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戦争を知らない子供たち〜今日は終戦記念日

 若い人たちは信じられないかもしれないけれど、昔はバスで遠足に行くとき、車中でみんなで歌を歌いました。そのためにオリジナルで歌集を作ったりもしました。今みたいにパソコンなんて無いからガリ版でわら半紙に刷りました。なんのことかわからない方はお父さんお母さんか、おじいちゃんおばあちゃんに聞いてください(今日はガリ版のことが書きたいわけではないので簡単に済ませます)。

 歌う歌は、当時流行っていた歌。当然です、楽しくなくちゃ。曲目はフォークソングや歌謡曲、スカウトソング、テレビの主題歌などなど。カラオケなんて便利なものはまだ無くて、たいていはアカペラで合唱しました。曲によってはハモったり輪唱したり、ビデオやらゲームやらまだなにも無かった当時の子供たちは歌うだけで結構楽しめたのです。そしてその曲目の中にいつも「戦争を知らない子供たち」はありました。1970年に発表されたジローズのあまりにも有名な曲です。

 戦争が終わって 僕等は生まれた
 戦争を知らずに 僕等は育った
 おとなになって歩きはじめる
 平和の歌をくちずさみながら

という歌詞から始まるこの歌を、私はバスの中で何度も歌った記憶があります。今でもふと口ずさんでいたりして。同じような記憶があるという方は、おそらく50〜60代の方でしょうか。

 当時は私はあまり深い意味など感じずに歌っていました。覚えやすい歌詞に歌いやすいメロディー、毎年のように歌う定番のフォークソングでした。他の生徒たちはどうだったんだろう。この歌について特に何か語り合うようなことはなかったのでよくわかりません。

 じゅうぶんすぎるほど歳を重ねた今、この曲はほんとうに素晴らしいと感じています。声高に反戦を唱えているわけでもなく、かといって平和な今を手放しで讃えているわけでもない。今の平和な世界を守り続けるために、非力な自分たちだけれどできることをして行こうよという決意みたいなものが感じられて、それが心に響きます。平和を語るのは難しいことではなくて、この曲の歌詞にあるように

 青空が好きで 花びらが好きで
 いつでも笑顔の すてきな人なら
 誰でも一緒に 歩いてゆこうよ
 きれいな夕陽が かがやく小道を

という、ほんとうにシンプルでわかりやすいことだと思うのです。ただ、これを守るのが実は難しくて、国と国とののバランスが崩れればあっという間にこんなものは消え失せてしまう。 

 いま私たちが保っている平和は、とても脆い気がします。増え続ける核兵器。唯一の被爆国であるわが国でも核兵器保持を唱える人がいる。平和を維持するためにどんどん拡充される武装。過去に米国と戦ったことを知らない若者。そして、戦争や平和について語るのを避ける風潮。過去の大戦から75年経っても、またすぐに引き返してしまいそうな危うさがあります。あの戦争はほんとうに終わったのでしょうか。

 ふと、私たちの世代の大人がサボってきたせいではないかと思うことがあります。生まれたときには戦争はもう遠くにあって、子供の頃から物に不自由しなくなっていて、バブルまで経験して浮かれちゃって、平和とか戦争とかとっても大切なことを考えるのを忘れてしまったのではないか。子供のころに「戦争を知らない子供たち」をあれだけ歌ってきたのに。ほんとうはあの戦争の後、私たちが真剣に考えて、そして次の世代に伝えていかなくてはならなかったのに。

 東京大空襲を経験している私の母は、思い出したくもないだろうにその悲惨な光景を、子供のころの私に何度も語ってくれました。母はもうこの世にいないのですが、今度は私が次の世代に伝えていく番なのでしょう。そしてそれがまた次の世代に伝わり、力強い流れになっていくのだろうと思います。残念なことに、私は息子に伝えてこなかったなあ。反省。息子は大人になっちゃったけれど、今からでも遅くないかな。

 戦争を知らないけれど自分にもできること。それは、先人たちの体験や思いを少しでも次の世代に伝えることではないでしょうかね。終戦記念日に、ふとそんなことを思いました(書いているうちに日付が変わってしまいました…)。



 


 


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