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読むTHINK_THINK#11(2012年2月10日)/ゲスト:青野賢一さん:BEAMSクリエイティブディレクター(当時)

今回の「読むTHINK」は,2012年2月10日に開催されたTHINK 第11回目,青野賢一さんをゲストにお迎えした時のトークをアーカイブからダイジェストでお届けします.

ーー定期購読マガジン THINK BOOK について
THINK BOOK は,読む "THINK" です.Suppose Design Office の谷尻誠が毎月魅力的なゲストを招き「"考える"ことを考える場所」として開催しているイベント"THINK"を読み物として再構成してまとめています. 多彩なゲストとの間で繰り広げられる本音のトークはここでしか聞けないヒントがたくさん詰まっています.過去100回以上に及ぶ記録資料などの掘り起こしを含め,月に2回程度,定期購読マガジンとして掲載します.ぜひ定期購読していただいて,皆さんの日常をTHINK するきっかけにしていただければ幸いです.(谷尻誠,西尾通哲:共同編集)

当時の告知資料より
THINK_11では、ビームスのクリエイティブディレクター青野賢一氏をお迎えします。ビームスは1976年の創立以来、日本のファッション文化をリードし続けてきました。現在、25以上のレーベル、100以上の店舗が全国のみならず海外にも展開されており、もはやファッションの枠を越え、カルチャーを発信するブランドとなっています。そのビームスにおいてファッションと音楽の両面でクリエイティブディレクターを務める青野氏。時代の先を見抜くその選択眼は、どのようにつくられたのでしょうか。また、DJや執筆活動など多岐にわたって活動される青野氏の思考の原点はどこにあるのか、伺ってみたいと思います。みなさまのご来場お待ちしております。

[INFORMATION]
日 時: 2012年2月10日(金) 19:00~21:00
会 場: 広島市中区舟入本町15-1 Suppose Design Office 3F
[開場 18:30~/開演 19:00~21:00 /アフターパーティ 21:00~]

[PROFILE]
セレクトショップ〈BEAMS〉のクリエイティブディレクターとして、
ファッション、音楽、アート、文学などを繋ぐ活動を行う。2010年には初の著作集『迷宮行き』(天然文庫/BCCKS)を発表。雑誌『OCEANS』、『ROCKS』、文芸誌『IN THE CITY』にてコラムを連載中。また山崎真央(gm projects)、鶴谷聡平(NEWPORT)との選曲ユニット「真っ青」としても活動し、「SPECTACLE in the Farm 2010」にも出演した。

ゲスト:青野賢一さん(以下,青野)
こんにちは.

ホスト:谷尻誠(以下,谷尻)
今日のゲストは,ビームスのクリエイティブ・ディレクター(当時)の青野賢一さんです.以前,対談でお話しさせていただいて.そのときに青野さんから,「谷尻くんが言っているのは『翻訳』という作業のことだよね」と言われて,すごく気に入って使わせてもらっているんですよ.その対談で,すごく青野さんの仕事のされ方が面白いと思って,すぐにTHINKに来てくださいとお願いしました.今日はよろしくお願いします.

https://openers.jp/design/21501

青野:
よろしくお願いします.たくさんお越しくださってありがとうございます.おそらく,谷尻さんが呼んでくるゲストはクリエイターが多いと思うのですが,あらかじめ少し断っておくと,自分は実際にモノを作る人間ではないので,作品の紹介をして議論をするという感じにはならないと思いますので,という逃げ口上を述べておいて(笑)始めたいと思います.


「YMOから芋づる式に興味の赴くままカルチャーを吸収」

青野:
私の略歴としては,実は大学生になるまでアルバイトをやったことがなくて.たまたまビームスのお店にアルバイト募集の張り紙があって,そのままお店に入って手ぶらで「アルバイトさせてください」という感じで飛び込んだのが最初です.後日,改めて面接をしてもらって,運よく働くことになりました.そのときに会社の経緯でインターナショナルギャラリーという売り場に配属されることになったんです.海外ブランドのセレクトをやっていた店舗で,当時,東京イチ入るのが嫌な店,と一部で噂されていました.幸い,それでも僕を訪ねてきてくれる友達が多くて,それだけ交友関係が広いならと,プレスの仕事に向いているということでそういう仕事を任されるようになりました.

2007年前後にビームスがメンバーシップカードを始めて,そのときの会員向けのウェブサイトのコンテンツに携わるようになって,企画や編集を携わるようになり,そのうち2010年にビームス創造研究所の創設メンバーになり,現職のクリエイティブ・ディレクターとして仕事をしていますね.

また,小学生の頃にYMOに衝撃を受けて,その後もバンドをやったりして,音楽が好きで,まだDJと呼ばれる人が少なかった頃から,DJの活動を始めました.そのうち,文章とかも友達の編集者から頼まれるまま書いたりしているうちに,今のような何とも形容し難いさまざまなジャンルを横断して仕事をするような感じになりました.

ビームス創造研究所では,外部の企業やクリエイターと何か企画していくというのが主で,決まったルーチンがあるわけではないんですよ.他の企業とのコラボレーションとかに関わっているという感じですね.本当に仕事の範囲という輪郭がはっきりしないんです.「雑用全般が仕事」だと人には言ってますね.

谷尻:
そういう仕事って,親から「何やっているの?」とか言われませんか?

青野:
それはなかったですね.母親もファッションの仕事をしていたし,とてもリベラルな家庭でしたね.

谷尻:
でもなかなか一般の人にはわかりにくい仕事ですよね.

青野:
そうですね.ビームス創造研究所というのは社長直轄の部署なんですよ.ビームスのお店が増えていくにつれて,モノとしての洋服だけでなく,ソフトの力を見直すというか.それまで自分がやってきたことをビームスのビジネスと絡めてアウトプットしていくということですよね.

谷尻:
なるほど.

--
青野さんが,スライドで子供の頃から影響を受けたさまざまなジャンルの人や物事を挙げていく.YMO,澁澤龍彦,ジャン・コクトー,稲垣足穂,etc
--

青野:
割と子供の頃からちょっとグロテスクだけど美しい,アンビバレントなものに惹かれて,80年代を10代で経験したということが割と自分のコアになっていて,YMOも好きだけどアイドルも好き,みたいな,ジャンルわけできない,かつフラットであるという視点を持てたのは大きいのかなと思います.

谷尻:
小学校6年生でYMOが好きってすごいですね.

青野:
でも,僕らの世代はみんなそうでしたよ.あと当然ファッションが好きだったので,YMOはファッションもかっこいいし,音楽もそれまで聴いたことないモノだったし,自分の好きなことが全て入っていた.でも確かにマセていたのかもしれないですけどね.

谷尻:
そうだ思いますよ,僕が小6の頃はいかに半袖半ズボンで過ごせるかということにチャレンジしてた頃ですね(笑)あまり友達とは話が合わなかったとかないですか?

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