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それでも太陽は赤く染まる!14「よみがえる乱情!」

つかの間の気分転換で外を自転車で走らせていたひとし。

だが、だいぶ心も浄化されて落ち着きを取り戻して無事に家に帰宅したひとしを待ち受けていたものは・・・。

日がすっかり暮れた住宅の団地へ到着したひとしは自転車を止め、いそいで得意の2段飛ばしで自室の501号室へと階段を駆け上って行く。

ひとし
「父さんたち、もう帰ってきてるかもしれない!」

ひとしは鍵の入ったズボンのポケットへ手をいれて、頭に父と姉の事を思い浮かべながら到着した自室でドアのカギを開けるとおそるおそるゆっくりとドアを引いた。

足元の暗闇の靴置き場を見ると床屋の父(邦久、52)のスニーカー靴だけ見つかって、まだ姉(美穂、19)の方の靴はなく帰ってきていないようだ。

そして、奥の台所のドアの向こうからはテレビの音声と電気の明かりにまじって何やら、父(邦久)と母(絹代)の激しく言い合っている声が聞こえてきた。

怒っているのはどうやら絹代で邦久は慣れたように話しを交わすように聞いている感じがする。

ひとし
「母さん、まだ機嫌なおってないのかな!」

台所のドアの前で少し様子をうかがおうと、心臓がバクバクとしていたひとしだったが、だいぶ長い時間外で身体が冷えていたせいもありトイレが近かったので思い切って入っていった。

ドアの音で一斉にふりむく2人。

その瞬間、一気に待っていたとゆうばかりにいかりの矛先がひとしに向けられて。

絹代
「噂しとったらようやく帰ってきよったわ。どくずが!(#⊳Д⊲)」

家を飛び出したときと同じように不機嫌な顔の絹代、どうやら男口調のヒステリーモード全開のようだ。

邦久
「遅かったな。また金魚屋でも観に行っとったんか!(^_^)」

ソファで腰掛けてつまみを口でもぐもぐさせている邦久は絹代とは正反対に大らかなしぐさをしてひとしを見つめる。眼鏡が蛍光灯のあかりで反射して眼差しははっきりとは見えないが、どことなく他人事のように感じる穏やかな声のトーンが逆にひとしの心を落ち着かせる不思議な安心感があった。

だが、ひとしの返事もまたずに割り込んで絹代がわめき立てる。

そこをすかさず絹代の目を盗んで隣りのトイレにすばやく飛び込んだひとし。

絹代
「ドアホが!トイレちびりそうになるまでどこほつき歩いとるんやて、おまえは。昼ご飯も食わんとそろばん行って、頭まわると思っとるんか!ただでさえ、たわけやのに!(# ゚Д゚)」

ひとしは溜まった尿をぎりぎりセーフに勢いよく、シャーアアアアッと音を立てながら・・・。も、言いたい放題の絹代に、息を整えながら負け時と言い返す。

ひとし
「ご飯なんか何もなかったじゃないか!自分が、くだらんテレビばっかり見てずっとくつろいどって。( ゚Д゚#)」

そう言って、うっかり手を洗う事も忘れて再び絹代の前に顔を出したひとし。戦闘態勢ばっちしです。

絹代
「カップ麺でも沸かして食べてきゃいいやろうが!中2にもなって、それひとつ出来んのやで!ど情けない。親を当てにするな!本当に生きとる価値なんてないんやで、おまえなんか!(# ゚Д゚)」

そこへ湯呑のお茶に、つまみを食べながら冷やかしなのか、助け舟を出したのかわからないけど邦久が2人の間に割り込んできた。

絹代に向かって・・・。

邦久
「おまえも一緒やがん、生きとる価値ないのは。一日中、部屋の掃除もやらんとテレビ見とるか、花に水やってぼーっとしとるかで。めし食って、日が暮れて、寝るだけで。ったく、恥ずかしくって人に言えるか!( ̄д ̄)」

絹代、その言葉に逆上するように怒りが邦久に向かい・・・。

絹代
「うるさい、たわけ!(# ゚Д゚)母さんの事はいいんだわ!こいつはこれからの世の中、ひとりで渡ってかないかんのやで。ニュースでも言っとるやろ!今は男でも、料理つくるのは当たり前なんやで、女の子もよって来ないんやと・・・。どぐずな奴の所には!」

その言葉に再び、一瞬ひとしの頭の中であさの始業式のときでさやかと楽しそうに一緒にいた男子生徒の顔がフレッシュバックする。

邦久の説得もあまり効果がなく、ひとしが「はあ~。(-_-)」とその場で無意識にため息をもらすがそんな事はおかまいなしに絹代はずかずかとせめこんでくる。

絹代
「本当にお金も持たんと、よくこんな時間までうろうろしとるわ!手提げだけ持って財布忘れてきよって!(# ゚Д゚)不良にからまれてもぼこぼこにされるだけやぞ。手ぶらでうろついとると!」

