TOMOHIKO KATO

日記や小説、大学時代のレポートなど、本編(@karo229)とは毛並みの違う記事をこちらで公開しております。

TOMOHIKO KATO

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  • 【小説】それでも忘れられない君へ。

    なかなか書けないので、連載形式で小出しに書いてます。要調整の箇所もありますがあくまで草稿の段階なので、途中でも完成した段階でもガンガンに修正する予定です。 ※本文はAI不使用。画像はAIに生成させたイメージです。

  • 短編小説

  • 【学芸員資格】レポートを公開します。

    学芸員資格の科目履修時に作成したレポートをまとめています。

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【学芸員資格】レポートを公開します。

 はじめまして、加藤と申します。  普段noteではこちら↓で美術展の感想文を中心に各種雑文を書いております。  さて、こちらのプロフィールに書いておりますとおり、2024年に学芸員資格を取得いたしました。その際、そこそこの数量のあるレポートを書かせていただいたのですが、時間をかけて書いたものをそのままハードディスクの肥やしにするのももったいないと思い、その一部を公開することにいたしました。  今回対象となる科目は以下の通りです。 博物館概論 博物館資料論 博物館経

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    • それでも忘れられない君へ。⑬

       加奈子と少年とがジュースを手にニコニコとしている後ろで、綾は恐る恐るその様子を見つめている。心のどこかでまだまだビビっていることには違いないが、最初の頃よりは緊張感はだいぶほどけているようである。 「こ、こわくないの…?」  恐る恐る綾が尋ねる。 「たしかに怪しいやつだけど、悪いやつじゃなさそうだよ。インスタのおじDMなんかより全然まし」

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      • 投票率

         これを書いている数日前に選挙が行われた。  ちなみに今回の投票率は前回より微減の53.85%。やはりというか、今回でも投票率の低下をネタに、「国民の2人に1人は社会はこのままでいいと思っているのか」とか、投票に行かない人を「政治に無関心な人」として批判する向きがある。  全く間違っているわけではないが、少々単純すぎる解釈だと思う。総務省のホームページにある、投票率の推移グラフを見る限りでは、むしろ投票率はその時代の政治に対する信頼・期待を反映した数値であると言える。

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        • X休んでみた/Bluesky始めてみた

           そもそも使っているSNS、ソーシャルメディアの数が多すぎた。

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        【学芸員資格】レポートを公開します。

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        • 【小説】それでも忘れられない君へ。
          13本
        • 短編小説
          1本
        • 【学芸員資格】レポートを公開します。
          9本

        記事

          それでも忘れられない君へ。⑫

          「まあいいや。どうやら学校の中に入ってきちゃったみたいだから、見つけたら連絡して」 「わかりました」  元林先生は、二人が子供を見たとは思っていないらしい。 「あと、美術部は何時までいるつもり?」 「美術部っていうか…私は雨が止み次第帰ろうかなって思ってましたけど」 「わ、わたしも…」  怯えモードに入っている綾も加奈子の意見に同調した。 「わかった。学校には17時まではいられるけど、天気が不安定みたいだからナルハヤで。鍵を締めたら職員室に報告しに来てね」  と言い、元林先生

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          それでも忘れられない君へ。⑫

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          それでも忘れられない君へ。⑪

          「何がほしい?」  自動販売機の前に立ち、加奈子が少年に尋ねる。身長120センチに満たない少年が指を差した先には、いかにも子供が好きそうな果汁10%オレンジの缶ジュースがあった。少年の冷たすぎる体温を考えれば温かい飲み物を用意したほうが良いのかもしれないが、夏ということもあり「あたたか〜い」飲み物がない。ブルブル震えているわけでもなさそうだし、何よりも少年のリクエストだ。

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          それでも忘れられない君へ。⑪

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          それでも忘れられない君へ。⑩

           加奈子はそんな少年の手を繋ぎ、廊下に出た。  自動販売機は美術室のある校舎の1階にある。美術室は2階なので、そこまで遠いというわけでもない。少年は相変わらう無表情のままだが、手の振りや歩幅が大きかったり、その所作は妙にウキウキしているようにも見える。 「楽しい?」  加奈子の質問に、少年はコクリとうなずいた。

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          それでも忘れられない君へ。⑩

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          それでも忘れられない君へ。⑨

          「あれ、オバケじゃないの…?」  準備室の扉を強く閉めると、先ほどまでのクールな姉御肌はどこへやら、綾の顔は恐怖で打ち震え、今まで見たことのない半べそをかきだした。 「オバケって… 服が白いからオバケってこと?」  綾の突拍子もない主張に、加奈子は小馬鹿にした笑みを浮かべる。 「いくら雨に濡れたからって、体が冷たすぎるわよ。まるで雪を触ったみたいな…」  それは誇張だよ、と加奈子は言いかけたが、綾の体はまるで冬のように震えている。

