染物とデザイン
少しマニアックな話かもしれない。そもそものわたしのデザイン専門分野は商業的な印刷物のデザインである。
染物のデザインをする際、紙と同じ感覚でデザインしてしまうと、どうにも違和感が生じる。
それは何故かと、色々試してきた上で、大まかに理由を考えてみたところ、印刷物は平面的で、布は立体物と考えてデザインを起こす必要があるということだと思う。
先に断りを入れておくと、染色の分野も今は様々な方法があるので、ここでは当店の方法に限った話にしておきたい。
布を染めるということは、生地の裏側にまで色を通すということ、つまりは構成している繊維の中まで色を浸透させるということになる。
それにより何がどうなるかというと、布の種類にもよるが、薄地の布わずか厚さ0.3ミリ程の中でも、人の目はとても優秀にできていて、浸透した色を奥行きとして感じることができ、よく深みがあると表現するが、文字通りそのように感知ができるからだと思っている。
着物は写真で見るのと実物とは違うことがよくあると言える。それは布が色を含んだ奥行きまでは写真で写しとれない部分があるからだと思う。
また、職人による正確な手仕事の中に生まれるかすかな「ゆらぎ」というものが、味わいとして感じるのも人間の目だからだとも思う。
着物は纏ってみると、少し遠くからみてもそれなりにインパクトがある。なんとなくだが、自分が思う半分位、優しめにコーディネートすると丁度良い塩梅ではないかと思います。
写真は、黒の中に数種類の色を重ねて染めた夏着物・浴衣。