たまには一人で|エッセイ
久しぶりに孤独を味わいたくなった。最近では、家族と過ごす時間が増え、完全に1人きりになれる時はあまりなかった。
孤独はふと気付くと欠如している。
人間として生きていく上で、孤独になることは必要だと思う。
休日に自宅でゆったりする予定が、いつの間にか、山に向かってバイクを走らせていた。
季節は真冬。いくら着込んでも寒いのに変わりはなかった。そこまでスピードも出せなかった。ただ、風景を楽しむためには、都合が良かった。
日中とはいえ、まだ朝は早く、山道の路面は凍結しているように見えた。その脇をトンネルのように囲んでいる木々からは昨日降った雪が溶けて、冷たい水がぽたぽたと垂れ落ちてきた。
そうやって山と会話を出来る場所まで来たとき、ようやく孤独になれたような気がした。
払沢の滝付近の駐車場でバイクを降りた。周りには誰もいなかった。滝の音はまだ聞こえなかったが、ビョウビタキの鳴き声が聞こえた。ほんの一瞬だけそのオレンジ色をした美しい姿を発見することが出来たが、すぐにいなくなってしまった。
それから払沢の滝を目指し、遊歩道を歩き始めた。久しぶりに一人で歩くのは、たまらなく楽しかった。自分と自然以外には何もない。誰と会話をするわけでもなく、この先に待ち構えている滝がどのような姿をしているのかを想像した。
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