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君はシゲチャンランドを知っているか
君はシゲチャンランドを知っているか? 北海道から帰ってきて何人にこの言葉をかけただろうか。 シゲチャンランド、それは北海道津別町にある私設のテーマパーク。その入口には来るものを拒んでいるのか迎えているのかわからないタワー、竜のような流木、倒れたタンク。
※キャプションは勝手な感想です。
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チケットを小さな赤い小屋でおじさんから買い園内に入る。園内には赤い小屋が大小合わせて15軒ほどあり、これは奥が深そうだ。 よく見ると小屋には一つずつ名前が付けられている。肩、腕、歯。 歯の丸い小窓から中を覗いて見たのだが…。何かの植物以外なんなのかよくわからなかった。
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小手調べに入口近くの小屋に入ると大量の不思議なオブジェに面食らう。量だけではない。廃材を材料にしたオブジェひとつひとつのレベルは驚くほど高い。一つ一つが生命を持っているかのように存在感があるのだ。
オブジェオブジェと見ていると時間がいくらあっても足りない。入口付近でいくらでも時間がすぎていく…ん、このクマはモヨロ貝塚のクマでは…こんなところにもオホーツク文化が!
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右手と左手と書かれた異様な建物がある。どちらから入ろうか悩む。もちろん正しい順路などないのだろうけど。
少し悩んで左手の暖簾をくぐる。そこには吊るされた巨人(大きくはない)と吊るされたオブジェが静かに揺れていた。
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口と書かれた小さな赤いサイロに入ると…この子達の部屋でした。上を見上げるともう1匹いる。不気味だ…そして可愛い…。 それにしてもシゲチャンとは一体何者なのか…。
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鼻と書かれた小屋に入る。内部は広い。どうやらかつては牛小屋だったようで、牛の代わりに生き物のような大きなのオブジェがところどころに配置されている。やや暗く、怖がりな子どもなら泣きだすかもしれない雰囲気がある。
怖くても見逃してはいけない。釣り針のような生き物に驚けば、ふと見ると壁にちょっと気の抜けた生き物がひとやすみしている。部屋の隅にも何かがいる。 しかもこのボリューム、シゲチャンとは何者なのだ…。
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小屋の一画には画廊のようなスペースがあって、平面作品も飾られている。この作風はかつてどこかで見たような…
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この半立体のコーナーもすごく良かった。見ていて楽しいし、ワクワクする。細かいところにまで血が通っている。
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鼻の小屋で全身でシゲチャンを浴びてしまった。それも過度に。浴びすぎたら身体に悪いものではないだろうけど、何か妙なスイッチが入ってしまった気がする。
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園内に入ってけっこう時間が経っている。トイレに行きたくなり…トイレを探す。 正直どんなトイレだろうかビビりながら。ちゃんと落ち着ける場所だろうか、存在感のあるオブジェの横で用を足すのだろうか…。
まったくそんなことはなく。トイレには作品は置かれていない。それどころかいい匂いがするのだ。清潔で落ち着ける空間。シゲチャンランドはわかっている。ここでひと息つき、次なる小屋を目指す。
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爪と書かれた小さな小屋、というかボックス。ここは骨で作られたオブジェの部屋。めちゃくちゃかわいいんだけど生命が再構築されている怖さがある。だけど思わず顔がほころぶ可愛さがある。だけど怖い。可愛い。怖い。可愛い…。
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目と書かれた小屋。 ここは流木オブジェの神殿だ。奥の祭壇を守るように、流木で作られたオブジェが左右に並ぶ。多種多様だが一体感があり、チームとして強いオーラを感じる。まだレベルの低いうちに強敵のいる洞窟に入ってしまったRPGの主人公の気分になって恐々オブジェを見る。
全部強いがいくつかを紹介。クマが可愛くて強そう。全部が全部すごい技を繰り出してきそうでのけぞりながら見る。
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頭と書かれた小屋も大きい。入口にはひょうたんおやじと呼ばれるキャラクターの親玉が立っている。南米寄りの無国籍な空間と言えば良いだろうか、つい迷い込んだ感がある。トリップにトリップにトリップを重ねた感じだ。
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頭の中は2階建、これでもかというくらい作品が詰め込まれている。なんだなんだと楽しい作品が多い。怖さよりも楽しくてかわいい作品群。なんだか懐かしくもあり癒される小屋になっている。
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ここはシゲチャンの初期の作品が多く置いてある。実はシゲチャンは元々東京で様々な媒体でコマーシャルの仕事をしていたイラストレーターで、だから見覚えのある作風がこの部屋には多い。 シゲチャン=大西重成さんは50歳でこのランドを開園し奥さんと二人でここを運営しているとのことだ。
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もちろん入口でもぎりをしていたおじさんがシゲチャンで、少しだけお話しさせていただいた。そしたらなぜかオホーツク文化の話になり、シゲチャンとモヨロ貝塚が最高だと盛り上がってしまった。 やっぱりオホーツク文化好きだったんだ!モヨロ貝塚は最高です。
シゲチャンは以前、モスバーガーの出していたモスモスという超ご機嫌なフリーペーパーの表紙と中面のイラストを担当していて、縄文zineもまた目指すところでもあったフリペの大先輩。 そんな人が北海道の津別町で自分のランドを作っているなんてすごい、すごすぎる。
他にも坂本龍一のアルバムやハービーハンコックのアルバムのジャケットを手がけていたり、ちょっと懐かしすぎるThat’s Euro Beatの一連のアートワークもシゲチャンだ。
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小屋は他にもある。所々にぽんと置かれているオブジェもいちいち楽しい。 シゲチャンランドに行く人は飲み物を持っていくことをオススメする。ぱっと見れるボリュームではない。
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少し奥まった場所に東屋のような小屋がある。近づくと、ひょ、ひょ、ひょうたんおやじだ‼︎
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さらに奥まった場所にも小さな小屋が。 骨という小屋の中は文字通り骨のオブジェが。 ここでは少し時間をかけ園内の喧騒から離れ静かに骨と向き合う。奇妙なだけではない。怖さ可愛さだけでもなく、大地から生まれるものでシゲチャンランドは作られている。
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そして気づいてくれただろうか、この園内の綺麗さに。シゲチャンランドにはゴミが落ちていない。あれだけある作品もホコリをかぶっているものは見当たらなかった。蜘蛛の巣だってなかった。雑然と見えてすべてが整理されている。だからこそオブジェが際立っているのだ。
これは簡単なことではない。シゲチャンと奥さんのココさん(ミュージアムショップがあって、そこで会えます)には頭が下がる。北海道の道東に行く人は絶対に行ったほうが良い。 君はシゲチャンランドを知っているか?と、これからも問いかけていきたいと思う。
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…実はシゲチャンランドに行ったあと、しばらくある副作用に悩まされてしまった。 それは、日常生活を送る上で、目に写る木々や葉っぱや石ころすべてから目線を感じ、電柱や信号機、コンセントやほうきやダイソンまですべてのものがオブジェに見えてしまうという症状だ。 困った…。