自己犠牲しないための、看護師の小管理(Petty Management)
【届け!21世紀のナイチンゲールたちへ】
この記事は、2人の現役看護師・奈津美と侑子が、ナイチンゲールの著書『看護覚え書(Notes on Nursing)』を元ネタに繰り広げた対談を収録したもの。『看護覚え書』は、看護師のバイブル的存在。だけど読破できた人、ほんとは多くないんじゃない?そもそも読みにくくない?それなら2人で読んでみよう。『看護覚え書』にある”看護の原則”は、現代の看護の現場でどこに散りばめられているかな?2人で探してみよう。
このような動機から、2人で対談企画を始めました。
日々の忙しさ、業務量の多さに疲弊して、「看護ってなんなんだろう?」とわからなくなっていませんか?悩める21世紀のナイチンゲールたちが、看護を見つめ直すきっかけのひとつとして、この対談が役に立てれば幸いです。
奈津美、侑子
『小管理(Petty Management)』って、聞き慣れない言葉ですよね。
ナイチンゲールは、そのことを以下のように記してています。
どんなに良い看護を充分に行ったとしても、ひとつのことーつまり小管理ーが欠けていれば、言い換えれば「あなたがそこにいるとき自分がすることを、あなたがそこにいないときにも行われるように対処する方法」を知らないならば、その結果は、全てが台無しになったり、まるで逆効果になってしてしまうであろう。
ー「看護覚え書ー看護であること、看護でないことー(改訳第7版)」現代社 より
勤務時間を超えて、身を削って、「患者さんのために」一生懸命働いていた。そんな経験、ありませんか?
ナイチンゲールは、「どんなに自己犠牲して働いていても、小管理が欠けていたら、求められている看護は提供できないんだよ。」と説いています。
『小管理(Petty Management)』の項目を読み解いていくと、
「実は、私1人でそんなに頑張らなくてもよかった!」ということに気づくことができます。
自己犠牲する必要は、なかったんですよね。
なぜなら、もともと看護はチームでやるものだからです。
それでは、対談をご覧ください。
看護師の「小管理」は、自分がいないときを想像することから始まる
(奈津美)そもそも「小管理」とか、「ちょっとした管理」ってなんだと思う?
※現代社の『看護覚え書』では『小管理』、看護協会の『看護覚え書』では『ちょっとした管理』と翻訳されています。以下『小管理』で統一します。
(侑子)「小管理」ね~。本の訳が、正直わかりにくかったんやけど、「プライマリー看護師の役割」が、「小管理」と感覚的に近いかなと思った。プライマリー看護師の視点をもとに、誰もが同じように実践できる看護をちゃんと示して伝えること、伝え合うことかな。それが、小管理かなと思って。本当になんていうか、心得っていうか気遣いというか。
プライマリー看護師(primary nurse)とは、一人の患者を、入院から退院までの全期間を通して継続的に受け持つ看護師のことである。(引用:https://www.kango-roo.com/word/5817)
(侑子)担当がいなくても、看護チームで統一した看護がずーっと行われ続けるっていう事は、患者さんの安心につながるし、不安にならないから、生命力の消耗みたいなのも保たれるなって。なっちゃんどう思った?
(奈津美)うーん…なんかさ、すごく良い看護師さんが四六時中頑張るよりも、その半分も頑張ってない看護師が「小管理」をするほうがいい看護になるみたいなこと書いてあるところあったじゃん?
(侑子)うん、あったね。
自分の健康をも顧みず、ほかのあらゆる仕事をもなげうって看護に打ち込んだとしても、ただひとつの小さな管理が欠けているならば、その半分も打ち込んでいないが、「自分自身を拡大する技術」を持っている別の看護師に比べて、その半分も充分な看護を行えないのである。
ー「看護覚え書ー看護であること、看護でないことー(改訳第7版)」現代社 より
(奈津美)病棟にすごく熱い看護師がいるんだけど。
(侑子)うんうん。
(奈津美)本当に良い看護師さんだなって思うんだけど、彼女よりもちょっと冷めている別の看護師さんの方が、そつなく仕事をこなして、患者さんからもクレームが来ず、次の日もちゃんと継続看護ができているところを見ると、なんか、それのことかなって思って。
(侑子)うんうんうん!まさにじゃない?
