【ドラマ感想】放課後カルテ#3「お前の責任なわけがない」
このドラマでは初の「ある家庭」のみをとりあげた話になる第3話。おおむね原作通りに進めつつ、細部に作風やテーマの違いが出ていた。
※ドラマ本編および原作漫画のネタバレがあります。
画像出典のページ数は電子書籍版準拠です。
原作エピソード紹介
今回ピックアップされたエピソードはこちら。
第9話 冴島啓の話(後半)
飲食店のおばあちゃんを病院に運んだあと、牧野は直明と再会する。
この台詞は啓から学校での牧野の様子を聞いてのもので、「先生といるときだけ病気じゃない僕なんだ」に繋がっている。ドラマで描かれている牧野の人物像とは少し違うかもしれないけれど、聞いてみたかった。
第12~13話 冴島家の話
原作初の複数話にまたいだエピソード。12話が直明の学校探検、13話が啓の家出の話。このシーンは直明の表情が笑顔から泣きそうな表情に変わっていた。原作とドラマの作風の違いを象徴する部分のひとつだと思う。
「先生しかいない」のか
学校で直明とはぐれてしまった啓。彼女は保健室に駆け込み、牧野にこう頼む。
ふたりで直明を探し始めるのだが、果たして直明のことを知っているのは本当に牧野「だけ」なのだろうか?
ドラマでは直明の学年も上がり、小学1年生になった。ならもう一人いるはず。会ったことはないかもしれないけれど、直明の身体の事情を知っているであろう人が。そう、担任の先生である。
公式サイトの情報では、1年生の担任だと書かれている人物は一人しかいない。ホラン千秋さん演じる芳野だ。直明がいるクラスを受け持っているのは、おそらく彼女だろう。
尺の都合などあるのは重々承知しているが、せっかく学年を上げたんだから芳野を巻き込んでもよかったんじゃないかと思う。直明と芳野の会話が見てみたかった。
篠谷だってがんばってる
啓が学校から帰ってこない。
彼女の父親からそう連絡を受けた篠谷たちは、彼女を探し始める。ドラマでは多くの教師たちも一緒に探している。ふたりで直明を探した牧野とは対照的だ。
ドラマの篠谷は、ハッキリ言うといいところがあまり描写されていない。これじゃあ原作の人物像とはかけ離れているし、演者さんも可哀想だとずっと感じていた。
だから、今回啓の居場所に気付いたのは篠谷だったのが嬉しい。やっと彼女なりに児童たちを見てているのを描写してくれた気がした。牧野に「そこ」へ行くよう頼むやりとりも私が思う原作の雰囲気に近い。こんな感じのふたりが見たかったんだよ……!
それぞれに寄り添う
ドラマ版は、テーマのひとつが「寄り添う」なのかなと感じている。今回はそれをより強く感じる改変があった。
「お前の責任なわけがない」
一度勝手に連れ出して直明の体調を悪化させてしまったのに、また勝手に出かけてしまった。
もう直明は外で遊べないかもしれない。
そう嘆く啓に、彼女の幼さを指摘したあと言ったのが「お前の責任なわけがない」。
日生先生が仰るとおり、これは原作にはない台詞。だけど予告を見たとき「こう言ってくれるんだ!」と感動していた。ずっと孤独だった、過去のあやまちに苦しんでいた啓がやっと救われたような気がする。
「あの姿を一番見たいのはあなたなんでしょうね」
啓と直明の母・環は啓をおざなりにしがち。視聴者目線ではもっと啓のことも気にかけてほしいと思うんだけど、直明を守るのでいっぱいいっぱいなのもわかる。
階段を昇ったあとの直明は、顔を真っ白にしてチアノーゼも出ていた。牧野たちが見つけてくれたから大事には至らなかったが、このまま遊んでいたらどうなっていたかわからない。環が直明の行動を厳しく制限する理由は、このシーンによく現されていると思う。
危険な行為をさせて、注意してもわかってくれない夫。ふたりで出かけて息子の体調を崩させてしまった娘。ふたりの父が悪いとも、環が悪いとも思わない。でも家族にすら気持ちをわかってもらえない中、必死に直明を守り続けてきた環もまた孤独だったのではないだろうか。
牧野が環に言った「先天性心疾患の~」という台詞は、原作だと啓に向けたもの。啓に環の真意を知らせるような、両者の気持ちをつなげるような言葉だ。
一方、ドラマでは啓と環にそれぞれにその人自身を想う発言をする形に変えた。「寄り添う」姿勢をよりはっきり見せる、テーマ性に合わせた改変だと思う。
さいごに
次回は非常に重要な回。原作より成熟して見える牧野と原作より空回っているように見える篠谷は、彼女にどう向き合うだろうか。
このドラマのサブタイトルは、今まで牧野のドラマオリジナル台詞で固定だった。この話ならあのセリフがいいんだけど、どうするかなぁ……。
画像出典
放課後カルテ 2巻
日生マユ/講談社(2012年刊・IBSN:978-4-06-380350-1)
放課後カルテ 3巻
日生マユ/講談社(2012年刊・IBSN:978-4-06-380365-5)
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