見出し画像

それでも忘れられない君へ。⑦

「どうしたのよ、一体!」

 息を切らしながら追いついた綾がようやく追いつき、加奈子の肩を捕まえた。加奈子はこれ以上綾を振り切ろうとはせず、その場に立ち止まる。
 蝉の声、綾の乱れきった気息、そして遠巻きに聞こえる野球部連中の掛け声だけが夏の、昼下がりの住宅街に鳴り響く。

ここから先は

940字

¥ 100

期間限定!PayPayで支払うと抽選でお得

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?