(奈津美)自分の受け持っている時間でいかに良い看護するかではなくて、その先も見据えての看護をしていこうっていうことが、「小管理」だっりするのかな。
(侑子)めっちゃいい例やなそれ。その「先を見据える」ってことが、つまりは「自分がいないときの状態を予測して看護する」ことだろうから、それこそナイチンゲールが言っていた「自分自身を拡大する技術」なんやろうなぁ。
(奈津美)そうだよね!もう、「まさにじゃん!」って思って!
「自分にしかできない看護」を探す前に、「みんなが同じようにできる看護」について考える
「なるべく自分自身が勤務についている」ようにしようと努力する≪中途半端≫なやり方は、かえって患者の心配をつのらせるだけなのである。これと反対に、もしあなたが、自分がその場にいようといまいと物事がいつも整然と運ばれるように手筈を整えておきさえすれば、患者はもうまったく心配する必要がなくなるのである。(中略)心身の消耗は、ほかのどんな消耗よりもはるかに有害なのである。
ー「看護覚え書ー看護であること、看護でないことー(改訳第7版)」現代社 より
(侑子)さっき例で話してくれてた「めっちゃ良い看護師」ってのは、どういうとこが良いって思ったん?
(奈津美)対応とか。患者さんへの対応とかも優しいし、きちっとしてるし。担当してる時間は多分患者さんが安心していられるんだろうけど、その看護師さんじゃなくなったら不安になっちゃう、みたいな。
(侑子)あぁ~~。
(奈津美)なんか、嬉しいけどね。「もう帰っちゃうのね、寂しいわ~。」みたいなことって言われると、自分にしかができない看護をした感があって、嬉しくなっちゃうんだけど。本当はそうじゃだめなんだよね。「ちゃんと引き継いであるから安心してね」って言える状態じゃなきゃいけないし、安心できるように引き継ぐところまでが看護かなって思う。
(侑子)うんうん。いやー、それこそ最近めっちゃ思うなぁ。私のところ(小児メインの訪問看護ステーション勤務)はチームで1人の利用者さんを看てるから、訪問回数が多い看護師のほうが、信頼を得ていき易くて。もちろん相性もあるから、一概には言えへんけどね。
(奈津美)うんうん。
(侑子)それで、どうしてもプライマリー看護師の訪問回数が多くなるし、「担当の看護師さんやし、よく来てくれるし、この子もすごい安心するわぁ。」って言われたりするのね。
なっちゃんも言ってたけど、めっちゃ嬉しいねんな、そう言ってもらえると。それだけなら「嬉しいな」で終わるんやけど、「他の看護師さんよりも」って言われるときもあって…そこはちょっと、違うのかなぁって…思うんよね。私じゃないとダメっていうのは、場合によっては「いい看護できてへんのかな」って思ってしまう。
なんかね、本当はチームやのに、主治医のこととかヘルパーさんのこととかよりも、「私のほうが」みたいな感じで言われて、余計に何かその、全然みんなで…なんだろう、看れてないというか…、そういう感がすごい増してしまう。
(奈津美)なんかねえ…。そうだよね。あの人もこの人もその人も、誰が来ても安心できるからよかったわって言われるのほうが、きっといいのかもね。
(侑子)そうなんよねー。誰が来ても安心するっていうのは、医者もヘルパーさんも、コメディカルの人たちも、看護師も、みんなが患者さんを、ビジョンっていうか、どこに向かって、その人はどういうふうに生きていっていきたいとか、どういう治療していきたい、この後どうしていきたいっていうことが定まっていて、そのために私たちはどうするとよいのかを、医療を提供する側も、患者さんと同じ目線で統一できていて……
つまり、みんな共通認識がある状態であるから、同じ気持ちでぶつかって来てくれるから、すごく安心するんだっていうことなのかなと思って。だから私だけが、こう、突出して、患者さんと私の間だけで共通の認識を持ってたから、そういうことが起きるわけかなぁと思って。
(奈津美)そだね~。はぁ~、痛いわぁ!ほらチーム医療だから、チームメンバーというか、医者も看護師も、例えば薬剤師とかヘルパーさんとか、みんながその、患者さんの…侑子ちゃんが言ったビジョン?を、共通認識のもと、何をしていくのか、何を患者さんにしていくのかは、皆同じ目的で同じ方法で行える状態にするっていうのが、実は「管理する」っていうことなのかな?
