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越境をして分かったことはいくつかあるが。

「越境する人」に惹かれる。

具体的な人物で思い描くのは、ジブリの映画の登場人物たちだ。
引っ越してきたばかりの町の不思議なトンネルをくぐり、神々への世界へ「越境」し、記憶を置いて戻ってきた千尋。
北海道の蝦夷から大和の社会へ、そして森で暮らす神々の世界へ「越境」し、その橋渡しとなり何度も境界を行き来するアシタカ。
ジブリ映画の主人公たちは、異なる世界への境界線をまたぎ、それぞれの世界での「異なる者」としての宿命を背負う。
そして成長したり、他者に影響を与えたりする。

私たちの人生にも、「越境」はつきものだ。
慣れ親しんだ地域や国、環境を飛び越えて、未知の場所に飛び込むことはストレスも伴うが、とても楽しい。
結婚や進学、就職や転職など、人生につきもののイベントでも何げなく境界線を越えている。

私自身、人生の様々な場面で、望むと望まないとに関わらず、越境を強いられてきた。
子供の頃は3カ国で育ち、言語も文化もルールも全然違う国で生活したのは、その中の大きな経験で。
トンネルを抜けただけで別世界に来てしまった千尋の経験した壮絶なストレスには、実は子供時代の自分を重ねてしまったりもする。

直近では、職種を大きく変えたこと。
慣れ親しんだやり方、仕事の習慣、価値観をアンラーンして、全く新しいスキルを作るのは思った以上に大変なことだった。

こうした越境を通して、人間として得たものはいくつもある。
その中でも、意外な発見であり、かつ重要な発見だったな、と思うことは、自分は「プライドを捨てられる人間」だと気がついたことだ。

今の部署では、私はスキル的には新入社員と変わらないところからのスタートだった。チームリーダーは全員年下で、後輩から教えを受ける日々だった。
人によってはそれに耐えられずに辞めてしまうことも多いみたいだけど、気にならなかった。寧ろ、年下の人にこそ学ぶことが多いと知った。
時に怒られたりすることもあるけど、反省して前に進めるし。
寧ろ年功序列な組織にいた頃、年上の上司からギリギリと詰められる方が辛かった。

子供時代を振り返っても、言葉の分からない環境で馬鹿にされたり、差別される経験もあったけど、それでも勉強を辞めようとは思わなかった。

オープンな心で、新たな場所で学んでいける。
そういう自分を信じることができたのは、数々の境界を越えた経験と、そこで出会った人たちが教えてくれたことだった。

その気づきが、次の挑戦も後押ししてくれるように思うのだ。


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