そよ風に吹かれて
その時、そよ風が優しく吹いてきて教えてくれた。
「あなたは価値のある、美しい存在なんだよ。」
風は言った。
「あなたには限りない自由と安らぎが与えられている。」
そう、そうなんだ。
風は言葉を語らなかったけれど
それでも、わたしには、風の語る自由と安らぎが何なのかが直観的にわかった。
風は自由そのもの、安らぎそのものだった。
わたしは吹いてくるそよ風に完全に身を任せた。
やがて、雲の隙間からお日様が顔を出し、ぽかぽかと温かい日差しが降り注いだ。
お日様の光は言った。
「きみは愛だ。愛は誰でもすでに無条件に与えられているものだよ。それを知るために、自分をいっぱい愛してごらん。」
日差しはちょうどよく、無意識に固まっていた身体をほぐしてくれて
心まで優しくあたためられていくようだった。
ああ、これが愛というものなのかもしれない、とわたしは想った。
ふと、地面を見ると、足元で名もない草花がそよそよと揺れていた。
なんだかそれがたまらなく愛しくなって足をとめた。
今まで、こんなに愛しい存在が
日常の中にあふれていたのかと想うと
思わず涙がこぼれそうになった。
風に吹かれ、お日様の日差しをたっぷり浴びている草花。
その傍に立つわたし。
全てが調和していて、幸せだった。
その時、そよ風と、お日様と、草花と、わたしは一つだった。
全ての名前が消えて、言葉が消え、わたしも消えた。
そこには、ただ愛だけが流れていた。
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