「魚の痛覚」を読んで情緒がぐちゃぐちゃになった北村倫理オタクのうわ言
⚠️このnoteには『アニメディア2022年11月号』「バケツ通信」の内容、『ワールドエンドヒーローズ』メインストーリーのネタバレを含みます!
また、ここに書いてあるものは全て一般オタクのいち解釈に基づくうわ言です。
【追記】タイトルの日本語を間違えるという大ポカをやらかしたので修正しました
1.はじめに
助けてください(助けてください)
予告時点では「成程成程、北村倫理のバケ通における第三者枠はモブ警官さんなのだな」とモブ視点からの推しを観測できることに喜びを感じつつアニメディア発売当日を待っていたのですが……
『今月のショートストーリーは、北村倫理の物語』ってそういう意味ですか深澤先生!!!
流石北村、いつも君は私の予想と好み120%のものを用意してくる——と、文園の情緒と感情はぐちゃぐちゃになってしまいました。南無三。
とりあえずキャラ紹介のポエムの意味がわかったこと、そして倫理くんの内面を構成する一端に触れることができたのはとても大きな収穫です。
文園は北村倫理のことを掘れば掘るほど自分の好みドストライクの設定と燃料が出てくる無限炭鉱だと思っているので、今回も大きな石炭に巡り合うことができて嬉しい限りでした。
……と、以下このnoteではこんな感じのオタクの長文がメチャクチャ続きます。
本当に北村倫理に関しては考えれば考えるほど新たな呻きが出てくる為一つのnoteには書ききれないのですが、一旦ここでは「魚の痛覚」を読んでオタクが気付いたこと、腑に落ちたこと、ふにゃぐちょになった感情をなんとか他人が読める文章に直したものを書き連ねていきます。お暇な方は付き合って頂けると嬉しいです。
2.キャラ紹介のポエムの謎
が解けましたね!!
絶望した骸骨は、飛び降りました。
哀れんだ神様は、
落下する骸骨を雲で救いました。
骸骨は、その柔らかさに涙して……
もう一度飛び降り、
無事、死にましたとさ。
「あの日、ボクもお父さんが落ちるところを見たんだ」
少年は淡々と話を続ける。
「屋上から落ちて周囲に悲鳴があがった。でも落ちた直後、お父さんは建物の段差に引っかかって助かったんだ。それで悲鳴が歓声に変わりかけたころ、お父さんはもう一度ちゃんと落ちたんだ」
僕は相槌も打てずに、その光景を想像した。
「弔いにきたわけじゃないよ。ここで、奇跡を意思で覆したお父さんの気持ちをずっと考えてるんだ」
そう言って真っ直ぐ地平を臨む少年は、少しだけ口元に笑みを浮かべていた。
後になってから思い返すとサイドストーリーの中で倫理くん自身が「お父さんはあの後、年末に離婚して、骸骨みたいに痩せて、来年には本を書きあげて……それで、ビルから飛び降りる。そしてボクはその光景を、目に焼き付ける」【北村・サイドストーリー北村3話「呪いの持ち込み禁止」】と連理さんを骸骨に喩えている、というヒントこそありましたが、文園はこの鈍痛で答え合わせされるまで普通にわかんなかったです。(まぁこの話は『北村倫理の物語』なので事実と異なることを言っている可能性もありますが、一旦その考えは置いておいて「倫理くんはイマジナリーフレンドとの会話でも事実を話している」と仮定して話を進めてみます)
落ちる、くもで救う、というキーワードと音だけ見るとどうしても芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を連想してしまうので、きっと多くの方は無意識のうちに同作の犍陀多と倫理くんの言う「骸骨」を重ねてしまうと思うんです。文園もそうでしたし。
なので、一見するとまさか骸骨の流す涙が救われた嬉しさからくる涙ではないとは思わないんですよね。ここら辺の思考誘導が上手いな、と感心するばかりです。
バケ通を踏まえて考えてみると、恐らくこの骸骨(≒連理さん)は自身が助かりかけているという状況に対して悔し涙、若しくは悲し涙を流しているのかなあと思いました。
3.連理さんの運命
では何故、連理さんは一度助かりかけたのでしょうか。何故それを覆すことができたのでしょうか。
これに関しては、文園がメインストーリー読了記念に書き連ねたnoteの中でそのものずばりな問題提起をしていたのでちょっと該当箇所を引っ張ってきます。
“連理さんが志藤の家を出たのは「「運命」にあらがうために、新しい人生と、新しい神さまを必要とした」【北村・第3章61話「知っていること」】とのことですが、ver2以降の世界ならまだしも血性の存在しないver1.0の世界でその発想に至っているのかどうか気になります。
血性システムの有無なんて関係なく、彼は自分の手で運命を切り拓いていこうとしていたのでしょうか。
そしてverに拘らず、連理さんが変えたかった運命って一体なんだったのでしょうか。
これは血性に関しての考察なのですが、倫理くんが従兄である正義くんと同じぐらいの血性を持っていたり、星乃家の婚外子である武居さんが実は志藤家の正義くんよりも血性の値が高かったりと、割と血性値って遺伝に依るところが大きいかと思うんです。そして連理さんも志藤家の人間だったということで、血性値はそれなりにあると思われるんですよね。
そんな連理さんが運命を変えようと行動を起こしたとしたら、血性という概念が存在するver2以降の世界において彼は大なり小なり何かしらの運命を実際に変えている可能性があると考えられます。
じゃあ、その『変えられた運命』って一体なんなんでしょう?