(侑子)そうだね~。看護のチームだけで言ったら、「どういう看護を提供するか」みたいなのを、みんなが同じように思っておくことがすごく大事だなぁと思った。
小管理が行き届いた「統一した看護」をするための、具体的な方法
「責任を持っている」ということは、たんに自分自身が適切な処置を行うだけでなく、ほかの誰もがそうするように手筈を整える、という意味である。(中略)すべて自分で切り回すことでもなければ、大勢の人間に職務を分担させることでもなく、各人が自分に定められた職務を確実に果たせるようにすることを意味している。
ー「看護覚え書ー看護であること、看護でないことー(改訳第7版)」現代社 より
➀綿密な情報共有
(侑子)普段、チームメンバーみんなが同じような関わりをするために、いつもどういうふうに共有してたかなと思うと、やっぱりその「報連相」をどうするかを考えてたかなーと思ったけど。なっちゃんとこの病棟ではどうしてる、とかある?
(奈津美)なんかね~、「申し送りは極力なくそう」っていう時代の流れ、あるじゃん?
(侑子)あるある。
(奈津美)だから、申し送りじゃなく情報共有できるように共有できるものが、カルテの中にあって。例えば、「方向性がどうだ」とか、「この日IC(IC=医師から患者さんへ病状や方針の説明の機会のこと)あるよ」とか、「この食べ物なら食べていいよ」とか。対応が特殊な人は、「こういう対応してね」みたいな。絶対抜けてはならないことは、カルテに記載するようにして、情報共有してるかな。できるだけ同じような対応ができるように。
(侑子)うんうん。
(奈津美)全然ぬけぬけで、結局長々申し送りをしないと情報共有できてなくてお叱りを受けることも多々あるんだけど(笑)。工夫しようという動きはあるかな。
(侑子)うんうん。申し送りをなくそうっていうのは、あれやね、夜勤とか日勤の申し送りをなくそうってことやんな?
(奈津美)そうそうそう。その代わりにカンファレンスをしようっていうことなんだけど、でもその中で果たしてじゃあ、プライマリー看護師がいない勤務時間帯のときに、患者さんが何を思って、どんな対応をすべきなのかとか、何に困りそうかなとか、そういう視点で考えれた考えていたかなって思うと…考えてなかったなって思う。
(侑子)私もそういう視点はなかったな~。むしろ、プライマリーがなんでそこまでしないといけないんだろうって思ってた(笑)。当時は、プライマリー看護師の業務量が多すぎるって感じてたから…。
(奈津美)そっか~。(笑) 病院での生活、家での生活、転院先での生活、とか、将来を見据えての話とかはできるようになってるけど…。入院中もプライマリー看護師がいないときの話とか…してたかなぁ…?みたいな(笑)そこにまで目を向けれてなかった気がするなぁ。
(侑子)うんうん。確かに。でもさ、例えば自分が居ない日の日勤に、自分の担当の患者さんに大きなイベントがあるとしたら、それに対して手配したりとか準備したりとかはするやん?
(奈津美)うんうん。
(侑子)それで、この人受け持ちになりそうやなって人に連絡するとかさ。「〇日の受け持ちさん、この日はこういうことがあるので、こういう感じでお願いします。」みたいな感じで申し送りしたりとかすると思うけど、それもこういう小管理の1つの工夫で、できていることかなと思うんだけど…。
(奈津美)そうだね、確かに。いや、そういわれるとまさにだわ。何月何日に大きいICがあるから、この日の看護師さんを探し、その看護師さんに事細かに申し送る。(笑)
(侑子)うんうんうんうん(笑)
(奈津美)よくある話だね。
(侑子)あるある。
(奈津美)実はやってたっていうことだね。
(侑子)実はやってた。それが管理なんだってわかると、ちょっとなんか(小管理の)イメージつきやすいよな。
②看護チーム全体でフォローし合いう体制作り
病院においても家庭においても、責任者は誰も、次の簡単な自問を頭に入れておこう。それはどうしたら自分のなすべきことを自分でできるか、という自問ではなく、なすべきことがいつも行われているようにするために、自分はどのような対策を講じることができるか、という自問である。
ー「看護覚え書ー看護であること、看護でないことー(改訳第7版)」現代社 より
