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<連載長編小説>黄金龍と星の伝説 ‐第三章/銅鏡の秘密‐ 第61話

対する力 -4

 この身近な結論づけによって、教師と親は、自分のことばと行動に、大いに、自覚と責任を求められることになりました。

 しかしそれが、自分流の教育方針をはぐくみ促進そくしんする精神的な基盤となり、
教育現場の空気を、おだやかでなごやかなものに換えてゆきました。

 こうして、親や教師が子の手本になろうと努力するすがたは、
子どもたちにとってのなにより安心できる踏み台となり、
子どもたちは、そこからながめる景色に、明るい未来を想像することができました。

 そして、夢と希望を描きながら活き活きと育ってゆく子どもたちのすがたを見ながら、
親や教師や身近に見つめる大人たちは、
たしかなよろこびとやすらかさのはぐくまれる場所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・のあることを、
自らのうち・・・・・に確認しました。

 このような考えが広まるとともに、川辺に張り巡らされていた柵はつぎつぎに取りのぞかれて、
川辺に隣接する山から切りだされた木材はあらたな住居や施設の材料となり、開墾かいこんの進む山には石垣が築かれ湧きだす水が引かれて棚田となり、
流れ込む川には水車が造られ川辺の一帯に水田を広げて……、
集落は、村へとすがたを整えてゆきました。

 また、ハンと親交の深かった研究者たちは、
動・植物体のもつエネルギーが人体におよぼす影響をしらべる実験を重ねうちに、
動・植物体のもつ生命エネルギーが、物理的エネルギーに移行するさいにこす現象に着目しました。

 そのさい生じるエネルギー量は、鉱物エネルギーを原料とする元来の〝マギラ〟の持つエネルギーにくらべれば微々たるものでしたが、
生じる物質は、人体がふれてもなんら障害をきたすものにはならず、
逆に、人体の機能に正常化をうながす作用が認められました。

 この成果を受けて開発された装置は、
植物体や動物体といった生命エネルギー体に、
太陽から発せられる熱や光や風や水や磁気などの流体的自然エネルギーを作用させて、
〝マギラ〟のもたらす、
人間の意識にからのごときかたい形態を形成しようとはたらく力を……ほとき、
――人間の意識に、自然本来の循環する流れをき起こして、
そのことによって、
人体に秘められた未知なる力をみちびきだそう。
……と、するものでした。

 こうして、〝マギラ〟とは対照的なエネルギーが発見される一方、ゼムラの勢力は留まるところを知らず、
ゼムラは、〈マギラマネー〉なる、
〝マギラ〟をかいして流通する貨幣をつくりだしました。

 この 〈マギラマネー〉は、
〝マギラ〟によって管理され、その流通の便利さから世界共通の通貨とされました。

 かつての城には〈スーパー〝マギラ〟〉なる巨大な装置が設置され、
城の広間は、マギラマネーの生みだす利益にむらがる人びとの賭博場とばくばと化しました。

 しかし――この通貨には実体がなく、
あらゆる商品に埋め込まれたマギラ信号・・・・・を読み取ることでやり取りされました。

 このシステムには、
世界中に生じるあらゆる出来事に点数をつけ、振り分ける仕組みが組み込まれていて、
それをひとつひとつの事象にあてはめ、通貨に反映させることで、
さだまりのない価格の変動をつくりだし、
変動を利用して利益をあげる投資家をうみだしました。

 また、この信号通貨には実体というものがなかったために、
流通領域を際限なく広げると、世界中の通貨の価値を暴落ぼうらくまたは高騰こうとうさせながら、貧富の問題など爪先でひねりつぶして、
領域の拡張拡大に拍車をかけてゆきました。

 しかしそれは……、人間の肉体に限界があるように、
通貨の限界をあらわしてゆくことになりました。

 また、ゼムラのめいにより、ルイの祖父のつくりだしたコントロール機構を改造して、
〝マギラ〟エネルギーを極限状態にまで増幅させる実験をかさねていた研究チームは、
……〝マギラ〟エネルギーの源に、
自然エネルギーの崩壊作用の生じることを発見しました。

 そして――ついに、
その崩壊エネルギーの生みだす終末的しゅうまつてき破壊力はかいりょくをもつ、
物理兵器としての〝マギラ〟を、誕生させたのでした。

 しかしそれは……、
自然エネルギーの一方だけを極端に増幅し、
どうじに衰退させる現象であったために、
自然界全体がバランスを欠き、
さまざまな異常気象や異常現象を引きおこす原因を作りだしました。

 それはまさに、

〝マギラ〟が、

人間界に影響をあたえるそのままのすがたでありました。

 こうして時はすぎ、サムが城へもどって十七年の月日がながれました。

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