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27 研究者とうつ病

20年ぶりくらいにしっかり休んだ。最低限の仕事だけして、研究に関係ない本を読んだり、好きなだけ寝たり、休むことに専念した。原稿の締切はあるが、後からでも間に合うと考えて手をつけなかった。
そして一週間。死にたいと思う気持ちはなくなった。

仕事の依頼を断り続けたおかげでこの時間ができた。こんなに安心して過ごせたのは10代以来だと思う。

研究者を志したときから、publish or perish (出版か死か)と教え込まれ、いつも身の丈以上の仕事を抱え、頼まれたことはなんでも引き受け、旅行に行っても「こんなことをしていていいのだろうか」と罪悪感を抱いてきた。他人に誇れる業績がないことを埋め合わせるかのように、ワーカホリックであることでしか自分を安心させられなかった。
でもなにが publish or perish だ。論文を軒並み reject された年も私は生きていた。今もわずかな publication しかないのに、専任教員としての地位さえ得て生き残っているではないか。

いつでも研究ばかりしていることが不幸かというと、そんなことはない。いつの間にか望まぬテーマや望まぬ業務が入り込み、それが全てになりそうだっただけで、研究することは生活することと同じく自然な営みだ。
できるだけ自然体で生活していくことを考えたい。研究を生命や感情よりも優先しない。生きる中に研究がある。publish and live. 出版もするし生きるのだ。