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【随想】人を評価するとは/人事考課

 学生には試験があるが、社会人には試験がないから楽とか言っているあんぽんたんの学生がいるようです。
 学生は一年に前期後期の二回、中学、高校生では一学期二回、二学期二回、三学期一回の定期試験があるだけですよね。社会人は毎日が試験なのですよ。しかも、試験問題は周囲の人から準備の余裕なく出題されるのです。
 会社勤めに話を限れば、評価された結果は賞与、昇給、昇格に直結です。昇格試験に受かれば管理職に進めるというものではありません。外資となれば、年俸制ですから、試験の成績が悪い(評価悪い)と次の年の席はもうありません。”You’re fired.”と露骨に言われることはありませんけれども、結果は同じです。
 では、勤め人を評価する(人事考課)とは、いかなるものか紹介しておきましょう。かつては以下のようなものでした。
 (一部を抜粋。基本的に表に記入する方式で<表1><表2><表3>の三部構成。職務によって評価項目は異なる。現代では異なる所が多いかもしれない。)

「人事考課表<表1>」(管理職による部下の評価)
 
(1)業績考課
  ①職務成果
   上司/会社の年度目標に関してどの程度期待に応えたか、成果をあげたか。仕事の結果は正確であったか。信頼できるものであったか。[重み点3]
  ②能力の発揮度・努力度
   業務遂行の過程において意識して努力をし、能力を十分に発揮したか。[重み点3]

 (2)情意考課
  ①気力・協調性
   業務の円滑なる推進のために上司、同僚、他の部門と綿密に連絡し合い、業務達成のために協力しあったか。自分の関係者(部署)と協調に尽力したか。[重み点1]
  ②積極性
   業務の改善を積極的に起案実行したか。自分の業務のレベル向上を積極的に行なったか。自分の知識・技術・技能を積極的に向上させる努力を行なったか。[重み点1]
  ③責任性
   担当業務に関する責任感はどうであったか。責任をもって完遂したか。[重み点1]
  ④規律・勤務態度
   会社の規則・規律を守り、秩序を乱すことはなかったか。真面目に陰日向なく働いたか。他人の模範となる勤務態度であったか。[重み点1]

 (3)能力考課
  ①業務知識
   業務上必要となる基本知識・専門知識を有しているか。また、常に向上努力をして、その成果が上がっているか。[重み点2]
  ②技術・技能/事務処理能力
   業務上期待される専門的な技術・技能、及び事務処理能力を有しているか。また、常に向上努力をして、その成果が上がっているか。[重み点3]
  ③判断力
   状況を正しく判断し、または、上司の指示を的確に把握し、適切な対処ができるか。[重み点2]
  ④企画力
   業務についての新しい提案、改善についての創意工夫など、創造的企画力に優れているか。[重み点2]
  ⑤渉外力
   社内外の相手と業務に関する事案を必要な方向に影響付けていく説得力・交渉力があるか。[重み点1]
  ⑥管理力
   担当業務の遂行のために計画的に業務をは配分し、最後にまとめる管理力があるか。[重み点1]
 (註1)評点は10点法、評価幅は次の通り
    S :15-11 A :10-9 B :8-7(標準点) C :6-5 D :4-1
    S(15-11)、D(4-1)を付した場合には蔑視に理由を記入
 (註2)重要な順に重みで3、2、1の3段階を表わす

「人事考課表<表2>」(管理職による部下の評価)
 
(1)表1考課につき、あるいは考課以外のことで付記しておくこと
 (2)部下本人の長所・短所から見て、現在の職務が妥当か、また、今後どのような点に力を入れて指導すべきかを考察すること
 (3)評点「S」または「D」を付した場合の理由、その他

「人事考課表<表3>」(社員本人の自己評価)
 
一年間の自己の業務目標を五項目挙げ、各項目重みを付すこと。
 半年後、上司と相談の上、自己で中間評価をし、一年後、同様に上司と相談の上、自己で最終評価を決定すること
 (註)評点は10点法、評価幅は次の通り
    S :15-11 A :10-9 B :8-7(標準点) C :6-5 D :4-1
    S(15-11)、D(4-1)を付した場合には下欄に理由を記入のこと

 上司とは、例えば、一般職であれば課長、課長であれば部長となります。 
 課長が部下に対して、能力が低い、努力が足りない、バカだチョンだと評するのは自由ですが、管理職には、仕事及び組織の管理の能力のほか、部下への指導力など別の査定あり、能力が低い、努力が足りないなどの評価を下すと、それはそのまま自己評価となり、部長から部下に対する指導力がない、管理能力がないとの評価を受けることになります。
 優秀な管理職であれば、自分が丁寧に指導し組織力の向上に努めて、部下の能力を向上させ結果を引き出していることになるはずですので、当然部下への評価は高くなるはずなのです。
 大雑把に見ても、学生が見ているほど、世の中が社会人に下す評価は甘くないのですよ。   <了>

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