さよならは、さよならでしかない
Netflixオリジナル「さよならのつづき」を観た。
ポロッと泣ける、と、スーッと冷める、を繰り返しながら一気に観た。
作品を観ている時の涙というのは私の場合共感から来るものが多くて、このドラマには共感できる部分とできない部分の落差があったのだと思う。
この作品で私がとても好きだったのは主に2つ。
登場人物がすごくリアルなこと
土砂降りの中で実はさえ子たちと成瀬は出会っていたシーン
まずひとつ目の登場人物のリアルさに関しては、演者が良かったのもあるけど、どの人も人間らしくて素敵だった。
特に有村架純演じるさえ子のパーソナルはとても好きで、自分を見ているような気さえした。
運命と言っちゃいたいけど舞い上がっちゃいそうでなんかまだ認めたくない!
とか
強い女でいたい!頭ぐちゃぐちゃになるともう私ほんとダメで、これを終わらせたい!
とか
そういう気持ちはとてもわかる。
私は旦那と海外で出会い、日本で再会して付き合ったし、強い女でいたいし、私を大好きな人が好きだし、仕事も好きなことバリバリやってたい。(ほぼさえ子ってこと…??)
そんな私は、旦那との出会いをこれが運命だ!と心の底から思ってしまうのはなんか嫌で、嫌というより怖くて、とてもパーソナルな部分でしか言わない、もしくは冗談混じりにだけ言うようにしてる。
これを運命だと信じ切って怠けないように律していたいし、運命って偶然を素敵に言い換えただけで、自分で道を作るものだとも思う。
そんな私がもし、旦那を失ったら。
実際に私は愛する人が突然死んでしまったという経験は無いけれど、
きっとさえ子のように、今まで通りの日常を淡々と生きてしまうのだろう。
普通に笑えて、普通に仕事も頑張れて。
旦那を思い出して悲しくなって、会いたくなって、でもそれもそういうものだ受け入れるしかなき時間が解決する、って思って生きていくのだと思う。
大好きな人がいなくなっても、ただ毎日自分の目の前の現実を淡々と生きるしかないと思う。
そういう現実の中に、愛する人の心臓を持った人が現れてしまうというのがドラマな部分だったわけだけど。
相手が既婚者で、同年代で、良い感じの顔とスタイルなんて反則だ〜!と思いながらも、
自分がどん底に弱ってる時にそんな人が現れてしまったら揺れちゃうのかな、なんて不倫になりそうなシーンを観ながらも思ってしまった。
でもやっぱりここは第三者だから冷静になる。
おいおい、よせよせ、そこまでにしとけ!って。
だからドラマの中でもそこまでにしといてくれて本当に良かったな。
そこで外に走り出してクマに遭遇して冷静になる流れはちょっとウケたけど、
なんか、それもそうなんだろうなって思った。
だって本当はすぐ分かる。1番愛してる人はいないこと。
さよならは、何が起きてもさよならでしか無い。
さよならの続きといったって、そのストーリーは自分の分しかなくて、
相手との時間の続きは絶対に無いのだ。
どんなに混乱しても、悲しくなっても、
ふと冷静になった時に、心臓しか残っていない雄介を求めるのはまさに「なにジタバタしてんだろ…」ってバカバカしくなるに違いない。
「成瀬さんが好きなのか雄介が好きなのか、成瀬さんに会いたいのか雄介に会いたいのか、分からなくなる」っていう台詞も心情も、さえ子の立場になったことがないから分からないとも思うけど、
それだって考えたって仕方ないってすぐに分かる。
成瀬さんを好きになる自分のことを許せるわけがないし、雄介はとにかくもういない。
さよならのつづきにフォーカスを当てたって良いことが無いのだ。
「終わらせたい、次に進みたい、そのためには遠くに行くことも厭わない」
そういう大袈裟に見えて現実的なさえ子の決断が、私の中ではしっかり腹落ちした。
これでヒステリックだったり不倫に走ったりはちゃめちゃなこと言う主人公だったらもう観てられなかったと思う。
もうひとつのお気に入りは、土砂降りの中で実はさえ子たちと成瀬は出会っていたシーン。
そもそもこのドラマは最初から最後まで描写がどれも美しかった。
北海道の自然の景色やハワイのコーヒー畑の景色。
海、空港、ピアノの音色。
自然なカップルの言葉のやりとり。
そんな数々の中でそのシーンが1番好きなのは、土砂降りの中に映えるさえ子や雄介のファッションのバランスと、
そこにいる登場人物全員の動きや言葉が、一人ひとり異様に際立っていたからかな。
雄介は傘を持ってこなそうだし、それを悪びれもなく、もらった傘で「相合傘できてラッキー!」とか言うところ。
それを「信じられない!」と怒りながらも、なんやかんや笑ってしまうさえ子。
長靴と傘をくれる優しさと、自由な人に憧れて感化されて運命を変える決断をする成瀬さん。
映る全てと紡がれる言葉がどれも美しかった。
名シーンや名台詞は色々あるけれど、特に心に残ったのはここかな。
綺麗な描写と、紡がれる台詞と、大袈裟じゃないリアルな登場人物。
それが「別れ」というテーマと重なった時、そりゃ涙も出る。
美しいドラマだったなと思う。
とりあえず、愛する人が死ぬドラマはしばらく観たくないな。