非正規社員と正社員の差はなぜ埋まらないのか
コロナの感染拡大防止のため、営業自粛を迫られた、飲食店やサービス業。
飲食店やサービス業界は、非正規雇用が多く、コロナのしわ寄せが大きかったと言われています。
「コロナの感染が拡大した昨年から、飲食店の営業時間短縮などにより、多くのアルバイトやパートが休業した。大企業は支援金の対象ではないため、大手飲食チェーンなどの従業員が救済されず、問題になっている。非正規で働く人には、家計を支えるひとり親や、学費や生活費を稼ぐ学生もいる。不安定な生活基盤を支えることが重要である」。引用(2021.2.22読売社説)。
そこで、今回は非正規雇用をめぐる問題を取り上げます。
非正規雇用をめぐっては、政府が「同一労働同一賃金」を掲げてきましたが、実際に進んでいないのが現状です。
「問題となったのは、〈1〉大阪医科大(現大阪医科薬科大)の元アルバイト職員への賞与〈2〉東京メトロ子会社の「メトロコマース」元契約社員2人に対する退職金。原告側は、同じ仕事をしているのに、正規労働者と差があるのは不当だとして、差額分の支払いを求めた」。引用(2020.10.14読売朝刊)
非正規労働者が、正規労働者と待遇の差があるとして、裁判を起こした事例です。しかし、原告の訴えは認められず、非正規社員と正規社員との差は埋まらないままとなっています。
では、なぜ、正社員と非正社員との待遇の差がいまなお生まれるのか。
それは、日本の雇用システムが影響していると考えています。
「正規の労働者と非正規雇用の労働者との間で、賞与や退職金に格差を設けることの是非が争われた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷は13日、「正規労働者の方が、業務の難易度が高く人事異動もあり、格差は不合理とまではいえない」として、一部の支払いを命じた2審判決を変更し、原告側の請求を退けた」。引用(2020.10.14読売朝刊)。
日本型雇用システムのもとでは、労働者は会社という共同体の一部として、働くため、個人の仕事の幅を設定することは難しいのです。
欧米型のジョブ型を採用しない限り、「同一労働同一賃金」の実現は遠いかもしれません。
日本の伝統的な企業は、日本的経営を維持しています。日本的経営とは、終身雇用、新卒一括採用、全国転勤、集団で仕事に取り組む、経営態勢のことです。
この日本的経営をとる会社では、社員は、会社という共同体の一部として、働くため、一人ひとりの仕事が明確ではありません。
対照的な事例を挙げると、欧米のジョブ型です。ジョブ型は、明確に分けられた仕事を社員に割り振るため、社員一人ひとりの仕事の基準が分かりやすくなっています。
「賞与は、正規職員としての職務を遂行しうる人材を確保する目的で支給されるもので、正規職員に登用される制度があることも踏まえ、「賞与の格差が不合理とまではいえない」と判断した。また、メトロ子会社の元契約社員2人が求めていた退職金についても、契約社員が売店業務に専従し配置転換もないのに対し、正社員は、複数の売店を統括しトラブル処理などにも当たり、配置転換の可能性があることなどから、格差はやむを得ないと結論づけた」。引用(2020.10.14読売朝刊)。
このことから、裁判でも、労働の基準があいまいになっていることが分かります。
非正規雇用と正規雇用の格差をなくすためには、非正規雇用として雇わず、全員を正規雇用にしたらいいのではと思うかもしれませんが、日本の会社にそんな余裕はありません。
非正規社員と正規社員の待遇の差をなくすためには、どんな工夫が必要だと思いますか。欧米のジョブ型採用を取り入れるのか、それとも、日本の雇用システムを一から見直すのかなどさまざまな意見があります。
最後まで御覧いただき、ありがとうございました!
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