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もうどこにもいないと思っていた自分とまた会えた

実に13年ぶりに、アメリカの土地を踏んだ。
南米への出張へのトランジットの、ほんの数時間のことである。
サンフランシスコの街をこの足で歩いた。
私が多感な10代のころを過ごしたのは東海岸のNYで、今頃は凍えるほど寒いはずだ。夜でもジャケットを着ていると汗ばむサンフランシスコとは、気候も町並みも違う。
それでも。
それでも確かに、そこは私の人生の大切な一部分を作ったアメリカだった。もう一度アメリカを歩くことができて、ただただ幸せだった。

そもそも今回の出張には不安があった。
部署で唯一、「英語が話せるから」という理由で抜擢された海外出張だったが、正直、アメリカを離れて13年、もう英語なんて話せないんじゃないかと不安だったから。
「英語を話せる自分」はもう居なくなったと思ったから。

ところが、久しぶりの海外出張で、英語の環境に身を置いて2日も経ってしまえば、自分の口からまたするすると、英語が零れ出てきたのである。

不思議だなと思う。
もう失われたと思っていた自分に、また会えた。
まだいたんだ。久しぶりだね。

閉じこもるように日本で働いて10年。
アメリカも、英語も、海外も、もうずっと遠くにあるような気がして、二度と戻れない、二度と近づけない場所になぜか感じていた。
でもそんなことはなくて、自分で近づいていけば必ずまた会える。いつだって、そこにある。

どんな経験だって、距離を置いても、完全に消えたりはしないんだと思った。


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