(奈津美)そう言えば本文の中でさ、申し送られる人が、AさんじゃなくてBさんだったからこんなことが起きてしまったとか書いてあったじゃん?そういうことが起きないように全員が最低限のクオリティーを持っているように管理していくのが、例えば病棟なら、病棟責任者の役割なんじゃないかなって思って、なんて重い役割を負っているんだろうって思った(笑)
(侑子)例えばさっきのさ、大きいイベントに対して、ちょっと頼りないBさんが受け持ちになりそうやったら、言い方悪いけど根回しして、例えばなっちゃんみたいな主任さんとか、その時のリーダー的な役割になりそうな人にも申し送ったりはする。
(奈津美)するする!するね。
(侑子)それもさ、やっぱりチームやから、それも結構いろんな予測をして何かおきそうだなと思ったら、準備するよな。大きい処置にこの人初めてつきますとかだったら、リーダーたちはサポートに入るとかさ。そういうのも管理の一つかなと思う。
(奈津美)そうだね、そこまで考えて、例えちょっぴり頼りない看護師がいたとしても、その人がちゃんとフォローされるように整えていくってことをいつでもしないといけないんだよね。うっかり忘れっちゃたりすることもあるけど、忘れちゃったりした場合にも、ちょっと頼りないBさんだったからしょうがないよね、じゃなくて、じゃあこれからはそういうことが起きないように、どういう仕組みにしたらいいか考えていかなきゃいけないよね。
(侑子)そうそう、そういうことやんね、そういうときにインシデントが起きるよね。管理が行き届てないとか、フォローしあえる状態じゃないときにインシデントが起きる。
例えば1年目、2年目さんが当事者だった時に、「あー1年目、2年目だったからでしょ」ってなるけど、そこは周りがフォローする大前提でみんな働いてる。一人一人がしっかりしなきゃいけないのはもちろんやけど、インシデントの内容によっては、それが重要なことなのか、重要でないことなのかってまだ判断できない経験年数だったりするときもあるから、判断のアンテナが立つ人がフォローするっていうのが大事かなって。
(奈津美)そうだねー。インシデントって出てきたけど、インシデントの考え方って大事よね。侑子ちゃん前、インシデント起こすと「じゃあどうすればよかったか」って考えさせられるっていってて、それで結構メンタル来るって言ってたことあったよね(笑) インシデントって、起こした人にそうやって考えさせるんじゃなくって、どういう仕組みだったら起きなかったかをみんなで考えていくのが大事なんだよね。それは小管理の一つになるんじゃないかな。
(侑子)本質を突き詰めていったらもしかしたらマネジメントする人の視点の穴だったりするかもしれんよね。
(奈津美)「わからなかったあなたが悪い」じゃなくて、もし分からない人がいっぱいいるんだったら、わからなくてもできるようにしておかなきゃいけない。すごい大変だし、「いや、それくらいわかってよ」って正直思っちゃうこともあるだろうけどね(笑)
(侑子)そうなんよ。でもだいたい、同じインシデントしない?みんな。
(奈津美)するー!!
(侑子)あたし病棟勤めてたときの、一年目定番のインシデントが、抗生剤の同時投与。なんで一緒に投与したのーみたいな(笑)
(奈津美)あるある!!国試では同時投与してはいけない薬があるなんて勉強しなかったもんね(笑) でも現場に出てる側からすれば、なぜ一緒にいっちゃったんだよーーってなるね(笑)
(侑子)そうそう、みんなわからへんやん。お薬って、決まった時間で先生が一気にオーダー出してて、それが1時間ずつの投与とかだったら、なおさら。経験してたら、「この抗生剤、同じ時間で指示されてるけど順番につないでいくんやな」ってわかるけどさ。
でも一年目さんの多くは、「あ、この時間きたら全部投与しないといけないんや」って思うから、頑張ってポンプ持ってきて一生懸命、同時投与をしていくんだよね。で、怒られるっていう(笑)
(奈津美)頑張ったのにねー…(笑) なんか、病棟には新人看護師もいればベテラン看護師もいるから、8知ってる看護師もいれば3しか知らない看護師もいるってことだよね。だったら3しか知らない看護師さんも同じ看護ができるように合わせていかないといけないんだよね。きっと。
その病院・病棟の中にどんなレベルの看護師がいるのかを把握してどう管理していったら事故が起きずに患者さんがちゃんと療養できるかマネジメントしていくのが責任者なんだろうね、きっつ(笑)