ひとし、気力がなくなって時計の針をチラ見するとすでに8時をまわっていた・・・。「(心の声)(お小遣い用の財布ならいつもズボンのポケットに入ってるよ。母さんが人使い荒いからね・・・。)!(-_-)」

邦久
「そういや、栄の方から自転車で来たな、おまえ。父さん帰って来るだいぶ前に立ち漕ぎしとるとこ会社の窓から見た気がしたで。気をつけないかんぞ。あっちは名古屋の中心やで、いろんな人間がおるで・・・。\(◎o◎)/!下手したら刺されるぞ!」

「お父さん。Σ(゚Д゚)」ひとしは心の中でどきっとして叫びそうになったが、邦久の言葉を絹代は見逃さなかった。

絹代、がなりちらすような大声で・・・。

絹代
「なんや!おまえ行っとらんのか!?今日そろばんに~!(# ゚Д゚)」

ひとし、もうやけになって・・・。

ひとし
「行ったわちゃんと!母さんがエノキ買って来いってうるさいから、ちゃんと小遣いまで出してスーパーによってからΣ(゚Д゚#)」

絹代
「うそつくなっ!電話するぞ、塾の先生に!(# ゚Д゚)」

ひとし
「行ったって、ゆっとるやろおおお~~~!( ゚Д゚#)」

ひとしは動揺を隠すように、持っていた手提げ袋に手を突っ込むと買ったエノキの袋をふたつ見せつけるようにバシッと床に向かって投げつけた。

だが、絹代のいかりが消えるどころかさらに悪化してしまって・・・。

絹代
「はああ~~~。馬鹿、違うやろこれは~、ちゃんとチラシにのっとるやつやて!2袋で98円の。こんなの、どのすぐ量が少ないから高いやつやろ!パートの人に聞いたのかおまえは、ちゃんと!(# ゚Д゚)」

ひとし、その態度にもう完全にブチ切れて・・・。

ひとし
「知らんわそんな事~~~!エノキふたつ買ってこいっていったから買っただけだわ!お金も少ないのに・・・。わざわざ、仏心(ほとけごころ)おこして!( ゚Д゚#)」

絹代
「何が、ほとけごころだあああああ~~~~~~。!よりにもよってこんな賞味期限間近な、くたくたに痛んだやつ買ってきて!ポン酢でもつけて食べてけよおまえが全部責任もって!(# ゚Д゚)」

絹代はエノキの袋をつかんでひとしの胸にバシッと投げつけると小走りでガスコンロからいそいで持ってきた冷めた豆腐の入った小鍋をガンとテーブルの上に叩き置いた。

絹代
「おまえの今日の夕飯はこれで終わりやで!ぬる風呂に入ってさっさと寝ろ!(# ゚Д゚)」

どうやら、ひとしが早く帰ってこなくてエノキが入れれずに待ちくたびれて湯豆腐にしていたようだ。冷めたさびしい、湯の中に沈んだ白い豆腐はひとしにあまりたいした食欲を注がせなかった。

そこへ、「ハハハハハ・・・。」といきなり傍観していた邦久が笑いだした。

邦久
「元気がいいなおまえは本当!一日中家におるでエネルギー余っとるんやろ・・・。ひとしといっしょに住宅一周、走ってこい。馬鹿な親子で!うるさくてテレビの声も聞こえへんし、父さんおまえらおるとちっとも仕事の疲れが休まらんで。外で一晩中わめいとれ!\(^o^)/。」

絹代、邦久をキッとにらみつけて・・・。

絹代
「何言っとるんや!なんでさっきお風呂入ったばっかりやのにそんな汗かくことして恥さらさないかんのや・・・。たわけたことしゃべっとんなよ、のんきに!明日も仕事なら早く寝ろおまえも!いつのまに、どんだけ飲んどるんやビールを!二日酔いしたって行かせるでな仕事に・・・。(# ゚Д゚)」

顔が真っ赤に出来上がった、邦久の腰掛けていたソファーの足元にはいつのまにかビールの空き缶が5つも転がっていた。

そんな邦久を眺め、時計の針がいつのまにか8時半を回り、ひとしはだいぶ疲れたのかもう何も言い返さず湯豆腐を見つめると手もつけず、そのまま自分の部屋に向かっていった。

そんなひとしの背中を、甲高い罵声で追うように・・・。

絹代
「何もう寝ようとしとるんや~おまえは~!食べてけって言っとるやろ~豆腐を~。片づかんに!汗くさい身体で風呂も入らんつもりか汚ったない!夜中に風呂なんか、沸かすなよ、もったいないで!(# ゚Д゚)」

さすがに一日中家で専業主婦している絹代は元気なようです。

ひとしは自室に入ると暗闇で、父とお揃いの縞柄のパジャマに着替えてすぐに横になった。

金魚の泡ぶくのモーター音を目を閉じてまぶたの裏で聞きながらいつもと変わらない台所から聞こえるテレビの音声の響きと酔った邦久の心地よさそうな寝息を耳に受けながら、やはり少し疲れていたせいかすぐに意識がゆっくりと遠ざかっていった。(-_-)zzz

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