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刑務所と、拘置所と、留置場②

先日は【留置場】について書いてみた。
今日はその後、移送される【拘置所】について書いていきたい。


拘置所は法務省管轄

留置場は警察署、つまり「警察庁」の施設だ。
働いているのは警察官であり、基本的には施設のある都道府県で
採用された警察職員である。

一方、拘置所は「法務省」の施設になる。
働いているのは刑務官になる。国家公務員の職種の1つである。

組織的にも、内閣府と国家公安委員会に紐づく警察庁と、
内閣の直接紐づく法務省は、全くの別組織だ。
仲が良いのか悪いのか、そのあたりは分からない。
ただ、鑑定留置の容疑者を拘置所に収容しないといけない際、
拘置所側(刑務官)はあまりいい顔をしていなかった。

知らない人は、
捕まった人を収容しておく施設
と、同じ枠組みで考えてしまうだろう。

拘置所の役割とは?

逮捕されると、48時間に釈放か検察に送致か決まる。
そして、その後24時間以内に勾留か釈放か決まる。
更に、その後10日以内に起訴するか決まる。
ただ、決めきれないと、更に10日延長されて起訴されるか決まる。

だいたい、この期間は留置場にいることが多い。
これは、警察の管理下にあるので、
「いつでも取調べが出来るのでやりやすい」
から、であると私は感じた。

では、拘置所の役割とは何なのであろうか?

それは、
起訴されて捜査がひと段落して、
もう留置場には置いておく必要がなくなった被告人

を収容するためだ。

起訴されると呼び方が変わる。
「容疑者」から「被告人」となるのだ。
この段階で、警察も検察も、裁判で有罪にすることが出来る
証拠集めや色々な段取りが整っているので、そんなに取調べも
しなくなる。
そうすると、警察署としては早く留置所の部屋を空けたい。
なんせ、犯罪者は次から次へと来るからだ。
その結果、拘置所へ移送となる。

移送のタイミングが、保釈のタイミング

拘置所へ移送されるということは、警察も検察もある程度調べ切っている。
つまり、被告側からしてみれば
「もうバレたし身柄解いてよ」
と、思う瞬間なのだ。

勿論、留置場にいるタイミングで保釈される被告人もいるし、
捜査はまだ終わってないけど、拘置所へ移送になる被告人もいる。
なので、一概にとは言えないのだが、私が見てきた感覚だと、
移送のタイミングが、保釈のタイミング
という被告人が結構いたのだ。

ただ、保釈を決めるのは裁判官なので、そう易々とはいかない。
更に、検察官が準抗告できる。
つまり、裁判官はOKでも、検察官がNGを出して、結果NGになる
ケースも存在するのだ。

その為、拘置所に移送された被告人の中で、保釈申請があっさり通ると
思っていたが、結局1か月以上留め置かれる、そんな人もいた。

管轄が違うので、ルールも違う

お話しした通り、拘置所からは「法務省管轄」となる。
その為、生活のルールが結構変わってくる。

まず、呼ばれ方が変わる。
と、言っても結局は称呼番号で呼ばれるのは変わらない。
私は、留置場では1桁の番号で、拘置所からは4桁の番号だった。

次に、持ち物の制限が緩くなる。
留置場では、本や服は居室外に保管しないといけなかった。
しかし、拘置所では「私物保管用のバック」が貸与される。
この中に下着や衣服、また私物一式を入れて居室内で保管する。
そして、居室には棚があるので、そこに書籍を置いたりできる。

部屋の広さや設備も違う

私が収容された拘置所は、留置場よりも少し広かった。
理由は2点ある。

まず、床が畳敷きに変わるのだ。
留置場は木の板の上にカーペットを敷いたような作りだった。
その為、ずっと座り続けると、硬く痛くなるので辛かった。
それが、畳が3枚敷かれた居室に変わるのだ。
畳は少しやわらかいので、痛みが軽減された記憶がある。

そして、洗面台が居室に備え付けられる。
これが非常にありがたい。
好きなタイミングで手を洗ったり顔を洗ったり、歯も磨ける。
時間になるまで使えなかった留置場とは雲泥の差である。

つまり、長期滞在が可能となる

基本的な衣食住が、自分の居室内で完結する。
つまり、長く居ても不自由なく暮らせる環境になるのだ。

お菓子や書籍、歯ブラシやコップ、衣服にパジャマ。
全てが居室内保管となるので、職員が毎度毎度連行する必要がない。
更に言えば、捜査もひと段落しているので、
被告人の心情も落ち着き始めている者が多い。
腹をくくる、とまでは言わないが、気持ちが割り切れ始めるのだ。

死刑囚も拘置所にいる

死刑囚は【刑務所】にはいない。
あくまでも【拘置所】預かりとなる。

理由は下記のとおりである。

死刑の判決が確定した者は,死刑の執行が行なわれるまで拘置所に拘禁され,特別の規定に基く処遇を除き,未決拘禁者に準じて処遇される。
それは,死刑という極刑に直面する者に対する思いやりから,受刑者の場合よりもゆるやかな未決拘禁者の処遇規定を準用しているのである。
しかし,死刑確定者は,もはや未決拘禁者ではなく,その拘禁の目標は,死刑の執行と,それに至るまで身柄を確保することにある。
そして,そのためには,可能なかぎり死刑に直面する人間の苦悩と恐怖とをとり除き,本人がしょく罪の観念に徹し,安心立命の境地に立って,死刑の執行をうけ得るように,また,社会一般に対しては,その者の拘禁について,いささかの不安も与えることのないように,あらゆる努力を尽くすことが要請される。
したがって,未決拘禁者ないし受刑者に比し,より以上に,その心情の微妙な動きを的確には握し,適正な処置をとること,また,死を迎えるための人生観の確立のための教育的措置を講ずることが必要とされるわけである。

