W杯3~4位決定戦の是非とス-パースター
2022W杯の3~4位決定戦はクロアチアが勝って、2度目の3位タイトル獲得となりました。
W杯に3~4位決定戦は必要か否か、という論争があります。筆者は賛成でもあり反対でもあるという中途半端な立場です。
反対の理由は、W杯の大舞台で4強に入ったチーム、つまり準決勝まで戦ったチームには、3、4位の順番付けなど要らないのではないか、と思うからです。
例えば夏の高校野球など多くの大大会でも順位付けは優勝と準優勝だけです。それ以外は4強、8強、16強などとまとめます。
その方が勝ち進んだチームの全てを讃える感じがあって良いように思います。3、4位があるなら、5位も6位もそれ以下も順位付けをしなければ理屈に合わない。
また優勝を目指して全力を尽くした準決勝敗退の2チームに、果たして3~4位決定戦を戦う十分な動機付けがあるか、という疑問もあります。W杯の頂点を目指すことと3位を目指すことの間には、意欲という意味では大きな落差があるのではないでしょうか。
逆に3位決定戦もあった方が良いと考えるのは、純粋に1人のサッカー・ファンとして、W杯4強にまで残ったチームの試合を1つでも多く見ていたいから。
出場する選手には決勝戦に臨むほどの熱い気持ちは無くても、ピッチに立てば相手のあることですから彼らはやはりそれなりに燃えて、勝ちに行こうとして面白い試合展開になる。過去の例がそれを証明しています。
準決勝で苦杯をなめたチームに敗者復活戦にも似たチャンスを与える、という意味合いからも3~4位決定戦に賛成したいとも考えてきました。
クロアチアVSモロッコは、いわばサッカー新興国同士の対戦と言っても構わない試合でした。
クロアチアは過去にも同じ試合を経験し、前回ロシア大会ではそこを超えて決勝戦まで駒を進めました。従って新興国と呼ぶのはあたらないかもしれない。
だがクロアチアは、もうひとつのビッグイベント欧州杯ではベスト8が最高でそれほどパッとしません。世界の強豪国に比較するとほぼ常にダークホース的存在に留まっています。
今回大会でのモロッコの進撃は驚異的でした。アフリカ勢として初めて準決勝まで進み歴史に大きな足跡を残しました。彼らは歴史の刻印をさらに鮮明にするために3、4位決定戦も死にもの狂いに戦うだろう、と筆者は予想しました。
片やクロアチアには、もしかするとモロッコほどの強烈な動機づけはないかもしれない、と筆者は密かに考えました。既述のように彼らは過去に既に3、4位戦を経験し、前回大会では準優勝さえしています。
従って今回の試合で必死に戦う動機付けがやや弱いのではないか、と危惧したのです。
筆者の思いはすべて杞憂に終わりました。モロッコもクロアチアも全力で試合を戦い抜きました。見甲斐のあるすばらしい展開でした。
モロッコは今大会における彼らの快進撃が“まぐれ”ではないことを明確に示しました。敗れはしましたが、全試合を通してクロアチアとほぼ互角に渡り合ったのがその証拠でした。
またクロアチアは、彼らの強さが欧州強豪国にも肉薄するものであることを強く示唆しました。
筆者は次の欧州杯まで待たなくても、もはやクロアチアを欧州のサッカー強国のひとつ、とスンナリ認めるべきではないかと考えるようになりました。
そのこととは別に、筆者はクロアチアを特別の思い入れとともに見ていました。
クロアチアの至宝ルカ・モドリッチの動向が気になっていたのです。37歳のモドリッチは、W杯での3、4位決定戦を最後にクロアチア代表から去ると見られています。
ところが同時に、2024年の欧州杯までは代表に留まる、という見方もあります。筆者は彼が2年後の欧州杯でも躍動するのを見たい。
社会の多くの分野と同じようにプロサッカーの世界でも選手寿命が伸び続けています。イタリアのACミランに所属するイブラヒモビッチは41歳にしてまだ同チームの中心的存在です。
間もなく38歳になるポルトガルのロナウドも、全盛期を過ぎたものの未だに1人でゲームをひっくり返す力を持つスーパースターです。
モドリッチはそれらのビッグネームにも匹敵する優れたファンタジスタです。2024年の欧州杯でも、39歳のモドリッチが、若いだけが取り柄の凡手の選手たち率いて暴れ回る勇姿を見てみたい。
ひとりの純粋のサッカーファンの願いです。