(侑子)そうやね(笑)。でも、そういうのをするからこそ、やっぱり結局は患者さんが安心する。どの看護師にも不安なく安心して看護してもらえるから、ストレスためずに療養生活を送ることができて、それはつまり、さっき言った、生命力の消耗の予防なんやと思う。
ナイチンゲールの言ってる、『何が看護でなにが看護じゃないか』っていうやつの一番根底の、『生命力の消耗をさせないケアの仕方』っていうのが、看護の「小管理」っていうのにつながっていくんだろうね。
病棟管理者の「小管理」は、看護の循環の要
(奈津美)なんかね、副主任になってから病棟管理の仕事が増えて、患者さんを受け持たない日があると、看護してる実感がないなって思うときもあったけど、「小管理」が看護なんだってわかると、責任者のしてる仕事って、超看護だよね(笑)
(侑子)超看護!そこに、もっとそれこそ誇りを持ったらいいよね。「看護してるんだ私は」って。やっぱり循環してるね、看護がすごく。うん。
(奈津美)主任もさ、ベッドサイドに行くことがすごく減っちゃったから、たまに私が、ベッドサイドで、キャッキャしながら楽しそうにしてると、「私もそっちに行きたい」って言ってるけど、でも主任がしてることってすごく大きな看護なんだよね。教育のこととか、病棟の仕組みを整えるとか、病棟の人間関係とか雰囲気を整えるとか。循環していく看護の中で、必ず患者さんに届くものなんだよね。
(侑子)病棟の雰囲気を整えるって、例えばどういうことしてるん?
(奈津美)うちの病棟って、看護師同士の雰囲気とか、コメディカルとの関係性とか、病棟の空気感とかをすごく大切にしてきたのね。名前を呼んで挨拶するとか、体調を気遣うとか、雑談をするとか(笑)
なんか、こういうの、そんなに重視しない部署もあるかもしれないけど、今思えばこれってちょっとした管理の一つだったんじゃないかな。話し合いや情報共有が大事だけど、そもそもそういう会話をしやすい雰囲気を作っていくことも管理者の役割の一つじゃないかなと思うんだよね。
(侑子)なるほどね~!情報共有したいけど、そもそもあの先輩話し辛い、とかあったな(笑)
在宅ならではの小管理
(奈津美)訪問看護は、単独で動くことが多いイメージだけど、どうやって情報共有してるの?
(侑子)そうやねぇ…一緒に同行訪問しない限り、家族や利用者さんと看護師が、どういう関りをしているのかって、他のスタッフからは完全に見えなくなってしまうねんなぁ。だから情報共有の仕方は、継続看護をするために、在宅では病棟よりもっと意識をしないといけないなと思ってて。
(奈津美)そうだよね~。
(侑子)でね、私が前に、上司から、「報連相もうちょっとしっかりしたほうがいいよ」って言われたのね。私は情報共有しているつもりだったし、「事細かく伝達しなくても記録読んだらわかるくない?」っていう想いも結構あって(笑)。そう言ったら上司が、「自分が次訪問に行くときに、こういうこと知ってたらよかったとか、これがわかってたほうが患者さんの需要に合った看護ができるなとか、なんかそういう視点で報連相してみたらどう?」って言われて。
(奈津美)すげーいいアドバイス。
(侑子)そうやねん。「あ、たしかにーっ!」て思って、それからあたしもそれ意識するようになったら、自然に報連相できるようになった。「あ、こういうこと言っといたらいいんや」とかなんとなくわかるようになったし、「これ教えといてほしかった」とか、私も報連相される側として、気づけることも増えた。
(奈津美)なるほどねぇ。納得。
(侑子)そうなんだよね。次に行く看護師が情報知ってないと、家族とかも、「あ、情報共有されてないんだ」って、ちょっとそこで「もやっ」としたものが残ったりとか、それが不信感につながったりとかもあるから。
例えば「軟膏変わったよー」とか、「〇日にはどういう先生が来る予定だよ」とか、ちょっとしたことでも申し送っておくと、「ちゃんと日ごろから情報共有されてるんだな」って思ってもらえるし、こっちもそういうつもりで、「じゃあ今日はどういう看護していこうかな」って考えれるから、大事やなって思った。
(奈津美)そうだね~。確かに。利用者さんの安心感に繋がるね。
(侑子)うん、そうやねん。それは病棟勤務でも通ずることだけど、状況が細かく見えないからこそ、申し送りをして、その状況が想像できるくらいの状態なら、『申し送りがちゃんとできました』てことなのかなって思った。