昭和40年版 犯罪白書 第二編/第二章/一/5
※法務省ホームページより抜粋

私自身、死刑囚を見たことはなかった。
殺人犯は何人か見たが・・・
それはまた後日お話ししようと思う。

面会や嗜好品の購入、生活について

面会は、基本的に大きく変わることはない。
ただ、弁護士を呼ぶ際は「願箋(がんせん)」と呼ばれる
願い事を伝えるための用紙に記入したり、弁護士事務所へFAXするための
書類に記入したりする形になる。
なんせ、警察署より多くの人員を管理しているので、口頭ベースでは
トラブルに繋がりかねないのだ。

嗜好品や日用品の購入は、若干変わる。
これも私がいた頃の話であるのでご理解いただきたい。

まず、留置場では原則【セブンイレブン】の商品を購入するのだ。
お菓子やパン、その他日用品も【セブンイレブン】の物だ。
これについて、とある警察官がこのように言っていた。
「昔は、最寄りの商店やコンビニで購入出来ていたのだが、
 どこの留置場に入っても、条件が変わらない様にするために
 全国一斉にセブンイレブンで購入することになったんだ」、と。
つまり、処遇が各警察署によって異なるとクレームが出るから
面倒なので、どこ行っても一緒になるようにしたのだろう。

では、拘置所ではどうなるのか。
拘置所の購入品は、原則【矯正協会】という財団法人が嚙んでいる。
ホームページを見ると、過去の会長の大半が元司法大臣であり、
最近は元検事総長だった。
なんとなく、日本のきな臭い部分が垣間見える。

それはさておき、購入する物はこの財団が定めた日用品しか購入できない。
ここで購入する商品は世間では知られていない会社の物がある。
そして、すべて定価で販売されている。
・・・さらにきな臭い。

お菓子は留置場より種類が豊富になる。
そして夏場はアイスやペットボトルジュースが購入できる。
そして、コーヒーやカップラーメンなど、お湯を貰うことが出来る。
その為、留置場では瘦せてしまった容疑者が、拘置所へ移って数か月で
10kgほど太ったなど、甘い物には困らない環境となる。

購入できる嗜好品は拘置所によって異なる

留置場とここが大きく異なる。
拘置所には、多くの場合【売店】が併設されている。
大きな施設だと、施設を提携した【商店】があったりもする。
そこのお店で取り扱っている嗜好品(お菓子)が異なるのだ。
特に、東京拘置所や大阪拘置所など、規模の大きい施設は半端ない。
聞いた話だが、缶詰やマニアックなお菓子など、とても豊富だったようだ。

拘置所から刑務所へ

では、最終的な施設である刑務所へ行くのはどのような流れなのか。

 拘置所で実刑になった場合

 既に収容されているので、裁判で実刑になっても特に変わりはない。
 裁判へ手錠を嵌めて出廷し、そのまま拘置所に帰って手錠を外す。
 「実刑か。控訴しようか刑務所へ行くか、どうしようかな。」
 なんて感じで思っている。
 裁判のあと、弁護士とも話せず拘置所へ戻る。
 その為、弁護士とは拘置所の面会室で話すことになる。
 今後の方針を打合せして、次どうするのか決めるのだ。
 控訴するなら14日以内に手続きをしないといけない。
 刑務所へ行くなら、特に何もする必要ない。

 保釈されていて実刑になった場合

 裁判までは一般人のように振舞っていられる。
 しかし、一審で実刑になった場合その場で拘束される。
 法廷から出されて、見えないところで再び手錠が掛けられる。
 とても悲しい瞬間だ。
 そして、そのまま拘置所へ移送される。
 少し前までいた場所へ帰ってくるような感覚だ。
 そして、今日まで味わっていた平凡な日々が、
 まるで幸せに溢れていた毎日だったんだ、と気づく瞬間でもある。
 
 ちなみに、二審で保釈中に実刑となると、約1週間後に検察に出頭する
 ように求められるのが一般的だ。
 その為、その1週間で思い切り娑婆を満喫する、というのがあるあるだ。

拘置所は最後の面会チャンス

留置場と拘置所は、誰でも面会が可能である。
家族でも友人でも、バレていなければ共犯でも知らない人でも。
さすがに、知らない人は会いに来ないかもしれないが、
「友人・知人」と名乗れば、原則会うことが出来る。
ただ、裁判所から接見禁止の処分が下っている場合は会えない。
弁護士しか会えないのだが、家族だけは会えるとか、人によって条件が
異なる。

しかし、刑務所に行くと血縁のあるもの、または配偶者しか会えない。
内縁の妻も手続きを踏めば会うことは可能だ。
つまり、友人・知人などは会えなくなる。
業務上やむを得ない場合など、若干の緩和はあるが、基本的にはNGだ。

刑期が過ぎて、ある程度先が見えてくると面会できる可能性は出てくる。
しかし、この判断は収容されている刑務所に一任されており、
私がいたところは【手紙】はOKだが、【面会】はNGであった。

なので、会いに行くなら拘置所の間に済ませておくのがいいと思う。



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