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【ドラマ感想】放課後カルテ#4「聞かせてくれないか、お前の言葉で」

本作のターニングポイントである第4話。
限られた時間の中で羽菜の気持ちを描こうとしているのは充分伝わってきたが、もっとここも入れて!と思ってしまう回だった。45分って短い。

※ドラマ本編および原作漫画のネタバレがあります。
画像出典のページ数は電子書籍版準拠です。


原作エピソード紹介

第15話~第19話 野外学校の話
第20話~21話 水本羽菜の話

原作4巻P.134より

単行本1.5冊分くらいのボリュームがある、原作最長編クラスの回。
ドラマ第4話は15話の一部と17話~21話冒頭当たりがベースとなっている。
牧野が保健室に赴任してからどのように変化し、成長したかよくわかるエピソード。

薫回の重要さ

野外学校で取り上げられた児童は、原作だと他にもいる。
そのひとりが宮田薫。ドラマではポニーテールでオーバーオールを着ている女の子だ。

 原作4巻P.29より

この回は今後のエピソードへのフックとなっており、野外学校での羽菜と藤野の様子も描かれており、羽菜は優しいしっかり者、藤野は悪ガキにそれぞれ見える。続きのエピソードで実際はそれだけじゃない、というのを描いていくのだ。藤野は2話で悪いことをしていたが、羽菜の描写は今までそんなになかったので『いい子』の印象は薄いかもしれない。

班の女子児童たちが仲良くなるきっかけもここで描かれていた。ドラマだとバラバラ気味だった3人が急に仲良くなったように見えてしまって、やや違和感がある。

羽菜が抱える恐怖

自分の暴力的な一面が、みんなに知られてしまうかもしれない。
れいかの行動で不安になってしまった羽菜は、どんどん被害妄想や思い込みにとらわれていく。

原作4巻P.114より

ドラマではこのあたりをゆきの回と同じように表現していたが、原作では少し違う。
みんなに囲まれて責められる、というより楽しそうなみんなの様子に羽菜を責める幻聴が混じる感じだ。ここは原作通り行った方が不安感がわかりやすいと思うのだが、ドラマだと幻聴は表現しづらいのだろうか。 

託す役の変化

羽菜のSOSに気づくのは、原作だと藤野。 

原作5巻P.33より

ドラマではこの役を篠谷が担った。原作のこの件好きだから変わったのはちょっと残念だけど、児童たちに頼られたいと言っていた彼女が牧野に話す役を託そうとするのは彼女なりの成長なのかもしれない。

「そっち(先生)は俺達のなにを知ってんの?」

このあとショックからかしばらく何も耳に入らなくなってしまう
原作5巻P.32より

他の先生たちが児童のことをしっかり見ているか。
それをずっと心配し、苛立っていた原作篠谷に藤野の言葉はクリティカルヒットしてしまった。

何も言葉を返せないのは原作もドラマも同じだけど、「児童のことを表面的にしか見られていない」と思い始めたドラマの篠谷は原作とは少し反応が違って見えた。今回の追加描写で篠谷回をやるのはほぼ確定したが、ドラマの篠谷は原作のような自信を打ち砕かれた状態には見えない。はじめから不安な気持ちを牧野に打ち明けていた彼女の悩みを、どう描いていくんだろう。ヘイトを貯めるような描写が篠谷はかなり多かったから好意的に受け入れられるか正直ちょっと怖い。

「お前を助けたい」

前回の記事でサブタイトルにしてほしいと書いた台詞。採用されたのは違う台詞だったが、原作寄りの台詞がサブタイトルになったのは地味に今回が初めてだ。

原作5巻P.48より

このシーンを読んだとき、「牧野変わったなぁ……!」と感動した。保健室に来たばかりの彼だったら言えない言葉だ。牧野の成長を象徴している。

ドラマの牧野は、原作初期の牧野に比べると成熟して見えていた。保健室に赴任して、色々な子を診たからこそ言えた「お前を助けたい」がもう言えるんじゃないかと思ったのもそのためだ。
原作の牧野は、「羽菜の話を聞くのは担任の役目」と言っていない。むしろ篠谷にどうやって羽菜と向き合うか、どう治していくかを説いている。ドラマの牧野もきっとそうだろうと思っていたから3話でゆきに「でも私は先生に心も救ってもらった気持ちだよ」と言われたときの反応が意外だったのだが、まさかここまで精神的な部分は自分が診る分野ではないと思っていたとは。そう来たか。そこが欠けてるのか。予想外だった。

さいごに

描いてほしいところがたくさんあった。羽菜が壊しているのを見てしまったときの藤野の反応、野外学校で羽菜に問いかけるときの牧野の言葉。
最重要な箇所を拾うだけでほぼ1話使っているから、それを描くのには時間が足りないのだろう。予告もカットするくらい詰め詰めだったし。もっと放送時間がほしい。

次回は……泣かせるのかぁ、そうかぁ。


画像出典

放課後カルテ 4巻
日生マユ/講談社(2013年刊・IBSN:978-4-06-380382-2)
放課後カルテ 5巻
日生マユ/講談社(2013年刊・IBSN:978-4-06-380405-8)
出典ページ数は各画像下に記載


【次回に関わる要素注意】水本家のこと

※ドラマ第5話でやるかもしれない内容のネタバレがあります。OKな方はこのままスクロールしてください。









































羽菜と母親の関係を描くうえで非常に重要な部分がカットされている。
これは原作の話でドラマもそうだとは限らないし、次回やるから今はあまり見せていないのかもしれない。でもこれを知っているのと知らないのとでは母親の印象が大きく変わる。だから書く。

羽菜は母が不倫してるんじゃないか、と思っている。

ドラマでもそうかはまだわからない。ただ幸せな回想と羽菜を責める台詞のときで母親の姿がだいぶ違うのを見るに、母に何か大きな変化があったのは確実だろう。

今はまだ断片的な情報しかない。クローゼットに捨てられていた、真珠のネックレスと伏せられた写真立て。本編では描かれていなかったが、3話の次回予告からわかるようにあれを壊したのは羽菜だ。割れたガラスに入っている家族写真は、水本家の現状を象徴している。

置いていかれた自分は「大事じゃないもの」なのか
原作5巻P.10より

母親からは「嫌い」と言われ、間接的に「いらないもの」扱いされる。父親も自分のことを見てくれない。篠谷が崖の一歩手前と表したそこは、安らげる場所とはかけ離れている。牧野たちはどこまで踏み込めるか。

気になるのは羽菜がイメチェンするきっかけが変わったのと、「いらないものはこわして捨てる」が母の行為になっていること。
イメチェンは原作だと母親に勧められていたが、ドラマだと羽菜自身の行動が原因になっていた。

いらないものは
こわして すてる
お父さんの 嫌なところに
そっくりねって
(中略)
でも お母さんと私は
たぶん 同じじゃない?
いらないものは
こわして

羽菜のモノローグ
(原作5巻 P.23~P.25より)

ここを読んで、「いらないものはこわしてすてる」は父がやることなのだと思っていた。どちらも細かいところなのだけれど、今後の展開に影響しそう。

また、羽菜が学校のものを壊してしまった時期も小4の頃(昨年)から今年の夏に変わっていた。破壊衝動を抑えられなくなってからどれくらい経つかだいぶ変わってくる。心の傷の深さは受けた期間の長さだけが決めるものではないが、そこを変えてくるのは意外だった。

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