運命を変えた結果、連理さんの最期があのようなものになったのでしょうか?
連理さんは自分の力で運命を変え、自分が納得できるような形で人生を終わらせようとの思いであのように身投げしたのでしょうか?
五カ月前の俺~~~~!! 多分後半大体合ってるぞ~~~~!!
失礼、取り乱しました。ぶっちゃけ今回筆を取った理由のうち七割ぐらいはこの感動を誰かと共有したかったからです。五ヶ月前の自分にピタリ賞をあげたい。
前項で倫理くんが奇跡と称しているのは、きっとワールド・コードに示された「連理さんはここで死なない」という運命に沿った出来事なのでしょう。
それを血性によって意思で覆し、倫理くん曰く「ちゃんと死んだ」。
連理さんが変えたかった運命は恐らく「自分は死なない」というものだったのです。
そうまでして自死を望んだ連理さんの心中を全て窺うことはできませんが、文園の予想としては星乃の掲げるマクロな思想、大多数の善なる人々を引っ張っていくという理想主義的な面に耐えられなかったのかもしれないなあという感じです。
連理さんももしかしたら倫理くんと同じように、マジョリティに踏み潰されるマイノリティの現実をその目で実際に直視して、何か思うところがあったのかもしれません。
そのような中、星乃一族の一員として、死ぬことも許されずきらきらとした世界に身を置いていき続ける……という運命に絶望したのかもしれませんね。
また、上記のnoteではこの後「連理さんは自死することで間接的に倫理くんの運命にも影響を及ぼしていたのではないか」という説を唱えていたのですが、この説も今回のバケ通を踏まえると当たらずとも遠からずなのではないかと思えてきました。
連理さんが一度は飛び降りに失敗しつつも最終的には見事に自死を完遂した、ということは、倫理くんの目の前で「運命は自分の手で切り拓くことができる」という証明が為されたこととほぼ同義である可能性があります。
と、なんでこんなふにゃふにゃした言い方なのかというと、実際に自分の運命がどうなっているのか、なんてことはワールド・コードを見ない限り誰も絶対的な証明が出来ないからです。よってこれらも全てオタクのいち仮説です。異論反論ばっちこい、むしろ聞かせてください、語り合いたい!!
……何はともあれ、この「連理さんが目の前で最後まで飛び降りをやってのけた」という事実は、幼少期の倫理くんに勇気を与えたというか……暗澹としていた倫理くんの地獄のなかに一つの路を示したのではないかと思います。
でもなんだか勇気って言うときらきらしすぎですね。北村倫理を表現するときにこんな言葉は似合わない(めんどくさいオタク)
4.倫理くんの運命
ひとまず事実として、こうして血性の存在するver2以降の世界では連理さんは運命に逆らって身投げし、倫理くんは高一になった今でも五体満足でぴんぴんしながらドブさらいとヒーロー業を続けています。
ならver1では? ということを示すにあたって、もう一度文園の感想noteからの引用をお読みください。
ver2以降の世界で倫理くんが血性の力を使って本当に「自死のまとわりつく自分の運命ごと、自分の力で変え」た【北村・サイドストーリー4話「神さまは役に立たない」】とすると、逆説的にver1.0世界の血性を持たない倫理くんは自死のまとわりつく運命を受け入れざるを得なかったということになってしまう気がするんですよね。
メインストーリ―で出てきたver1.0世界の一枚絵の中に、どこかの屋上の端に置かれた持ち主のわからない革靴のイラストがありました。他のイラストには、倫理くんらしき人影の姿はありません。
明言されていないので憶測にしかならないのですが……これはつまりそういうことなのでは……? とこの引用箇所のように仮定してみると。そして先述の「連理さんの自死が倫理くんに影響を与えた説」と合わせてみると。
血性の存在しないver1世界では倫理くんがこの世を去り、連理さんは運命に逆らえず生き続け。
血性の存在するver2以降の世界では連理さんがこの世を去った代わりに、倫理くん自身が自死の運命に逆らって生き続けている、そういうことなのかもしれませんね。
5.士心路在の謎
文園が上記のnoteでも喚いていた連理さんのペンネームの由来は何なのか問題。「魚の痛覚」で正式にペンネームの読み仮名が《ししん・ろある》であると公開されたおかげでひとつの説を思いつきました。
ア゛!! 士心路在、それぞれ
— 文園(指揮官のすがた) (@23zonozono_whr) October 7, 2022
「士心」→志藤の「志」を分解、
「路在(ろある)」→れんり、を五十音順に一文字ずつ下にずらして「れ→ろ」「ん→あ」「り→る」では?!?!?!?!
