【美術・アート系ブックリスト】島田真琴著『アート・ロー入門』慶應義塾大学出版会
美術品に関わる法律の知識を大変わかりやすく説明しています。
アートにまつわる法律の話というと、近年は著作権にまつわる権利の侵害の問題が多く、その方面の本もいくつか出ています。しかしたいてい著者は法律の専門家ではあっても、アートについて特に詳しいわけではなく、一点限りの絵画、その場限りの展覧会や舞台といったアートの特性が法的解決にどう影響するかは触れられない場合があります。
本書は、実際の売買、盗難、詐取、画家と画商の契約、オークションの責任、美術館の活動、表現の自由、国際紛争と美術など、アートの現場での具体的な事例を挙げながら法的考え方を示していきます。
実際に起きた国内外の事例が豊富に載っていますので、これを読むだけでちょっとしたアート事件簿になります。
「メイプルソープ事件」「キャンディキャンディ事件」「ケロケロけろっぴ事件」「ジョイサウンド仮処分事件」「大英博物館、ナチス略奪品返還事件」「ろくでなし子事件」「表現の不自由展・その後事件」など、一通りわかる仕組みになっていて、巻末には事件だけの一覧表もあって大変有益です。
判例について読者に問いをだすクイズ形式の『ケーススタディ」も面白い試み。
業界の裏側を知るための非常に良いテキストとも言えます。アートに関わるすべての人におすすめします。