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          それでも忘れられない君へ。⑨

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          それでも忘れられない君へ。⑧

          「ちょっと少年、そろそろ離れてくれるかな…」  加奈子は少年の両肩を掴み、少し力を入れてグググッと自分から少年を引き剥がした。数十センチほどの距離ができると、加奈子はその場にしゃがみ込み、少年と目線を合わせる。年齢は小学生1年生ぐらいだろうか。短髪の髪型で、白いTシャツに白い半ズボン、白い靴下に白いマジックテープの白いシューズを履いている。はしゃぐ年頃にそぐわない、真っ白なファッションだが、ある意味では美術室にふさわしい、コンセプチュアルなスタイルであるとも言える。

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          それでも忘れられない君へ。⑧

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          それでも忘れられない君へ。⑦

          「どうしたのよ、一体!」  息を切らしながら追いついた綾がようやく追いつき、加奈子の肩を捕まえた。加奈子はこれ以上綾を振り切ろうとはせず、その場に立ち止まる。  蝉の声、綾の乱れきった気息、そして遠巻きに聞こえる野球部連中の掛け声だけが夏の、昼下がりの住宅街に鳴り響く。

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          それでも忘れられない君へ。⑦

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          それでも忘れられない君へ。⑥

           美術室の鍵をかけ、校舎から徒歩5分のところにあるコンビニエンスストアに二人で向かう。  綾は一枚絵を描きあげると、やたらと甘いものを欲しがる。今日は朝からずっと絵を描いていたというだけあって、学期中よりもその量もタガが外れている。どらやき2個に羊羹、大福、チョコパン、そして500mlのチョコ入りバニラアイス…

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          それでも忘れられない君へ。⑥

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          それでも忘れられない君へ。⑤

           それから3ヶ月が経つ。  敬語も「先輩」呼びもしなくなり、「加奈子」「綾ちゃん」と呼び合う二人はすっかり友人、いや、姉妹のような関係となっていた。最初は体育会系丸出しだった加奈子も綾の前では形式的な礼儀を忘れ、それが綾にとってはむしろ居心地が良かった。 「加奈子は描かないの?」

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          それでも忘れられない君へ。⑤

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          それでも忘れられない君へ。④

           綾は自分の席につき、スマートフォンのタイマーを10分にセットする。スケッチブックと鉛筆を握り、足を組みながら鉛筆でアタリを取りはじめる。  加奈子は「何をしてても良い」と言われたとて、何をすれば良いのかがわからない。とりあえず、綾が何を描いているのかを後ろから覗き込んでみることにした。

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          それでも忘れられない君へ。④

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          それでも忘れられない君へ。③

           美術室で待っていたのは、元林から事情を聞いていた綾だった。  既読〘私、そんなこと言われても何もできないですよ?〙 〘いいの、むしろそっとしてあげて〙 既読〘わかりました。けど…期待しないでくださいね……〙  そんなSNS上でのやり取りを前日にしていた綾も、同級生の友人から「下級生の野球部マネージャーが喫煙で停学になった」という噂は聞いていた。ただしそれは「ざまあみろww」とかいう、嫉妬と嘲笑に満ちた文脈においてである。

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          それでも忘れられない君へ。③

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          それでも忘れられない君へ。②

           加奈子が野球部を辞めた理由、それは加奈子自身の喫煙である。  自業自得と言われるかもしれないが、その実態は加奈子の、学外の男友達に薦められて一服したところを、生活指導の教師に見られてしまったことだった。もちろん加奈子は事情を説明したが、それでも喫煙した事実は残る。野球部は強制退部、男友達とは連絡禁止。両親にもめちゃくちゃ怒られたし、土日を挟んで1週間の停学、自宅に引きこもっての反省文作成と、人生のなかでも一番無意味な時間を過ごすこととなってしまった。

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          それでも忘れられない君へ。②

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          それでも忘れられない君へ。①

           8月5日午後2時14分、美術室。2台の古い扇風機が、音を立てながら首を振っている。  気温はジャスト30℃。暑いことには違いないが、扇風機さえあればぎりぎり耐えられないわけでもない。  美術室には白のワイシャツ姿の、2人の高校生部員がいた。3年生になる野口綾はマルスの石像の前で、小さな汗をかきながらせっせとデッサンに勤しむ。女性国会議員のような短髪に眼鏡をかけており、マルスを睨むその眼光はやたらと厳しい。  そんな綾には目もくれず、2年生の石川加奈子は紙パックジュースのス

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          それでも忘れられない君へ。①