(奈津美)そうだねー。ちょっとした管理とか、小管理とかいうけど、経験を積み重ねていないと、この管理はなかなかできないものだよね。
(侑子)ちょっとイメージしずらいかもしれないよね。
(奈津美)申し送る内容とかも小管理に入ってくると思うけど、侑子ちゃんみたいに「最初は何を申し送ったらいいの?」ってなっちゃうものなんだよね。
(侑子)そうやんな~。それを何か月か働いてると、「あーこういうことが困るだろうな」ってわかってきたりとかはあるんやなって。まあそれもなんだろう、始めから、できていないからダメっていうよりも、こういうことが起きてくるよっていうのを新人さんともシェアできてたらいいよね。
(奈津美)なんか侑子ちゃんにアドバイスをくれた職場の人がしたことがまさに、小管理だったのかもしれないよね
(侑子)そうね、そうかも。
(奈津美)看護のためのアドバイス。そういうのも管理だね。
(侑子)ほんとに看護って、利用者さんだけ、患者さんだけにするもんではないんやなって思うね。それこそ家族看護っていうのもあるように、家族にする看護もあれば、あたしたちの看護師に対してとか、コメディカル同士とか、医者と看護師の間とか、そんなんでも看護は発生するんやなっておもうとすげー…(笑)
(奈津美)確かにー。ちょっと侮ってたわ(笑) 小管理とかいうから、ブレイクタイムくらいに思ってた(笑)
(侑子)結構ほんとに統一した看護っていうのには小管理がほんとに必要だなって。看護はチームでやるケアなんだなって、改めて思ったなぁ。
まとめ
『小管理』について、そんなに大事な概念ではないと思っていましたが(笑)、全くそんなことはなくて、この考え方なくしては看護はまわらないとさえ思える内容でした。
気遣い、思いやりが繋ぎの役割としてあるからこそ、患者さんが安心できる看護が実践されるのですね。
対談の中で、あれもこれもと、普段の看護の中にある『小管理』が出てきたので、以下に例をピックアップしてみました。今後の看護のお役に立てれば幸いです。
また、よんでくださったあなたの職場での小管理とはどのようなことをしていますか??ぜひコメント欄で教えてくださいね。
細かなことにも「ハッと」気づかせてくれるナイチンゲールさん。次の章ではどんな「アハ」体験があるのか、楽しみです。
看護の中の小管理の例を集めてみました
・誰もが同じ目的で、同じ方法で看護できるようにすること。その看護を具体的に示して伝えること、伝え合うこと。
・身体面、精神面で生命力の消耗させないケアを行うこと。
・自分が患者さんを受け持っている時間でいかに「良い看護をする」かではなく、その先も見据えての看護をしていくこと。
・自分自身が不在のときを予測して看護をすること。
・「ちゃんと引き継いであるから安心してね」って言える状態であること。安心できるように次の勤務帯の受け持ち看護師へ引き継ぐこと。
・新人看護師の行動を予測して、フォローすること。
・会話をしやすい雰囲気を作っていくこと。
・インシデントが起きない仕組みを考えること。
・看護のために、組織間でアドバイスし合うこと。
<対談者プロフィール>
【奈津美】
’92年生まれ。ドラマの影響で看護の道へ進むことを決意。しかし臨床1年目に一度挫折を経験する。「やっぱり看護が好きだ」と気づき、現在は病棟の副主任看護師を務めながら、主に看護師のメンタルコーチをしている。たくさん泣いて転んで落ちこんだからこそ、人の生きがい、人間関係、死に方と生き方を大切に思うようになる。看護師を癒す看護師でありたい。たくさんの人の人生を、わくわくするものにしたい。食べること、歌うこと、ビールと日本酒が大好き。
【侑子】
’92年生まれ。現役小児訪問看護師、兼ベビーマッサージ講師。山登りや海外旅行好きで、周囲から「行動力がある」と言われることが多いが、幼いころから自己開示が苦手な一面があった。「なんとか自分の心を解放したい」「私を知りたい」という想いから、小児領域に飛び込む。様々な葛藤を乗り越えて、現在は、自分らしくのびのび生きている。弱みを愛して本来の自分を生きる人が増えてほしいという想いのもと、活動している。新しい価値観に触れることが大好き。発酵食、保存食づくりにハマってます。
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