刑務所は0円生活【官物編】
今日は、持ち物のあれこれをご説明しよう。
刑務所は一円も持っていなくても生活できる
刑務所にはお金がない人がたくさんいる。
私が知っている受刑者でも、何人か「所持金0円」に
限りなく近い人がいた。
それでも刑務所は生活ができる。
それは、施設が必要な物品を支給してくれるからだ。
これを、「私物」に対して「官物(かんぶつ)」と呼ぶ。
1.衣服
これは下着・靴下・パジャマなど、すべて支給される。
支給される衣服を「官衣(かんい)」と呼んでいた。
夏場にはランニング、冬場にはメリヤス(ステテコ)。
靴下も夏冬で交換してくれる。
高齢者には別途防寒着もある。
ただ、一般的に販売されているような質の良いものではない。
何故なら、これらは刑務所内で自作しているからだ。
工場内にミシンを担当する受刑者がおり、この人たちが
せっせと作成している。もちろん、ちゃんと着れるので問題ない。
もし、長年使って破れたり穴が開いたりした場合は交換してもらえる。
2.消耗品
例えば、歯ブラシ・歯磨き粉・石鹸・タオルなど。
これらも支給される。この支給される品物を「官物」と呼ぶ。
刑務所ではティッシュとトイレットペーパーの区別がない。
この2つの用途に使用できる「ちり紙(ちりし)」という
昭和初期のような紙がある。これで両方の用を足すのだ。
これらは支給時期が定められており、厳格に支給される。
石鹸は1か月以上経過していないといけない。
歯磨き粉と歯ブラシは3か月以上、タオルは6か月以上。
ちなみにちり紙は1か月となる。
各受刑者が「官物支給カード」と呼ばれる、支給の詳細が
書かれたカードを持っている。
前回支給した日にちが記入されている。それをすべて職員が検印するのだ。
その為、勝手に量を多く支給してもらったり、早いタイミングで支給
してもらうことは、限りなく不可能に近い。
中には故意に支給してもらおうとする輩もいる。
これがバレると「調査・懲罰」となる。
3.書籍
刑務所でやることは限られている。
特に居室で過ごす時間は長い割にやることがない。
テレビを見ることが出来る時間も決められている。
ラジオを聴ける時間もそう長くない。
そうすると、お金がある者は本を買う。
お金がない者は・・・実は本が借りられるのだ。
この借りられる本のことを「備付書籍」と呼ぶ。
一昔前は「官本(かんぼん)」と呼んでいた。
官本は毎週3冊まで借りられることが出来る。
昭和50年代の本もあるし、最近のベストセラーもある。
これらは刑務所が買っているわけではない。ほぼ寄付だ。
受刑者で読み終わった本を廃棄する場合、寄付することが
出来る。また、一般社会からの寄付もある。
漫画も結構な量があった。
官本は毎週同じ曜日に借りることが出来るので、1週間毎に
新しい本や、前週に借りた本の続きを借りることが出来る。
この官本は、図書館のようなところで借りるのではなく、
工場単位で借りる方法が採用されている。
約200冊の官本をセットにして各工場に配布設置して、
2か月おきに巡回させるのだ。
こうすれば、長期収容されている受刑者でも、2か月おきに
新しい官本のセットの中から借りれるので、新鮮さもある。
また、寄付も定期的にあるので、結構リフレッシュしていた。
これとは別に「特別備付書籍」と呼ばれるものがある。
通称「特別官本・又は特官(とっかん)」だ。
国語辞典や漢和辞典、六法や資格試験の書籍など。
自己研鑽の意味合いが多い書籍なので、借りられる期間が
1か月と少し長めになっている。
ただ、この書籍は大変数が少ないので、借りたい時に借りられない
事が多かった。そうすると、順番待ちになるのだ。
何か月か待って、忘れたころに借りるなんてこともしょっちゅうであった。
なぜ、刑務所は「0円」生活できるのか?
ここまでは生活するための「官物」をご紹介した。
これらはすべて「0円」である。
出所する際に清算されたり、社会復帰したら国税で請求される、
なんてことはない。
何故なら、「更生・矯正」するために必要な費用と見なされている。
つまり、お金のことを気にすることなく、
「人間やり直してくださいよ」
という、日本国からのお願いなのだ。
ということは、国のお金が使われている。
社会全体で支払った税金の一部が、受刑者の生活を支えている。
あなたの支払った税金が、私の受刑生活の一端を担っていたのかも。
この場を借りて、ありがとうございます。
私はこのように「更生・矯正」出来ました。
ただ、
受刑者の再犯率は、6割を超えている
これが現実なのだ。
これを踏まえて、明日は「食事」について触れていきたい。