイ。
故郷の福島の風景とそこを走る鉄道の思い出が、柔らかくほのぼのした日本画とエッセーで楽しめる。東北線、奥羽線、只見線、常磐線、東北新幹線、福島交通飯坂線、阿武隈急行など福島県民に密着した路線と車両が登場し、福島県民だけでなく鉄道ファンにも嬉しい。
福島民報の刊行130周年を記念して、今年の4月から5月にかけて福島県文化センターとうほう・みんなの文化センターで、この連載を元にした「齋正機展 2022 福島今昔物語」が開催された。それを機に出版されたのが本書。初回から2021年12月の第37回までを収録している。
機関士だった父親のこと、自身の幼少期の思い出、浪人時代、美大生時代、震災後から現在までと、時間を前後しながら福島の鉄道のある風景の思い出が綴られる。
ここまでが概要。
ここからが感想。
齋正機さんは、月刊美術にもよく登場いただく日本画家。人気画家であり、素朴な人柄もあって、私を含む編集部員の全員がたびたび仕事でお世話になっている。
2013年6月号の特集「鉄道のある風景」は今でも語り草になるほどの、「鉄道絵画」のバイブル的な一冊になっている。
さて絵や文は人柄を表すというが、この人の作品ほどそれをよく伝えるものも珍しい。裏心がないのだ。目の前の風景や記憶の中の光景を、その場所への愛情や愛着そのままに描いているからだろう。かっこつけないし、計算しない、というか計算で描けない絵だと思う。
福島と鉄道と、ほのぼのした絵と言葉がシンクロして、なんだか車窓を見ながら昔を思いだす列車の旅の途中のような気分になった。
208ページ A5判 1800円 福島民報社