勿論公式で明言されてはいないので、あくまで一つの説に過ぎません。他の説を思いついている方には是非お話を伺いたいです。(あと深夜なのでツイートのテンションがおかしくてすみません……このnoteでは比較的固めの文体なのでなんか笑えますね)
6.底辺から愛を
「心配することはないよ。魚には痛覚がないんだ。だから解剖しても大丈夫」
僕がそう言うと、少年は顔をしかめる。
「魚に痛覚がない? そんなわけないだろ」
——痛まない生物なんていないよ。心がない人間がいないのと同じでさ。
ここ……好きです……(語彙の喪失)
倫理くんが対話相手として設定した伊祖南稲人さんは、恐らく世間一般において「優しいひと」と称される人種なのでしょう。独りで屋上にいる子供を放っておけなくて、勤務中なのにも拘らず子供のメンタルケアをしようと話しかけにいってしまう。
そんな、仕事よりも自分の正義感を優先してしまう人間だからこそ、中央から羽澄市に左遷されたのかもしれませんね。
伊祖南さんは、「優しいひと」が言ってくれそうな言葉を沢山倫理くんに投げかけます。倫理くんはそれに対し返答をするものの、どこか二人の間には決定的な価値観のズレがあるようで、会話はがたがたしつつもなんとか先に進みます。
そして極めつけが上記の引用部分。伊祖南さんは倫理くんという人間にこそ寄り添う姿勢を見せますが、フナに対しては突き放すようにこう言いました。
この伊祖南さんに対する倫理くんの答えが、彼が「ヒーロー」として在るための原動力なんでしょうね。
「優しいひと」ですら目を向けない、路傍の石に圧し潰された雑草をも救いたい。その為には、彼らのことを見つけられるように自ら底辺に身を置いていくことが必要だ。
……というのが、北村倫理のヒーロー理論なのかもしれません。
7.余談
倫理くんがお安いサスペンスドラマや推理系のもの(江戸川乱歩の座右の銘やホームズの「消去法推理」を知ってるくらいだし、推理小説系も読んでそう)を好きな理由って、もしかしたら犯人側に感情移入して読むのが好きだからかもしれませんね。
まあ推理小説の犯人が全て悲惨な境遇である訳ではありませんが、例えばコナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズの一作目『緋色の研究』では後半の三分の一ほどのページ数を割いて、犯人が凶行に至るまでの過程を書き出しています。
追い詰められて追い詰められて、殺人やその他の犯罪に走るしかなかった哀れな犯人たちに思いを馳せているのかもしれません。
あとこれは単純なここ好きポイントなのですが……
倫理くんは坂本先生に「犬猫を殺すのはやめろよ、警察沙汰になるからな」というように叱られた後、即座に警察である伊祖南さんと猫の死体という二つの要素を結び付けて、新しく物語を作ろうとしてるんですよ。
こういう風に転んでもただでは起きないというか、配られたカードを余さず自分のモノにしていく強かさというか……今までの人生においてそうしなければ精神と身が持たなかったのかもしれませんが、こういった図太さ、芯のぶれなさが本当に好きです。(そして創作者としても尊敬します)
8.まとめ
さて。語尾の「かもしれません」の数が増えていよいよ妄想が多くなってきたので、とりあえず今回はここらで締めさせていただこうと思います。
北村倫理のことを深く知ることができつつ、もっと奥底にある深淵を知りたくなりつつと、この鈍痛でまた一層北村倫理を好きになることができました。
ま、要するに——ありがとうございました、無事致命傷です!!
〈了〉